『ディビジョン2』のPRメールで「米国政府閉鎖」の時事ネタを用いたUbisoftが謝罪。政治的立場を取らない企業の、あまりに政治的なジョーク
今月2月7日から2月11日にかけて実施予定の、『ディビジョン2』のプライベート・ベータテスト。その招待メールが海外ユーザーに向けて送信されたものの、メールの件名に時事ネタを交えた不謹慎なジョークが含まれていたことから、Ubisoftが謝罪することになった。海外メディアのPCGamerやKotakuが報じている。
メールの件名は「Come see what a real government shutdown looks like in the Private Beta」。訳すると「プライベート・ベータに参加して、本当の政府閉鎖がどういうものか体験してみよう」である。企業が不適切な発言について謝罪するというのは、ありがちな不祥事である。事実、現在の社会情勢からして不謹慎であることに間違いはないのだが、RedditではあまりにUbisoftらしからぬ時事ネタを素直に「おもしろい」と褒める声もあり、ちょっとした話題になっている。
'The Division 2 is not trying to make a political statement' – 2018
2019 be like: pic.twitter.com/4xKoRRfryw
— Skill Up (@SkillUpYT) February 1, 2019
『ディビジョン2』の舞台となるのは、ウィルスのアウトブレイク発生により政府機関がほぼ機能停止した米国。プレイヤーは自律部隊ディビジョンの一員として、首都陥落による完全な秩序崩壊を防ぐため、首都ワシントンD.C.制圧を企む敵対組織に立ち向かう。
一方、現実世界の米国は、2018年12月22日から35日間、与野党間の争論による政府機関の一部閉鎖(partial government shutdown)を経験している。この異例事態を受けて全米各所では空港や国立公園が一時閉鎖し、米議会予算局は約30億ドルの経済損失が生じたとの試算を発表している(JETRO)。現実世界での政府機関閉鎖というタイムリーな時事ネタを使い、「本当に政府機関が完全閉鎖したらどうなるか体験してみよう」とユーザーを勧誘しているのである。
企業が公式に発信する情報として不適切であることに間違いはなく、Ubisoftも謝罪文にて「米国で実際に起きた政府閉鎖が何千もの人々の生活に影響を及ぼしていることは認識しており、決してそうした事態を軽視しているわけではありません」と説明している。
そもそもUbisoftは、『ディビジョン2』について「政治的なメッセージが込められたゲームではありません」と発表当時から断言してきた経緯がある(Polygon)。また本作に限らず、Ubisoftは企業として政治的な立場を取ることを避けている。Ubisoft MassiveのCOO Alf Condelius氏は、ビジネス的なデメリットがあることから同社のゲーム内で政治的な立場を取ることははないと明言(GameIndustry.biz)。Ubisoft CEOのYves Guillemot氏も、同社のゲームは政治的なテーマを扱ってはいるものの、あくまでも政治的に中立な立場を取っていると説明している(The Guardian)。さまざまな意見・思想を提示することで、プレイヤー自身に考えてもらう。特定の立場から政治的なメッセージを発信するのではなく、政治的なテーマについて考える材料を与えることが目的であると述べていた。
つまり今回の件では、ここまで政治的な話題から距離を置いてきた企業が、思いっきり政治的な時事ネタを放り込んできたのである。まるで「Ubisoftが絶対に言わないこと」というお題の大喜利を与えられたかのように、Ubisoftとしてあるまじき文面のメールを送ってしまったのである。担当者のチェック漏れにより起きてしまったミスと思われるが、Ubisoftが築き上げようとしている企業イメージのことを考えると、少し皮肉な失敗談である。
『ディビジョン2』のプライベート・ベータテストは2月7日から2月11日にかけて実施予定。予約購入者、および公式サイトのベータ受付に当選したユーザーが参加可能となる。テスト対象となるコンテンツとしては、メインミッション2つ、サイドミッション5つ、コントロールポイント、その他のアクティビティ、前作から仕様変更された新しいダークゾーン、4対4のPvPゲームモード、そして一部エンドゲームコンテンツが紹介されている。