『ガングレイヴゴア』で食わず嫌いしていたアクションゲームを噛み締める。筆者の背中を押した、グレイヴの二丁拳銃
PLAIONのパブリッシング部門Prime Matterより11月22日に発売された『Gungrave G.O.R.E(ガングレイヴゴア)』。本作と筆者の出会いは、今年の東京ゲームショウの試遊展示であった。先に断っておくと、筆者は『Gungrave』シリーズの過去作は未プレイ。そもそもアクションゲームは普段ほとんど遊ばない。そんな筆者は試遊展示で本作の体験版をプレイしたとき、「このゲームなら自分も楽しめそうだ」と感じた。そしてPLAIONより提供いただいた製品版を遊んでいる今、その思いは強まっている。本稿ではアクションゲーム嫌いな筆者を惹きこんだ『Gungrave G.O.R.E』の魅力をお伝えしよう。
『Gungrave G.O.R.E』はIGGYMOBが手がける三人称視点のシューティングアクションゲーム。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S。11月22日に発売されたばかりの『Gungrave』シリーズ最新作だ。本作は、死の淵からよみがえった主人公グレイヴのもつ二丁拳銃ケルベロスと、さまざまな武器を格納する棺桶デスホーラーを駆使する、スタイリッシュなガンアクションが特徴。ケルベロスで無数の銃弾を敵に撃ち込みながら、デスホーラーで近接攻撃を繰り出したり、敵のミサイルなどを弾き返したりして、一騎当千のつわものとして戦う。
個人的体験
まずは私事ながら、筆者がアクションゲームをあまりプレイしない理由を紹介しよう。発端は小学生の頃のほろ苦い思い出にある。ちょうど『大乱闘スマッシュブラザーズX』が発売されたころ、友達の家に皆で集まり、同作で対戦したことがあった。これが筆者のアクションゲーム原体験となるが、どうにも操作には苦戦した。というのも、友達の家にヌンチャクやゲームキューブ用コントローラーがなく、Wiiリモコン横持ちで操作を入力していたのだ。持ちにくいうえに、ボタンの割り振りもフレンドリーとはいいがたく、快適ではなかった。
そんな当時の筆者は、ソニックを使うことに落ち着いた。なぜなら通常必殺技(ホーミングアタック)に追尾機能が付いていたからだ。これなら移動と①ボタン連打で意図した攻撃を繰り出せるし、とりあえずは戦いに参加できる。それなりに楽しんでいた筆者であったが、友人からは「お前、それで楽しいのか」と痛烈な一言。この時感じたいたたまれなさが、アクションゲームの原体験として、筆者のゲームの嗜好に影響を与えている(気がする)。
筆者がTGSの会場で『Gungrave G.O.R.E』の体験版を終えて思い出したのは、そんな悔しくも懐かしい過去の記憶である。というのも本作、デフォルトで射撃がオートターゲットとなるのだ。ボタンを押していれば攻撃してくれた、あの日のソニックを想起させるわけである。さらに本作は防御面でも筆者に優しい。主人公グレイヴにはHPと別に常時シールドがあり、シールドは攻撃を受けていない間、回復する。筆者のようにホーミング一辺倒なソニック使いでも、『Gungrave G.O.R.E』であれば何ら不自由なく、恥じ入ることもなくプレイできる予感がしたのだ。そして筆者は本作の製品版を遊ぶ機会にも恵まれた。難易度はもちろんEASYで開始した。
成長
本作はシリーズ物の最新作ながら、ゲーム内のヒストリーという項目にて、8分半にわたり過去2作のストーリーを映像でおさらいしてくれる。筆者のような新規プレイヤーはまずヒストリーを見た方がいい。ゲームの冒頭では、グレイヴがお出ましするムービーが流れる。棺桶が流星のごとく地面に落下。棺桶から飛び出すグレイヴはかっこいいものの、なぜ棺桶が空から降ってくるのか。ほかにもいろいろ気になったが、ひとたびステージが始まるとそんな疑問は敵とともに蹴散らしてしまった。
