『バイオハザード RE:3』は、ナイトメア/インフェルノ難易度こそが本番。1周目の先入観を逆手に取った、ドキドキのサバイバルホラー体験

『バイオハザード RE:3』は、ナイトメア/インフェルノ難易度こそが本番。それまでのプレイ体験で植え付けられた先入観を逆手に取った、2周目ならではのサバイバルホラー体験が待っている。

カプコンの新作『バイオハザード RE:3(以下、RE:3)』が4月3日に発売された。1999年9月にPlayStation用タイトルとしてリリースされた『バイオハザード3 ラストエスケープ』のリメイク版だ。現行機ならではの美麗なグラフィックや再構築されたマップとともに、主人公ジルの壮絶な脱出劇が肩越し視点で描かれる。

各種メディアによるレビューが解禁されてからというもの、昨年リリースされた『バイオハザード RE:2(以下、RE:2)』と比べて完成度が劣る、コンテンツが不足しているといった意見が浮上した。たしかに、2019年の『RE:2』には、レオン/クレア編のセカンドシナリオ(裏ストーリー)、エクストラモード「The 4th Survivor」(ハンク編)「The 豆腐 Survivor」と、繰り返し遊べるコンテンツが豊富に収録されている。

それに対し『RE:3』には、『RE:2』のようなエクストラモードはなく、メインストーリーもオリジナル版からカットされた部分があったりと、一周あたりの所要クリア時間は短い(初周4~8時間ほど)。オリジナル版の物語分岐システム(ライブセレクション)は採用されておらず、1周すればストーリー展開は全て把握し終えられる。ゆえにフルプライスのゲームにしてはコンテンツが少ないという意見があるのも理解できる。シングルプレイコンテンツだけでは販売価格と釣り合わないという批判可能性を見越していたからこそ、マルチプレイコンテンツ『バイオハザード レジスタンス』を収録したとも考えられるだろう。

ただし、『RE:3』にリプレイ性がないわけではない。無限ロケットランチャーや回復のコイン(体力自動回復効果)といったお役立ちアイテムをアンロックして遊び直せるほか、『RE:2』にはなかった「ナイトメア」「インフェルノ」という高難度モードが用意されている。これは『バイオハザード7 レジデント イービル(以下、バイオ7)』における「マッドハウス」難易度の精神を継ぐモードだと考えてよいだろう。

2周目以降だから成し得るホラー体験

『バイオ7』のマッドハウス難易度は、敵の強化・移動速度上昇・配置変更、さらにセーブ回数の制限が適用される高難度モード。「ここであの敵が出る」「ここは安全」といった、それまでのプレイ体験で植え付けられた先入観を逆手に取る予想外の展開が続き、油断していると反応が遅れてあっけなく倒れてしまう。肥満体モールデッドという難敵の絶望感が最高潮に達するモードでもある。ゲームに慣れて安心しきったプレイヤーほど痛い目に合うマッドハウスは、クリア済みのゲームに新鮮な感覚で再挑戦できる、『バイオ7』本編の真骨頂と言える。「ゲームの2周目以降」だからこそ生み出せる、極限のサバイバルホラー体験であった。

最新作『RE:3』にて、デフォルト状態で選択できる難易度は、アシステッド・スタンダード・ハードコアの3種類。そして一度ハードコア難易度をクリアするとナイトメアが、ナイトメアをクリアするとインフェルノ難易度がアンロックされる。ナイトメアの変更点は、「敵の攻撃動作が激しくなる」「敵の攻撃が非常に強力になる」「敵やアイテムの配置がハードコア以下のゲームモードから変化」。インフェルノは、「ナイトメアより、敵がさらに強くなる」「ステージに置かれるタイプライターの数が少なくなる」「オートセーブがなくなる」。それまでのプレイ体験から生じる先入観を活かした敵配置の変更という点で、『バイオ7』マッドハウスの系譜を継ぐモードとなっている。

