『アサシン クリード オデッセイ』の最新DLCで描かれる“恋愛関係の強要”が批判の的となる。突如として奪われた選択の自由

『アサシン クリード オデッセイ』のストーリーDLC「最初の刃の遺産」のエピソード2「影の遺産」で描かれる恋愛関係についてプレイヤーから批判の声が挙がっている。プレイヤーに与えられたと思った選択の自由が奪われる瞬間であった。

アサシン クリード オデッセイ』のシーズンパス所有者向けDLC「最初の刃の遺産」のエピソード2「影の遺産」が1月15日に配信された。初めてアサシンブレードを使用した伝説の人物ダリウスと共に戦うという内容のストーリーDLCだ。このDLCで描かれる物語の一部についてプレイヤーから批判の声があがり、同作のクリエイティブ・ディレクターが謝罪するという事態に発展している。

※以下、「最初の刃の遺産」の物語に関するネタバレあり

 

まず前提として、本作のゲーム本編ではNPCと恋愛関係を結ぶかどうかはプレイヤーの選択に委ねられており、恋愛対象とする性別もプレイヤーの選択次第となっている。ところが今回のDLCでは、特定のNPCと強制的に性的関係を結ぶことになる。ゲーム本編で与えられた選択の自由、主人公のセクシャリティを自分で決められるというコンセプトと矛盾するとの指摘が挙がっているのだ。

「最初の刃の遺産」は、初めてアサシンブレードを使用した伝説の人物ダリウスと共に戦うという内容の、3エピソード構成のストーリーDLC。エピソード2ではダリウスの息子ナタカスもしくは娘ニーマと関係を深めていくことになる。操作キャラクターが女性のカサンドラであれば男性のナタカスと、操作キャラクターが男性のアレクシオスであれば女性のニーマと関係を持ち、子供を授かることになる。

本作のクリエイティブ・ディレクターであるJonathan Dumont氏はゲームのリリース前、プレイヤーの意に反するような恋愛関係を強要することはないと語っていた(Entertainment Weekly)。今回のDLCは、そうしたDumont氏の言葉とは相反するものなのだ。

 

コミュニティの反応

Ubisoftの公式フォーラムやRedditのサブスレッドには、開発者がプレイヤーに約束した選択の自由に反するコンテンツとなっていることから、怒りや戸惑いの声が寄せられている。具体的には、プレイヤーがロールプレイしていたセクシャリティからズレてしまうこと、カサンドラの出産が強要されることなどが意見としてあがっている。

ゲーム本編にて選択の自由を与えられてきたからこそ、それを奪いにかかるDLCの展開は重く響いたのだろう。Redditでは「プレイヤーの主体性に重きを置くと宣伝しているゲームで、このような物語上の展開を一方的に押し付けて、プレイヤーから受け入れられるわけがないだろう」という投稿も見られる。DLCについて取り上げている海外ゲームメディアも軒並み否定的で、Polygonにいたっては、主人公カサンドラが一児の母/主婦になるというのは、フィクション作品のキャラクターとして思い浮かぶ限り最悪の裏切りであると厳しく批判している。

本作は長編大作であり、DLCまでたどり着いたプレイヤーは、その時点ですでに主人公と何十時間と旅路を共にしてきている。ゆえに主人公に対する思い入れが強いプレイヤーの割合も高くなると考えられる。その分、与えられたと思った自由が突然奪われるショックも大きいだろう。

 

開発者の反省

もちろん、否定的にとらえる声は全体の一部。フォーラムではとくに気にならなかったという意見も見られる。とはいえ、ここまでマイナス意見が寄せられるのは開発陣としても予想外だったのだろう。今回の一件を受けてクリエイティブ・ディレクターのJonathan Dumont氏は、Ubisoftの公式フォーラムにて「影の遺産」の物語展開について謝罪すると同時に、開発陣の意図を説明している。Dumont氏いわく、主人公の血筋が長年にわたりアサシン教団に影響を及ぼし続けることを示す意図があったとのこと。しかしながら、「皆様の感想を見る限り、その狙いが失敗に終わったことは明らかです」と反省の意を示している。

主人公アレクシオス/カサンドラは、家族であるレオニダス/ミュリーネの自己犠牲を目の当たりにしたことで、自身の意志を誰かに継ぐことの重要性を悟る。そして子孫を残すため、ナタカス/ニーマとつながり、子供を授かることになる。彼/彼女と恋愛関係を結ぼうが結ぶまいが一児の親になるという結果は変わらないことから批判を浴びたわけだが、開発側としては、恋愛的な感情はないものの子孫を残さなくてはならないという功利主義的な考えにより子供を産むのか、それとも恋愛関係を構築した上で子供を授かるのか、この2つの選択をプレイヤーに与えたつもりだったとのこと。だがコミュニティの反応を受けて、プレイヤーに与えた選択の自由と、ストーリーテリングの間での綱渡りをもう少し慎重に進めるべきであったと反省。実際には物語上の意図も、主人公の動機も不明瞭であったと自戒している。

こうした反省を生かし、続くエピソード3では、プレイヤーに望まない恋愛を強いることはないと約束している。また今回のエピソード2では、子供を産み、家庭を持つことで「成長」という名前のトロフィー/実績が解除されるのだが、こちらのトロフィー/実績名も変更される予定。プレイヤーから、同性愛者や子供を持たない者は「成長できていない」という考えを示唆しているのではないか、との指摘が挙がったからだという(Kotaku)。同性愛者であることと子供を持たないことはイコールの関係ではない。この場合、指摘したプレイヤーは「同性愛者であり、かつ子供をもうける予定がない」ケースをひとつの例として想定していたのではないかと推察される。プレイヤーに与えた選択の自由と、物語上どうしても描きたい展開があるという開発側の意向。今回のケースは、これらがうまく噛み合わなかった一例と言えるだろう。
【UPDATE 2019/01/17 22:10】トロフィー/実績名変更のきっかけとなったプレイヤーの指摘内容について補足を追加

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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