HAL×PLAYISMプロジェクト学生作品 vs GGeo Okunokami Kuheiji
HAL×PLAYISMプロジェクト選出作品決定、『NINJUSTICE』と『ラクガキ忍者』でおしらせしたとおり、本誌ライター陣にレビューのお声がけをいただきました。まずはこの場を借りて、このような機会を与えてくださった関係者の皆様、ならびに制作を行った学生の皆さまに厚くお礼を申し上げるとともに、本プロジェクトの成功、ひいてはこれを契機に、産学連携の試みがさらに進むことを願ってやみません。
さて、正直なところ、ライター内の意見も「2つのニンジャは頭ひとつ抜けている」でした。やはり忍のソウルめいた何かでしょうか。選抜タイトル以外の作品についても、光るものがいくつかあったため、選抜作品以外の作品に対してもレビューを行う運びとなりました。
学生の皆さんへ
「そのまま、もしくは少しの手入れで世に出すことができるクオリティか?」
全44タイトルをこの問いに照らし合わせて YES と答えられるのは、学生作品であることを考えても片手で収まる数でしょう。学校の課題である以上、まずゲームを動く形へと持っていくことを優先させるべきというのは当然です。ほとんどの方はいっぱいいっぱいでしょう。10年前の筆者もそうでした。
では学生作品だから低クオリティでもいいのか?いえいえそんなことはありません。現実的な範囲でクオリティの高いものであるべきです。私の同級生にも、ゲームとしてクオリティの高いものを作っている者が数名いました。しかし、その数名以外は?お前はどうなんだと言われたら、もちろんその数名以外です。
しかし、だからこそ、学生の皆さんには少し時間を割いて、下記について改善策を練ってほしいと思っています。課題終了後でも、それこそ卒業してからでも構いません。実現できなくても構いません。ですが、無駄な思索にはならないはずです。
- 操作説明は簡潔かつ直感的に。マウスで操作するのか、WASDで操作するのか、カーソルで操作するのか。カジュアル寄りほど丁寧に解説する、ゲーマー寄りなら画面を見てわかるようにするなど。
- 「何が起こったか」の説明を充実させましょう。攻撃が当たった際のエフェクトを邪魔にならない直感的なものにする等の配慮も。
- マニュアルはテキストファイルか PDF にしましょう。皆が Office を持っているわけではありません。
ユーザーは思っているよりも、作り手が考えるような理解をしてくれません。「見ればわかる」「プレイすればわかる」のは、やはり難しいです。ゲームだけではありません。モノを創る人間にとっては永遠の課題とも言えるでしょう。
マニュアルを読んで理解してからゲームを起動してくれるユーザーがどれだけ存在するでしょうか。いや、自分はプログラマだから……というわけにはいきません。今後就職した場合、UIやデザインについて「プログラマ視点での意見」を求められる可能性は十分にあります。ゲームメーカーだけでなく、他の会社だってそうです。
まずはユーザーの方に手にとってもらって、しっかりプレイしてもらう。「ゲームの評価」はその後です。
ピックアップ作品
いくつか、目にとまった作品をピックアップします。すでに公開される作品は決定されていますが、それ以外にいくつか「おっ」と思ったタイトルを紹介します。
選抜された『ラクガキ忍者』『NINJUSTICE』については、世に出ることが決定しています。2 本セットではなく、それぞれ単体での販売です。選抜作品のレビューについては後日掲載される UnFreeMan のレビューをご参照ください。UnFreeMan 氏は全作品のプレイのみならず、プレイ動画を撮影し、その中からスクリーンショットとして切り抜くという、途方もない労力をかけて本企画にぶつかってくださいました。「レビューした作品」ではなく、「全ての作品」です。ここまでの時間を割いて正面から向き合うことは、本企画に対する、また制作されたゲームに対する、そして制作した学生の皆さんに対する真摯な姿勢のひとつではないかと思います。
そんな中、筆者がチョイスしたのは3作品です。HAL大阪チームは『ジイSUN』、HAL名古屋チームは『Riddle』、『DiceRogue』が「ああ、このエッセンスで体裁の整ったゲームとして世に出たらプレイたいな」と思ったタイトルです。
『ジイSUN』
落ちモノパズルで道を作って、キャラクターをゴールに導きます。シンプルなレミングスといった感じで、操作方法は画像のとおりです。自殺志願ネズミと違ってご老太陽は言うことを聞いてくれるため、あの「おい何やってんだ!」ストレスはありません。提示されたゴールと操作方法が明確、かつ序盤プレイした範囲のテンポも適切です。時間制限がなかったら、ちょっとした時間にブラウザやスマートフォンでじっくり考えながらプレイしたいです。
『Riddle』
キューブを転がすとステージが回転し、ジャンプも駆使してゴールを目指します。「ウインドウを開いてキューブをドラッグして回転させる」という操作方法の提示に課題がありますが、一度ルールを理解すれば何をしていけばいいかが明確です。
『DiceRogue』
見てのとおりのいわゆるローグライクゲームですが、ダイスを振って行動するという、非常にユニークな作品です。残念なことに、UI 周辺のデザインに非常に難があります。ダイスを振った直後に、ターンをスキップする自キャラのところへとカーソルが行くのは何か意図があるのでしょうか。敵がどのような動きをするかもよくわかりません。ステージももっと広くできると楽しいと思います。ゲームとしての期待度はかなり高いだけに惜しいところがあります。この作品については、筆者が確認した限りほぼ全員が「ネタはものすごく面白そう……だけど……」の評価でした。
おわりに
本稿や後日掲載される UnFreeMan のレビューで触れられなかった作品にも「おっ」と思わせるアイデアを持つ作品はいくつかあります。その中からさらに選択したのが、各レビューのタイトルとなります。しかし残念ながら、そして当然ながら、全てのゲームに何かしら光るものがあったわけではありません。ただし、ダメだった作品に携わったから今後ダメというわけではありません。逆もしかりです。失敗した、ああすればよかったといった経験は貴重な経験のひとつです。そして、失敗せずに成功だけしている人はいません。
今は、個人でもゲームが創りやすい時代です。既に個人で制作している方もいらっしゃるかもしれませんが、そうでない方もぜひゲームを創りましょう。個人レベルでのゲーム制作は、新たなツールやプラットフォームにより、どんどん創りやすくなっています。ゲーム制作に関わる仕事に就いたとしたら、仕事の合間での個人制作はよい経験となります。また、ゲームとは無関係の仕事に就いてゲーム制作をされている方もいらっしゃいます。皆さん、「ゲーム」を作りましょう。
余談になりますが、皆さん Unity をお使いのようなので、もっとアセットストアに落ちてるのを使ってもいいんじゃないでしょうか。ミドルウェアとかも無償で色々出ていますので、ガンガン使って楽できるところは楽しましょう。