西部開拓シミュレーション『Depraved』の海賊版を遊ぶプレイヤーは、倉庫に湧き続ける“海賊帽子”に悩まされる
先月7月21日にSteamにて早期アクセス販売が開始された『Depraved』。日本語にも対応している同作は、ドイツ在住のふたりの兄弟が作る西部時代をテーマとした街づくりシミュレーションだ。2570円とやや高価な作品であるが、Steamでは100件を超えるレビューが投稿されており、なかなか好調な出だしであることを感じさせる。そんな『Depraved』には、一風変わった海賊版対策がなされているようだ。TorrentFreakがその詳細を報じている。
ことの発端は、海賊版の情報を共有するサイトにて、奇妙な報告が届いたこと。その内容はというと、『Depraved』をプレイし倉庫(Warehouse)を建てると、倉庫が勝手に海賊帽子で埋まっていくというものだ。この海賊帽子は徐々に、かつ無限に生まれてき、最終的に倉庫を埋め尽くす。もちろん、この海賊帽子は捨てることができない。倉庫が、まるごと使い物にならなくなるというわけだ。
この現象はSteamコミュニティでも複数報告されている。前出のTorrentFreakの取材に応えた開発元のEvil Biteは、一連の仕掛けが海賊版を使用するユーザーにかけたものであることを認めた。海賊版を遊んだプレイヤーは、倉庫に海賊帽子が湧き続けるとともに「ふたりの開発チームで作っているゲームをサポートしてください(Please support our 2 man development team)。」というテキストメッセージが出るとのこと。
開発者のひとりであるDanilo Tondl氏は、このDRMは極めて安価に仕込んだものながら、機能しているとコメント。自分たちの生活がかかっている以上、なんらかのDRMを仕込みたかったが、単なるプロテクトに終わらないものにしたかったという。そこで考えたのが“海賊帽子地獄”であったというわけだ。
クラッカーは一般的にクラックが終わるとゲームを遊ばず次のクラックソフトを探す。ゲームを遊んだ上での不備を確かめるユーザーは少ないという。そこに目をつけ、ゲームを数時間遊び導入する倉庫にギミックを仕込むことで、ゲームの楽しさを感じてもらった上でプレイを妨害する。実質的にはDRMというよりデモ版に近い仕掛けにしたとDanilo氏は語っている。実際に、この海賊帽子に引っかかりはしたものの、ゲームに魅力を感じ購入に至ったケースも確認しているという。この仕掛けが存在することが広まれば、不意打ちは機能しなくなるが、Evil Biteにとっては、それはそれでいいのだろう。
ご存知の方も多いだろうが、海賊版対策としてゲームにギミックを仕込むというのは昔から用いられている手法だ。PCゲームではゲーム開発会社シミュレーション『Game Dev Tycoon』の海賊版を遊んでいると、ゲーム内で開発しているタイトルが海賊行為に遭い、破産するという痛烈な皮肉を含むギミックが導入されている。『Depraved』に仕掛けられている“トラップ”は決して目新しいものではないが、小さなインディースタジオが安価でかつ意味あるものにするため絞り出した知恵であり、それが機能しているのであれば注目に値するだろう。
なお『Depraved』は現在、特定のアンチウィルスソフトウェアからはIDP.Generic Virusとしてマルウェア扱いされているようだ。Evil Biteは、このウィルス認定は誤りだとし、検出対象からの除外やアンチウィルスソフトの無効化を呼びかけている。PCゲームが、IDP.Generic Virusとして誤検知されるケースは『Space Engineers』を代表にいくつか報告されている。“海賊帽子”が誤検知に関係しているかどうか不明であるが、購入を予定している方は気をつけてほしい。
『Depraved』はSteamにて日本語に対応し早期アクセス販売中。早期アクセス期間はおおまかに見積もって1年が予定されており、今後も多くのコンテンツが追加されていく予定だ。