序盤は体験版どおりの爽快感だった。一度トリガーを引けば銃弾を4発も撃ち込める。そしてオートターゲット。自分でも何が起こっているのかわからぬまま、視界内にある小物から何から気づけば吹っ飛ばしている。実に小気味良い。しかし調子に乗っていると、敵の数が増えていつの間にか囲まれることに。囲まれると途端に動きにくくなるため、対処が必要になった。不用意に敵陣の真ん中に躍り出ず、少しずつ敵を引きつけた方がいいと戦いの中で気づく。そうして距離を取りながら、二丁拳銃で遠距離攻撃を仕掛けることを覚えていった。汎用的な攻略法をつかんだ筆者は、この時点で本作を征したとさえ思った。
しかしながら本作、そう甘くはない。基本的な操作に慣れたころ、さっそくこの作戦をつぶされた。まず、入ると後ろから巨大なローラーが迫ってくるというエリアが登場した。これで距離を取りつつ遠距離射撃をする道が断たれた。また煙幕弾を投げてくる敵が登場するようになった。煙幕に包まれるとオートターゲットが機能しなくなる。オートターゲットは筆者にとって命綱。こんな敵、体験版にはいなかった。それでも本作は懐が深い。少なくとも難易度EASYでは、グレイヴの防御の堅さで乗り切れてしまうのだ。焦らず、とりあえず敵の方を向いてトリガーを引けば、なんとかなる。画面の中のグレイヴが頼もしく思えた。
ただ、それでも乗り切れない敵はいる。盾を持っている敵がいるのだ。二丁拳銃による通常射撃が効かないため、充電の必要なデススピアで倒すか、近接攻撃を3コンボ決める必要がある。とはいえデススピアは右トリガー長押し、近接コンボはB連打なので操作は難しくない。オートターゲット一辺倒であった戦法にも変化が生まれた。まるで筆者が一人前のアクションゲーマーになれるように、グレイヴが手取り足取り教えてくれているようだ。それくらい、序盤は丁寧に設計されていると感じた。
外れはじめた補助輪
一方でステージを進めると、段々操作が難しくなっていく。敵が大勢出てくるが、種類が多く、それぞれ求められる対処法が違う。先述の敵に加えて、ノックバックさせられるミサイルを放つ複数の敵、継続ダメージが厄介な爆弾を投げてくる輩、地面に潜って急襲してくるモンスターなど。さまざまな敵の集団と戦う中で、当初筆者がグレイヴに抱いていた、スタイリッシュなイメージが弱まる場面もあった。グレイヴの“堅さ”ゆえに、シールドへの被弾覚悟で盾持ちやミサイル持ちを優先的に狙う方が安全となるのだ。筆者としては安全第一の手堅い戦略がもっとも有効であるように思えて、爽快感のない戦い方を選んでしまいがちであった。もちろんこれは筆者の腕前や、EASYで遊んでいたことも関係しているだろう。またシールドを削られながら戦うシステム上、シールド回復タイミングがテンポを損ねている側面もあるかもしれない。
苦境においても攻略を続けられたのは、グレイヴのキャラクター造形や作り込まれたモーションに負うところが大きい。グレイヴは移動する向きによって拳銃の構え方が変わる。堅実に攻めるときも、ステージをやり直す時も、さまざまなバリエーションで二丁拳銃を構える後ろ姿はたくましく、頼りになる。グレイヴの姿は、筆者に、根拠のない自信を少なからずもたらしてくれた。
