『Skyrim』向け大型Modプロジェクト「Beyond Skyrim: Cyrodiil」ティーザー映像公開。プロの声優を起用し『Oblivion』の200年後描く

『The Elder Scrolls V: Skyrim』に第四紀(Fourth Era)のタムリエル大陸を再現する大型Mod「Beyond Skyrim」に、新たにクヴァッチ近辺地域を追加する「Beyond Skyrim: Cyrodiil - Kvatch」のティーザートレーラーが公開された。

『The Elder Scrolls V: Skyrim(以下、スカイリム)』に第四紀(Fourth Era)のタムリエル大陸を再現する大型Mod「Beyond Skyrim」に、新たにクヴァッチ近辺地域を追加する「Beyond Skyrim: Cyrodiil – Kvatch」のティーザー・トレーラーが公開された。

弊誌で過去にご紹介したとおり「Beyond Skyrim」は開発規模が大きいため、Modはタムリエル大陸の各地域ごとにそれぞれ7つのプロジェクトに分かれている。今回の「Beyond Skyrim: Cyrodiil – Kvatch」は、以前リリースされた「Beyond Skyrim – Bruma」と同じくシロディールの開発を担当する「Beyond Skyrim: Cyrodiil」開発チームによる2つめの成果となる。過去の「Beyond Skyrim – Bruma」では、各ギルド支部や主人を失った曇王の神殿など広範な地域が再現されていた。一方で、開発チームは「Beyond Skyrim – Bruma」についてあくまでティーザーであるとしており、ゲームは探索を続けるうちに見えない壁に阻まれる状態となっていた。今回の映像の舞台となるクヴァッチは、そのブルーマから南西に位置する都市である。「Beyond Skyrim: Cyrodiil – Kvatch」がシロディールのどのぐらいの地域をカバーすることになるのか、現在のところは不明だが、敢えてクヴァッチをタイトルに冠しているからには、今回はまだ北方にやや離れたブルーマと連結されないのかもしれない。

今回の舞台となるクヴァッチがどのような都市であったか、簡単におさらいしておこう。『The Elder Scrolls IV: Oblivion(以下、オブリビオン)』でのクヴァッチは、ブルーマと並ぶ激戦地のひとつとして知られる。ゲーム中で耳にする「クヴァッチから“珍しく”朗報があるよ」という表現がさし示すとおり、クヴァッチはブルーマと並んで、たびたび災厄に見舞われる都市であり、『オブリビオン』当時は焼け野原と難民キャンプといった有様であった。『オブリビオン』でゲームの主人公は“ブルーマの救世主”の二つ名のほかに“クヴァッチの英雄”とも呼ばれることになるのだが、呼び名の由来は、主人公がデイドラに蹂躙された都市クヴァッチを解放したことによる。クヴァッチはそれだけ『オブリビオン』において重要な街のひとつであり、かつてのプレイヤーにとっても、思い出の地といえるだろう。

『スカイリム』の時代――第四紀の時代背景を確認しておこう。帝国はアルドメリ自治領との大戦で疲弊していた。かろうじて帝都を奪還したのち「白金協定」により停戦を迎えたものの、皇帝からドラゴンの血脈は失われブレイズは解散、タロス信仰も禁止された暗黒期を迎えている。タロスは帝国を築いた英雄タイバー・セプティムを神格化したもので、九大神の一柱に加えられた。タロス信仰の禁止は、タイバー・セプティムの出生地であるスカイリムの反発を招いている。

今回のトレーラーからわかることは、あまり多くない。『オブリビオン』で破壊されたクヴァッチの街は再建されており、暗い聖堂内では、夢枕に立ったアカトシュの不吉な予言を巡る対立が示唆されている。タロス信仰が禁止されたとはいえ、九大神信仰の厚い帝国内においては最高神であるアカトシュへの信仰心は依然として根強い。特にクヴァッチにはアカトシュ聖堂があり、祭壇にはアカトシュの肖像が祀られている。今回のトレーラーに登場している場所も、おそらくアカトシュ聖堂と思われる。アカトシュ信仰を巡って、クヴァッチに新たな暗雲が立ち込めていることをうかがわせる内容となっている。

「Beyond Skyrim: Cyrodiil – Kvatch」に関しては、今回のトレーラーのほかに、多数のイメージボードや、それをもとにしたCGイメージなども公開されている。クヴァッチの英雄を描いたと思われる、クヴァッチの石像もそのひとつだ。「Beyond Skyrim」で石像といえば、「Beyond Skyrim – Bruma」のブルーマの救世主像があげられるだろう。石像を再訪して「オブリビオンの石像とちがう」と残念に思った方も多いのではないだろうか。『オブリビオン』でのブルーマの救世主像では、プレイヤーのつくった主人公の装備や造形をそのまま石像の姿に反映する方法がとられていた。そのためブルーマの救世主像は、プレイヤーによって異なる姿となっている。「Beyond Skyrim – Bruma」ではそれを反映する手段がなく、再現する気が感じられない姿のブルーマの救世主像が設置されているのだが、それにしてもあまり格好の良いものとは言い難い代物だった。

では、今回のクヴァッチの英雄像(?)はどうであろうか。ブルーマの救世主像と比較すると、格段に勇ましい姿をしている。しかし、例によって(あなただけが知っている)真実のクヴァッチの英雄の姿とは似ても似つかない(はずだ)。あなたの英雄はアークメイジであったかもしれないし、戦士ギルドのマスターであったかもしれないし、また盗賊ギルドのグレイ・フォックスであったかもしれないし、あるいは闇の一党の聞こえし者であったかもしれない。あるいはそのすべてであったかもしれないし、そもそも女性であったかもしれない。いずれにしてもそういった『オブリビオン』での設定を『スカイリム』のModで引き継ぐことの難しさを、これらの石像が表しているといえるだろう。劇中においてクヴァッチの英雄の扱いがどのようになるのか、あるいは言及自体が避けられてしまうのかも気になるところだ。

「Beyond Skyrim – Bruma」では、『オブリビオン』のサウンドトラックをアレンジした音楽が、ユーザーから好評であった。それに加え今回の映像では、早くも声優の演技が素晴らしいとのコメントが多く寄せられているようだ。「Beyond Skyrim: Cyrodiil」では『Dust: An Elysian Tail』や『Wasteland 2』、『Heroes of Newerth』といったゲームに出演したプロの声優を起用していると明らかにしており、演技の面でもModの域を超えた仕上がりが期待されている。

「Beyond Skyrim: Cyrodiil – Kvatch」のリリース予定などは現在のところ明らかにされていない。開発チームでは、引き続きリリースへ向けて協力者を募集中とのことだ。弊誌では、モロウウィンド地方を舞台にした「Beyond Skyrim: Morrowind」や「Beyond Skyrim: Three Kingdoms」についてもご紹介しているので、気になる方は是非あわせてご覧いただきたい。

Masahiro Yonehara
Masahiro Yonehara

ゲーム世界の散策とスクリーンショット撮影を趣味にしています。コア、カジュアルを問わず、ハードルが低く奥が深いゲームに惹かれます。

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