『Friday the 13th: The Game』を巻き込んだ「13日の金曜日」の版権争いが一応の決着を見る。依然として開発再開の可能性は望み薄
今年6月、映画「13日の金曜日」をもとにした、殺人鬼ジェイソン・ボーヒーズと、最大7人のキャンプ場監視員に分かれてプレイする非対称マルチプレイ・ホラーゲーム『Friday the 13th: The Game』の開発停止がパブリッシャーのGun Mediaから発表された。開発停止の理由は、ライセンス問題である。映画「13日の金曜日」の第1作目の脚本を手がけたVictor Miller氏が、著作権法に基づいて2016年に発行した、同フランチャイズの権利を保有するHorror Inc.への契約解除通知。そして、その通知は無効だとしてHorror Inc.がMiller氏に対して起こした訴訟が関係している。つまり、作品の権利の所在が曖昧な状態で、開発のリソースを割く訳にはいかないという判断だった(関連記事)。
そして約2年間におよんだその訴訟の第1審判決が、今年9月末に下された。これを受けてHorror Inc.は10月4日、海外メディアBloody Disgustingを通じて『Friday the 13th: The Game』についてコメントを発表している。
I read the decision in Horror Inc. v. Miller and here's my take on the case. First, a little background. The Copyright Act allows authors to terminate grants of their copyright interest 35 years after the transfer. https://t.co/upJUe9ZcWD 1/
— Larry Zerner (@Zernerlaw) October 1, 2018
*映画「13日の金曜日 PART3」にシェリー役として出演し、現在は弁護士として活躍するLarry Zerner氏が今回の判決を解説。
まず裁判について、第1審ではVictor Miller氏は映画「13日の金曜日」の制作においてクリエイティブな権限を持った著作者だったのか、それとも映画製作のために雇われただけに過ぎない脚本家だったのかが大きな争点だった。そして裁判所は13項目にわたる要素について検討した結果、Miller氏は被雇用者ではなく、同作の権利の返還請求をすることができるという判決を下した。Horror Inc.側は、Miller氏は被雇用者のみを対象とする全米脚本家組合に当時加入していたことや、また脚本は今回原告に名を連ねている、映画シリーズの監督Sean Cunningham氏との共著だったことなどを主張していたが、裁判では認められなかった。
ただし、Miller氏が返還を求めることができるのは映画「13日の金曜日」の第1作目に関する権利のみで、その効力はアメリカ国内に限られる。つまり、アメリカ以外での第1作目の権利、およびその他のシリーズ作の権利については依然Horror Inc.が保有する。ジェイソンの姿として多くの人がイメージするであろうアイスホッケーのマスクを付けた出で立ちも、第3作目から登場したためHorror Inc.が引き続き権利を持つことになる。とはいえ、裁判で「Miller氏が被雇用者だった」という主張が認められなかったHorror Inc.は判決について失望感を示し、上訴することも選択肢に入れて現在対応を検討しているとのこと。
そして今回の第1審では、ゲーム版である『Friday the 13th: The Game』に関しては何の判断も下していない。つまり、パブリッシャーのGun Mediaが本作の販売を継続することは可能ということになる。ただし、将来的に新たなコンテンツを追加することについては、依然複雑な状況で困難である旨をHorror Inc.は述べている。これまでにも、Sean Cunningham氏が新コンテンツの開発についてVictor Miller氏との合意を得ようと試みたことがあったが、Miller氏はCunningham氏との交渉には一切応じない姿勢を見せたという。Gun Mediaは、すでに本作の開発を無期限停止にしており、追加要素の開発を今後おこなう可能性は無いと表明しているが(関連記事)、その背景にはこうしたMiller氏の態度があったとのことだ。
『Friday the 13th: The Game』は、国内PS4版がナツメアタリから今年8月に発売されたばかり。Gun Mediaは、本作のバグ修正やサーバーのメンテナンスなどのサポートは継続しており、その役目をこれまで開発を担当していたIllFonicから、本作のコンテンツ制作に携わっていた日本のスタジオBlack Tower Studiosに先月バトンタッチさせている(関連記事)。今回の第1審判決によって、「13日の金曜日」の権利の所在について一応の決着を見たが、Gun Mediaが本作の開発を再開させるかどうかは今のところ不明。前出の弁護士Larry Zerner氏によると、もしHorror Inc.が上訴すれば判決が出るまでにさらに2〜3年はかかるだろうとしており、そうなれば本作は今の状態のまま運営を続けるしか選択肢はなさそうだ(Zerner氏は、Horror Inc.が上訴審で勝てる見込みは薄いだろうともコメントしている)。
日本のカウンセラーの皆様、お待たせいたしました。キャンプクリスタルレイクでの時間をお楽しみください! pic.twitter.com/VBTKdDJtqX
— Friday The 13th Game (@Friday13thGame) August 3, 2018
なおHorror Inc.は、今回の裁判でVictor Miller氏側に認められたキャラクターや設定の権利を侵害しない形での、「13日の金曜日」の新たなプロジェクトについて現在積極的に検討しているとのこと。それは映画なのかゲームなのか、あるいは別のメディアになるのかは明かされていないが、近い将来発表することになるだろうとしている。