困難をきわめる戦いにおいて、ほかにも筆者を助けた要素があった。それは『Gungrave』シリーズ初のシステムだという「強化」だ。本作ではステージクリアによりDNAポイントを獲得。それを使って研究室でグレイヴのステータスやスキルをアップグレードできる。むろん筆者は、ひたすら遠隔射撃周りの能力を強化。特に、ターゲット距離増加を優先的に上げた。ターゲット距離増加については、デスフックを使ったグラブやチェイスも対象となる。デスフックを使ったアクションはシールドを即座に回復できるうえに、チェイスは動きの緩慢なグレイヴにとって敵陣から抜け出せる貴重なスキルだ。研究強化は、アクションが苦手な筆者が戦略的に攻略を進められる要素となってくれた。また基本的に「一本道」が続く本作において、自分の選択がゲームプレイに反映されたことが実感できるのもうれしいポイントだ。
初めて味わう「死にゲー」
「一本道」と書いたとおり、本作に探索やクエストなどの寄り道要素は、潔いまでにない。何をすればいいか、目的がわからなくて詰むようなことはなく、アクションだけに集中できる。一方で、攻略法をつかめなければ詰んでしまう場面もあった。列車(トレーン)の屋根の上で戦うステージだ。アクション映画よろしく高速で迫る標識をよけながらの戦闘となり、もし標識に当たるとシールドやHPがごっそり削られる。くわえて、トンネルに入るまでに戦闘を終えなければならないという時間制限付きだ。列車の屋根なのになぜか地雷もあり、吹き飛ばされて線路に落ちると即死する。筆者とてここまでのプレイでだいぶ操作に慣れていたものの、このステージは異様に難しく、何度も挑戦しなおした。本当にクリアが見えず、「無限列車」という言葉が頭によぎった。
試行錯誤の末にたどり着いたのは以下の“攻略法”だ。列車の屋根の上で標識にぶつかると吹き飛ばされるのは敵も同じ。そして敵に関してはダメージを受けるのではなく即死となる。よってこのステージの最適解は、おそらく、被弾を恐れず突き進むことである。ようするにいつもと変わらなかったのだ。ごり押しすれば敵はやがて標識にぶつかり吹っ飛ぶ。あとは遠巻きに地雷を撤去できれば、ゴールにぐっと近づける。
一方でこれはクリアした今だからこそ“攻略法”と呼べる。地雷を除去する作業もかなり大変であり、筆者はこのステージでなかなかの時間を費やすことになった。難航し過ぎて、一度ゲームオーバー時にコントローラーを腿に投げつけてしまったほどである。そしてこの時「ああ、今自分はアクションゲームをしているなあ」と感慨深く感じた。瞬間的にカッとなってしまう感情の高ぶりも含め、反射神経を求められるゲームプレイは筆者が普段味わわない体験だった。
有無を言わさずゲームオーバーにさせられる難易度と、そこを何とか攻略してゆく挑戦は、筆者がこれまで避けていたものだ。しかし、だからこそ「無限列車」ステージには新鮮な気持ちで挑むことができた。これは筆者にとって“死にゲーの原体験”になったのかもしれない。
グレイヴが動かした時計の針
筆者の『Gungrave G.O.R.E』攻略は紆余曲折を経ることとなった。特にアクションゲームが苦手な自分にとっては、楽しみ方がつかみにくい場面も多々あった。体験版から期待したような爽快感ばかりではなく、反射神経を問われるギミックや腰を据えての攻略が必要なステージが「無限列車」ステージ以外にも存在したからだ。一方でそれは、本作にさまざまなアクション要素が盛り込まれている証拠だ。本作は、筆者が食わず嫌いしていたアクションゲーム攻略における楽しさ、苦しさをひととおり噛み締める機会を与えてくれた。
本作の設計には、根底にグレイヴの人間性を感じる。愛する人を守るためには圧倒的な強さ、タフさ、余裕が必要。それでも、痛みに耐えながらかっこつけなければいけないときはある。小学生時代から止まっていた筆者のアクションゲーム人生はグレイヴの背中を追いかけ、ようやく動きはじめた。ホーミングに頼り続けた筆者も、転んで、痛みに耐えることを覚えたのだ。