ケイブ、トライアングルサービス、グレフなど、アーケードや家庭用でスクロールタイプのシューティングゲーム(以下STG)を製作していたメーカーが、自社タイトルをSteamにて発売する。こんなケースが2015年から現在まで目立つようになってきた。多くは過去に発売されたタイトルの移植ではあるものの、SteamはSTGにおけるプラットフォームの一つとして見逃せない存在となりつつある。
そこで今回は「シューティングゲーム ベストディフェンダー賞」の名のもと、おもにゲームシステムの面から2016年にSteamで発売されてきたSTGについて語りたい。
2016年、Steamで販売されたSTG
トライアングルサービスが発売した『シューティング技能検定』は、STGに関するさまざまな要素をピックアップしたミニゲーム集だ。敵が撃った弾や近づいてきた障害物を避ける、ボタン連打でショットを多く撃ち込む、ボムボタンをタイミングよく押して敵を殲滅するなど、おもに「攻撃」と「回避」の要素においてプレイヤーのスキルが試される。
だがSTGでは、このゲームで使われていない要素「防御」の役目も持っている武器やアイテムもある。その代表的なものは「ボム」。『シューティング技能検定』ではミニゲームの要素として使われているが、ボムは大抵の作品の場合、発動すると画面上の敵に絶大なダメージを与えながら相手の攻撃を防ぐという、攻撃と防御の両面の効果を持っている。
たとえばケイブが発売した縦スクロール弾幕STG『怒首領蜂大復活』のボムはボタンを押したときだけでなく、攻撃を受けたときにも自動的に発動するという、シールドのような役目も持っている。いざというときに自分で発動するか、もしくは被弾したときのために使用せずに持っているか、プレイヤーにとってはどちらの防御策をとるかという駆け引きの一つとなっている。
また、同じくケイブの横スクロールSTG『デススマイルズ』では、「使い魔」と呼ばれるオプションが登場する。この使い魔はプレイヤーと同時にショットを撃って攻撃し、さらにオプションを有効に使えば敵を素早く破壊して相手の攻撃を食い止めることもできる。いわゆる「攻撃は最大の防御」といった要素で、システムを使いこなせばプレイを有利に進める、もしくは攻略に不可欠なものとなる。
このように、STGにおける防御は、ショットを撃つ攻撃や自機を動かして避ける回避と同様に重要なのである。そして、今年Steamで発売されたもっとも防御の要素に優れた以下の作品へと、「シューティングゲーム ベストディフェンダー賞」を贈る。
大賞作品:『ダライアスバーストCS』
見事受賞となった作品が『ダライアスバーストCS』である。1986年に初代が発売されてから続くシリーズ作品で、『ダライアスバーストCS』は2010年にアーケードで発売された『ダライアスバーストAC』のコンシューマ移植版となる。
このゲームのオリジナル要素である「バーストレーザー」は、ゲージを消費して自機から強力なレーザーを撃つ武器だ。また画面上に配置すると固定砲台のようにビームを放つ「バーストパーツ」というオプションも存在する。この「バーストレーザー」「バーストパーツ」の2つを使いこなすだけで、さまざまな攻撃と防御が可能になる。
バーストレーザーは、撃つことで敵を破壊すると共に、敵弾などの攻撃も受け止めることでがきる。この機能をうまく使えば、敵やボスの前で攻撃を受け止める壁を作るなど、1つの武器で攻撃と防御の両方を同時に行える。
また、『ダライアスバーストCS』では大量の敵が飛来する場面が随所に設けられている。タイミングよくバーストレーザーを撃てば、敵を大量破壊してスコアが跳ね上がる。ほかにもバーストレーザーは敵ボスも撃ってくることがあるのだが、敵が放つバーストレーザーを受ける位置でタイミングよくバーストボタンを押すと、絶大な攻撃力を得る「バーストカウンター」という技を放つことができる。バーストレーザーは攻撃と防御の要であると共に、爽快感や迫力を見せる映像演出としても大きな効果を持っている。
もともと『ダライアス』シリーズは、海洋生物をモチーフとした巨大なキャラが出現する迫力ある演出面と、繰り返しのプレイを通じて敵の動きや攻撃を把握して攻略していくパターン構築を主としたゲームだ。だが『ダライアスバーストCS』では、そこにバーストレーザーという武器を加えることで、攻撃・防御・爽快感・演出をさらに盛り上げることに成功しており、シリーズ既存の要素と新しい要素の両方をどちらも極限のクオリティまで引き上げている。
80年代からシリーズを通してつちかわれてきたものと、新しいものを融合によることによって、すばらしい「防御」要素をふくむSTGを実現したものとして、ここに「シューティングゲーム ベストディフェンダー賞」を贈らせていただいた。
次点・インディーゲーム編
ここでもう一つ、インディーゲームのタイトルで、少し面白い防御システムを持ったSTGがあるので、次点として紹介する。
それは『ケツノアナ』というタイトルだ。何とも強烈なインパクトを持っているが、内容は硬派なSTGである。
武器はノーマルショットとロックオン、強力な攻撃の溜め撃ちとボムの4種類。ノーマルショットだけでは攻撃力が弱く、ボムなどの特殊な武器は敵を破壊することで得られるエネルギーを貯めないと使用できない。ショットによる「攻撃と破壊」がボムでの「防御」に繋がるという武器同士の関係と、すべてを使い分けないと攻略が困難というシステムになっている。
だが、実際はそれが活かされておらず、敵の攻撃があまりに激しいために使い分けを考える余裕もなく、とにかく攻撃して使える武器を使えという展開になってしまう。せっかくのシステムが難易度によってすべて台無しになってしまうという残念なものとなっているが、ゲームの中で特徴的なシステムを盛り込もうという、制作側の意図が見えるということで紹介させてもらった。
来年への期待を込めて
1980年にアメリカのゲームメーカーであるWilliamsから『Defender』というアーケードSTGが発売されている。プレイヤーはレーザーのようなショットを使って敵を破壊するだけでなく、敵が地上にいる人間をさらっていくのを「守る」ことが目的の一つ。ベストディフェンダー賞という名称は、STGで30年以上前からこの作品に存在していた「防御のために攻撃する」というコンセプトも意識している。
敵をショットで破壊する。STGの基本は極めてシンプルだが、その中でそれぞれのゲームは独自の要素を盛り込んで、その作品だけの特徴を見せようと追求している。
来たる2017年は、今回のベストディフェンダー賞を越えるような、もしくは見たことがないような要素を盛り込んだSTGに出会うことができるだろうか。そんな期待を抱きつつ、新年を迎えたいと思う。