現在Steamにて早期アクセス販売中のローグヴァニア・2Dアクションゲーム『Dead Cells』は、高い評価を獲得し、発売から1年で70万本を超える大きな売上を記録している。その開発を手がけるフランスのインディースタジオMotion Twinは、所属スタッフ全員がフラットな立場、つまり役職などによる上下関係は存在せず、しかも給料も全員同じという、ほかのスタジオではあまり見られないスタイルで運営されているという。海外メディアKotakuが報じている。
Motion Twinのリードデベロッパー/ゲームデザイナーSébastien Bernard氏によると、同スタジオでは長年勤めている人も、昨年雇ったばかりの新人もみな同じ給料で、作品がヒットしてボーナスが出る際も均等に分配しているとのこと。同スタジオでは、この制度を「Anarcho-syndical Workers Cooperative(無政府主義労働組合)」と呼んでいる。なぜこのような制度を採用しているのかというと、ゲームはチームで作り上げるものであり、成果に対して誰の仕事がほかの誰よりどれだけ貢献したかを具体的に計ることはほぼ不可能だからだそうだ。スタッフごとの貢献度の違いを明確に出来ないならば、同じ給料にするのがフェアだということなのだろう。
ただ、一生懸命働いてもサボっても給料が変わらないというのは、スタッフのモチベーションへの影響が懸念される。Motion Twinは2001年に設立され、『Dead Cells』以前はモバイル向けのゲームを多数手がけていた。その過程ではスタッフを大幅に増やしたこともあり、やはり多くのスタッフが仕事へのモチベーションを失ってしまったことがあったという。その経験から、抱えるスタッフの上限は15人と決め、現在は11人が同スタジオに勤めている。全員が平等なシステムでは、スタジオやプロジェクトへの各々の情熱に依存する部分が大きく、人数が増えるとそのバランスを維持することは難しいということだろうか。
ちなみに、基本給はほかのスタジオと同じくらいとのこと。こうした金額はあまり公開されていないが、海外メディアGamesIndustry.bizが今年ゲーム開発者におこなったアンケートによると、平均年収はおよそ5万ドル(約550万円)。また海外メディアGamasutraが2014年におこなったインディースタジオを対象にした調査でも、およそ5万ドルという結果だった。あくまで平均の金額ではあるが、ある程度の目安にはなりそうだ。
There're more people in the @motiontwin office for the #LDJAM than there usually are during the week! #gamedev pic.twitter.com/0NTkbKPaUQ
— Motion Twin (@motiontwin) December 6, 2014
Motion Twinではスタッフ全員が平等ということで、社長のような立場の人間すら置いておらず、ゲーム開発において何らかの判断が必要な時も、全員で話し合い、時に投票をおこなって結論を導き出すことにしているそうだ。すべてのスタッフがプロジェクトに深く関与し、経験にかかわらず良いアイデアを出せば採用されるかもしれない環境が用意されている。スタッフのプロジェクトへのモチベーションを維持し、高めるための工夫で、なおさら少人数の方が都合が良いスタイルだと言えそうだ。同スタジオではこのほか、スタッフの働き過ぎを防止する取り組みもおこなっているという。
Motion Twinのこうした制度ついては、ほかのゲーム開発者からは素晴らしい、あるいは興味深い取り組みだという声がSNS上にあがっている。もちろん、同スタジオがかつて経験したように、どのスタジオでもうまく機能するわけではないだろう。スタッフの採用時にも、このシステムの中で実力を発揮できる人物かどうかを見極めることが求められそうだ。ただ、Motion Twinでは上手く回っており、それは『Dead Cells』の順調な開発状況およびヒットさせたことからも見て取れる。今後同スタジオに倣って、同じスタイルを試してみるスタジオは現れるのだろうか。
なお、『Dead Cells』は8月7日にSteamにて正式リリースを迎える。これに合わせて、Nintendo Switch/PlayStation 4/Xbox One版も発売される予定で、日本語に対応し国内での発売も計画されている(関連記事)。