地獄に魂を売った男を描く小説『Devil’s Hunt』がゲーム化、著者自らがスタジオを設立し開発を進める意欲作
ポーランドに拠点を置くスタジオLayopi Gamesは26日、現在開発中のアクション・アドベンチャーゲーム『Devil’s Hunt』のティザートレイラーを公開した。同スタジオは、本作の原作である「Równowaga」の著者、Paweł Leśniak氏が立ち上げたスタジオで、著者自らが制作を担当するという珍しい試みとなる。パブリッシングは、ヨーロッパとロシアにオフィスを持つ1C Companyが担当する。
『Devil’s Hunt』は、天使と悪魔の戦争を書いた物語だ。舞台となるのは、恐ろしい形態をしたモンスター達がはびこる地獄の世界。主人公であるDesmond Pearceは現代のアメリカにて、埃の被ったような毎日を過ごしていた。そんな日々の中、愛する人や友人達の裏切りにより、生きる希望を見失い、とうとう彼は自ら命をたってしまう。彼が死して目覚めた場所は、荒廃した地獄世界。その地獄の支配者、ルシファーからの問いかけられた「地獄の支配者にならないか」という依頼に答える形で、Desmondは、地上で魂を貪り食う悪魔として、仕事をこなすことになる。それが、世界中を戦争の渦に巻き込む、残酷な計画の一部になるとは知る由もなかった。
本作は、三人称視点で展開されるアクションシューターだ。詳細は多く語られていないが、開発者曰く、堅実なアクションシステムを搭載する予定だという。レベルが上がるにつれ、スキルポイントが与えられ、それらを使用することで、新たな技やプレイスタイルを習得できる。プレイヤーは、このスキルの割り振りを、どの時点でも即座に利用が可能であり、状況に応じて全く違ったプレイスタイルを構築し直すことができるという。
本作の原作者兼開発者であるPaweł Leśniak氏は、ポーランド在住の作家だ。氏は、本作のゲーム化のため、自らスタジオLayopi Gamesを設立し、開発に取り組んでいるという。作家が、自らの作品を別のメディアで制作する試みは、ゲーム業界の中でも珍しい。ポーランドの作家によるゲーム作品といえばAndrzek Sapkowski氏の『The Witcher』を思い出す人もいるのではないか。
Andrzek Sapkowski氏の著作「魔法剣士ゲラルト」は、CD PROJEKT REDが手がけた、『The Witcher』シリーズの原作となる作品だ。ゲーム版の同作シリーズは、2017年3月、第一作から三部作を合わせた累計販売本数が2500万本を突破(関連記事)。また、同社の2017年第1四半期の決算では、約29億円もの売り上げを獲得したことが記憶に新しい。(関連記事)この株価の時価総額は、ポーランドの企業の中で最大規模の収益であるともいわれている。この内容によれば、同社の株価の時価総額が、ポーランドの企業の中で最大規模の従業員数(2万5000人)を誇る、エネルギー企業Tauron Polska Energia SAを超える数値であることが注目されていた。つまり、ポーランドの企業において、もっとも多くの利益を出している企業は、ゲーム会社であるCD PROJEKT REDだというのだ。これほどまでの収益を獲得したのは、『The Witcher』シリーズの支えがあったからこそである。
『The Witcher』がまさかヒットするとは思わなかった
しかし、この売り上げは、Andrzek Sapkowski氏には一切入っていないという。この件に関して、昨年、海外のインタビューにて語っている。Gamespotによれば、ゲーム版『The Witcher』を手掛けたCD PROJEKT REDとのライセンス契約時に、利益率からの報酬ではなく、即金での報酬を要求したという。これは、氏が「『The Witcher』で利益は出ないだろう」と見越した判断であった。結果は相反するものであり、当時の判断を「非常に馬鹿な選択であった」と公言している。しかし氏は、「CD PROJEKT RED自体を恨んではいない。あくまで自身の判断の軽率さを悔いている」と述べ、また「ゲーム自体は非常に良くできており、彼らは利益を全て獲得する権利がある」ともコメントしている。
Andrzek Sapkowski氏と同じ、ポーランドの作家であるPawełLeśniak氏は、版権を他スタジオに売るのではなく、自らスタジオを設立し、ゲーム化を進める。氏の取り組みは、同郷の作家であるSapkowski氏が『The Witcher』で味わった、苦い体験を参考にしているのかもしれない。ゲームディレクター Michał Sadowski氏が語るところによると、『Devil’s Hunt』は、シリーズ最初の作品になることを公言しており、原作「Równowaga」同様、同作はシリーズ化することが示唆されている。プラットフォームとしては、PC(Steam)/PlayStation 4/Xbox Oneで、2019年に発売する予定だ。異例の形で設立することとなったLayopi Gamesだが、今後どのような形でゲーム業界に頭角を現してくるのか、期待したいところである。