Epic Gamesストアでは、開発者に委ねる形でのユーザーレビュー機能を設置予定。Steamで見られた「レビュー爆撃」を懸念
Epic Gamesの設立者Tim Sweeney氏は12月26日、同社が運営するPCゲーム販売プラットフォーム「Epic Gamesストア」に導入予定のユーザーレビュー機能について、Unreal Engine 4ユーザー向けに運営しているUE4マーケットプレイスのレビュー機能をベースに開発しており、開発者によるオプトイン方式とするとTwitter上で発言。その理由として、「Review Bombing(レビュー爆撃)」の存在を挙げている。
We’re working on a review system for the Epic Games store based on the existing one in the Unreal Engine marketplace. It will be opt-in by developers. We think this is best because review bombing and other gaming-the-system is a real problem.
— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) December 26, 2018
現在のところ、Epic Gamesストアには購入者がレビューを書き込む機能は提供されておらず、またSteamのようにMetacriticのスコアを表示するようなこともしていないため、ストアページではその作品に対する評価は確認できない。ただSweeney氏は、今年12月7日のストアオープン時には間に合わないものの、いずれレビューシステムを導入するため研究を続けているとしていた。また、開発者によるオプトイン方式を採用することも、かねてより明言している(Eurogamer)。
オプトイン方式とは、すなわち開発者が自身のゲームについてレビュー機能を利用するかどうかを自由に選べるということを意味すると思われるが、詳しい仕様についてはまだわからない。ただSweeney氏は、レビュー爆撃やシステムの悪用行為(Gaming-the-system)は大きな懸念事項となっており、これに対する最適な方式だと考えていると述べている。
たとえばSteamではユーザーレビューが活発に利用されており、レビュー内容と共に、どれだけのプレイヤーが好評・不評に投じているのかを確認でき、その作品への評価が一目でわかる。一方で、実際のゲーム内容とは関係のない理由で不評が投じられることも起こっている。たとえば開発者の言動への批判であったり、示された何らかの方針への抗議であったり。中には作品への評価と必ずしも切り離せない問題が原因であることもあるが、評価を下げることを目的に短期間に大量の不評が投じられることがレビュー爆撃と呼ばれている。Steamにおいては、そうした異常な投稿が検知されると、いつどれだけの好評・不評が投じられたかを示すグラフを表示し、何が起こったのかユーザーに確認するよう求めることで対策としている。
Epic Gamesストアにおけるレビュー爆撃への対策として、Sweeney氏はレビュー機能のオプトイン方式を挙げたが、具体的にどのように運用するのかまでは示していない。オプトインということはオプトアウトともセットだと考えられるが、レビュー爆撃が発生した際にはレビュー機能自体を無効にして対応するということだろうか。同氏の発言への返信では、(レビュー爆撃か否かに関わらず)購入者のレビューを削除することは反消費者主義的であるといった声や、オプトアウトする行為自体が開発者にネガティブな印象を与えてしまうなどの意見が寄せられており反応は芳しくない。一方で、どのようなシステムであっても悪用されることは防げないため、オプトアウトを提供することはベターな選択だと述べるインディー開発者もいる。いずれにせよ、Epic Gamesストアのレビュー機能はまだ開発中であり、詳細が判明するまでは確かなことは言えないだろう。
またこれに関連して、現在Epic Gamesストアには存在しないゲーム毎のフォーラムを用意すべきだとする意見も寄せられている。フォーラムが存在せず、レビューも消される可能性があるとすれば、ユーザーがそのゲームについて考えを述べたり交流したりする場所がないという意見だ。これについてSweeney氏は、ストア毎に各ゲームのフォーラムを用意しなくとも、すでにもっと良い手段があるだろうと回答。同氏は、基本的にユーザーはRedditやDiscord、あるいはメーカーの公式フォーラムなどを利用しているため、Epic Gamesストアにフォーラムを導入する考えがないことをこれまでにも説明している(Gamesindustry.biz)。ただし、購入者には開発者と直接コミュニケーションが取れるような仕組みは用意するとし、またこれがレビュー機能の悪用への対策にもなるとしていた。
Epic Gamesストアは、開発者とEpic Gamesの売上配分が88:12としたことが大きな話題となり、またUnreal Engine 4製タイトルをエンジン使用料の面で優遇するなど開発者への手厚いサポートが特徴的だ。一部で反消費者主義的だと指摘される独占タイトルの提供についても、マーケティングや開発費の援助、利益保証などをおこなった結果もたらされるものであり、結果的に開発者を助けることに繋がるとTim Sweeney氏はコメントしている(Reddit)。一方で、消費者であるゲーマーもまたSteamやほかのストアと比較して見ており、フォーラムを始めEpic Gamesストアには足りないものが多いとする意見は根強い。先日Epic Gamesストアにて無料配布された『Subnautica』においては、サポートを求めてSteamフォーラムにてスレッドを立てるユーザーの姿も散見されている(PC Gamer)。また、ストア毎のランチャーが増えていく状況に抵抗感を示す声も聞かれる。
Sweeney氏は、ランチャーについては統合あるいは分散型のソフトウェアアップデートツールを提供することで解決できる副作用的な問題だとし、その検討を進めているとコメント。そして、ストア間の健全な競争をおこなう中で開発者にはより良い条件を、そして消費者にはより良い価格を提示していくと述べる。Steamという強大なライバルがいるなか、独自のレビュー機能の導入に加えてどのような施策をもってEpic Gamesストアへのゲーマーの信頼を勝ち得ようと考えているのか、Epic Gamesの動向が注目される。