1周目は、ナイトメアという本番に向けたチュートリアル

実際にナイトメアを遊んでみると、それより下の難易度3つは、ナイトメアという本番に挑むためのチュートリアル、もしくは前振りなのではないかとの印象を覚えた。それまでのプレイ体験から目線が特定箇所に向くように仕向けておいて、その死角からプレイヤーを襲う。「もうクリアしたことがあるから大丈夫」という過信が観察力や咄嗟の反応力を鈍らせ、「え、そっちからくるのか」「AではなくBが出てくるのか」といった不意打ちや予想外の敵との遭遇に対処しきれず負傷するケースが続いた。このゲームを熟知しているとの過信を捕らえる悪夢であり、常に初心に返って挑むことが求められる。

最序盤からゾンビの数・配置が変わっていたり、敵の反応速度の上昇を嫌でも感じられるような状況が用意されていたりと、初っ端から油断は禁物。本来よりも早い段階で強めの敵が出現するし、通常難易度ではそれほど苦にしなかったエリアが鬼畜化。某ゾンビとの遭遇機会が増えるという、シリーズファンには嬉しい(?)展開も。敵の凶暴化によりラスボス戦はもはや別物だ。こうした2周目以降の敵配置変更や敵の強化は、他のゲームでも見られる要素ではあるが、『バイオハザード』作品ならびにサバイバルホラーゲームとの相性はすこぶる良いと感じている。

ナイトメア/インフェルノ難易度では、『RE:3』の新アクションである緊急回避ならびにカウンターの会得が必須級になるというのも、特徴のひとつ。緊急回避は、敵が攻撃を仕掛けてくるタイミングでステップ移動することで発動。緊急回避直後に武器を構えると、時間の流れが緩やかになった状態で、高クリティカル率のショットをカウンターとして決められる。ナイトメア/インフェルノは、他の難易度よりもリソースが希少かつ強敵の出現数が多いことから、緊急回避を覚えないと突破はかなり困難。『RE:3』のアクション性がフルに活かされるという意味でも、ナイトメア/インフェルノ難易度こそがゲームの本番という印象は強まる。

高難度ながらカスタマイズの余地があり、挑みやすい

もちろんゲームの楽しみ方は人それぞれであり、ほどよい難易度で一周して、ストーリーを楽しんで終わりにするのもアリだ。ただ、それ以上を望むプレイヤーに向けては、複数周遊ぶことを報いるようなコンテンツが確かに用意されている。『バイオ7』におけるマッドハウスは、機動力と視界(一人称視点)が限られる中で追い詰められていく怖さがあった。『RE:3』のナイトメア/インフェルノは、マッドハウスの精神を引き継ぎつつ、『RE:3』ならではのアクション性を活かしており、緊急回避や的確な射撃を連続で決めていかねばならない緊張感に満ちている。

それでいて、冒頭で述べたお役立ちアイテムのアンロックシステムのおかげで、高難易度帯に挑戦しやすい環境が整っている。本作における無限ロケランや無限アサルトライフルなどの特典アイテムは、特定条件(レコード)の達成ポイントを使って、好みの順番でアンロックしていく仕組み。自分でアンロック順を決められるポイント制なので、低難易度でポイントを稼ぎ、弾数無限系武器や攻撃力・防御力アップコインなどを入手してから高難易度に挑むといった遊び方も可能。ナイトメア/インフェルノを遊ぶにしても、そうした役立ちアイテムを使わずに進めるのか、防御力アップなど一部のアイテムだけ使用するのか、はたまた無限ロケランや無限アサルトライフルでトリガーハッピーな脳死プレイに浸るのか。高難度ながらプレイ条件をカスタマイズする余地があり、自分のペースで徐々に難易度を上げていきやすい設計になっている。

このように、『RE:3』はリプレイ性の乏しいゲームとは言えず、むしろ同作の真骨頂を知る上では、ナイトメア/インフェルノ難易度をできるだけプレイすべきであると思わせてくれた。単に敵が強くなるだけの高難度モードではない。2周目だからこそ成し得るホラー体験。ゲームを一周し終えて、同じことを繰り返したくはないというスタンスでいる方にも、機会があればぜひ味わってほしい。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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