任天堂と海外ROMサイトの訴訟が決着か。サイト管理人が任天堂に約14億円を支払うことで合意との報道
任天堂と海外ROMサイトをめぐる訴訟が、決着の段階にあると海外メディアTorrentFreakが報じている。任天堂は今年7月に、海賊サイト「LoveROMS.com」と「LoveRETRO.co」を運営するMathias Designs社、そして同社の個人所有者であるとされているJacob Mathias氏に対し、著作権侵害、商標権侵害、そして不正競争を理由に訴えを起こしていた。任天堂は両サイトの閉鎖とともに、侵害されたゲームごとに15万ドル(1600万円)、各商標の侵害にあたり最高200万ドル(2億2000万円)の賠償金を求め、さらには保有ROMやサイトの引き渡しを要求していた。
結論からいうと、すでに訴訟は和解という形で決着しつつあるようだ。妻とともに違法サイトを運営していたJacob Mathias氏は、訴訟された著作権の侵害などの内容を全面的に認め、各サイトを閉鎖。任天堂のROMやその他の素材の共有・配布を今後行わないことに同意。またゲームファイルやエミュレーターを任天堂に提供し、両方のドメインを引き渡すことにも合意した。そしてさらには、任天堂に対し1223万ドル(約14億円)を支払うという条件も飲んでいる。まだ裁判所判事による和解文面の署名はおこなわれていないようだが、この条件で決着するであろうとみられている。
「LoveROMS.com」と「LoveRETRO.co」は、ファミコンからWiiまで、歴代の任天堂ハードウェアで発売された数百もの同社のゲームを配布している。さらにROMだけでなく、ハードウェアのBIOSも配布している。サイト上のエミュレーターでゲームを無料でプレイするといったことも可能だった。もちろんこうしたコンテンツ提供は、任天堂に無許可でおこなわれており、それでいて任天堂および製品のロゴマークなどが使用されている。多岐にわたる点で任天堂のIPを侵害していたわけだ。
これらのROMサイトのほかにも数多くの海賊サイトが存在しているが、「LoveROMS.com」と「LoveRETRO.co」の管理人が訴えられたことで、“自主的に”サービス停止に踏み切るという事例がいくつも見られた(関連記事)。任天堂自身はMathias夫妻を訴えて以来、大きな動きを見せていないが、この一件の影響は非常に大きかったようで、数多くのサイトが自主閉鎖もしくは隠居という道を選んでいった。今回の14億円という数字は、あらためてROMサイトの運営のリスクの大きさを物語る。この事例により、ROMサイトの運営はさらなる収束傾向に向かうと予想できそうだ。
それでも、インターネットにはまだまだ数多くの違法ROMサイトが存在する。IPを守るための任天堂の終わりなき戦いは、これからも続くだろう。