『You Must Build A Boat』ヒット作を土台に新要素をプラスしたマッチ3パズルRPG
Mobile Pickは、ここ数日の間に発売されたモバイルゲームのなかから光る何かを・際立つ要素を・特筆すべきものを(・場合によっては目に余るデキを)持つタイトルを紹介する連載。第30回は、オンラインバトルレーシング『BREAK ARTS : cyber battle racing』、レトロスタイルのサッカーゲーム『Tiki Taka Soccer』、マッチ3パズルRPG『You Must Build A Boat』を紹介する。
『You Must Build A Boat』
『You Must Build A Boat』は、『10000000』を手がけたEightyEightGamesの最新作である。iOS版は360円、Androidは399円、PC(Steam)はローンチセールで333円で販売中。
『You Must Build A Boat』の土台となっているのは奇妙なタイトルがつけられた作品『10000000』である。RPG要素のあるスライド方式のマッチ3パズルゲームであり、ダンジョンから脱出するためには合計スコアを1000万点以上にしなければならず、これがタイトルになっている。数種類のタイルにはそれぞれ絵柄が描かれており、たとえば「剣」ならばモンスターに対する物理攻撃、「杖」なら魔法攻撃、「鍵」は宝箱を開ける、これらは3つ以上隣接させて消したときに効果を発揮する。モンスターとの戦いはパズルRPGの代表作『Puzzle Quest』ほど戦術的ではなく、気楽に遊んでもいずれはクリアできる優しい設計ということもあって、多くのプレイヤーに受け入れられたのかもしれない。
『You Must Build A Boat』と『10000000』との違いは、ビジュアル以外にはそれほど感じられないかもしれない。本拠地がダンジョンからボートに変わった、集めたコインなどを消費して能力をアップグレードできるお店が個性的な見た目のキャラクターになった、ボートでマップを移動するシーンがあり探検している気分になれるようになった、などなど、見た目の変化がもっとも目立っている。基本的なゲームの仕組みは引き継がれており、チュートリアルを読み飛ばしても遊べる簡単設計である。
大きな変化はないと感じるのは、遊び始めの数分間だけだろう。ある程度ゲームを進めていくと、プレイヤーを「おっ」と思わせる新要素が登場する。これにより『10000000』の良さをそのまま保ちつつ、より戦術的なゲームプレイも楽しめるようになった。詳細はあえて書かないが、1000万点を目指して探索を続けたプレイヤーは本作を購入してもがっかりすることはないだろう。
本作『You Must Build A Boat』の目的は、「いかに早くクリアできるか」である。それを目指すのであれば、次の一手を考えながらプレイしなければならず、それなりに難度が上がっている。逆に早さを意識せずに遊ぶと、『10000000』と同じようにひたすらマッチ3パズルを繰り返し、集めた素材でキャラクターを育てるだけのゲームだと感じるかもしれない。しかしそれは退屈というわけではなく、どこか『Cookie Clicker』系に近いものがある。いわゆる単純作業の繰り返しが楽しく感じられる作品の良い例といえる。
『BREAK ARTS : cyber battle racing』
『BREAK ARTS : cyber battle racing』は、オンライン対戦を楽しめるレースゲームである。コースを走るのは車両ではなくロボット。ただスピードを競うだけでなく、ほかのプレイヤーを攻撃することもできる。というわけで、ジャンルは「オンラインバトルレーシング」となっている。iOSとAndroidどちらも無料で配信中。開発を手がけたのはMercuryStudio。Unityを使い、一人でゲームを開発しているという。
ゲームモードはオンラインで対戦できる「Online Battle」、経験値や賞金だけでなく目標を達成すればパーツが手に入る「Salvage Mission」、最短時間でのクリアを目指す「Time Attack」がある。「Online Battle」は自分のレベルに近いプレイヤー同士でマッチメイクされるので、圧倒的に不利なレースに参加させられることはないと思われる。
ゲーム開始時点での自機はとてもシンプルなのだが、レベルを3まで上げるとパーツが一式手に入る。このパーツとは機体の各部位のパーツであり、それぞれ異なる性能を持っている。単純に説明すると、スピードを求めるのか、それとも攻撃力なのか、またはバランス型でいくのかといった自分なりのカスタマイズができるというわけだ。パーツは「Salvage Mission」の目標を達成しても手に入るし、「Black Market」でBaCoinと引き換えに購入することもできる。
いくつか不具合はあるものの、複数のプレイヤーでのオンライン対戦はなかなか白熱する。操作には慣れが必要だが、一風変わったレースゲームを探しているのであれば、お気に入りの作品になるのではないだろうか。
『Tiki Taka Soccer』
『Tiki Taka Soccer』は、その名のとおりサッカーゲームである。サッカーのプレイスタイルの一つである“Tiki Taka”という言葉を見て、通の方であれば「FCバルセロナ」を思い浮かべるだろう。といっても、本作には実名のサッカー選手やクラブは登場せず、すべて架空である。iOSとAndroidどちらも無料でダウンロードできる。デベロッパーは、サッカー大国イギリスに拠点を置くPanic Barn。
『FIFA』シリーズと比べれば物足りないかもしれないが、本作はリアル志向ではなくシンプルなつくりになっている。だからといってファミコン時代の初期に任天堂から発売された緑色のカセット「サッカー」ほどレトロでもない。「4-4-2」や「4-3-3」など複数のフォーメーションが用意されており、選手の獲得やコーチの雇用といった管理も楽しめる。また、選手がスキャンダルを起こすと新聞に掲載されてしまい本人のモチベーションが低下するという細かい工夫もある。
基本操作はタップとスワイプのみ。ボールを持っている状態でフィールドをタップすればドリブル、味方の選手をタップすればパスを出し、スワイプでシュートを放つ。複数の選手を同時に操作することはできないのだが、プレイヤーがボールを持てばほかの選手も連動して動いてくれるので、パスをつないでゴールを決めることも可能である。ただ、後半になって選手に疲労が見え始めると、とたんにパスミスが増える。走る速度も下がり、まともに試合を進めることは困難になってしまう。どうしても勝ちたいときは、ハーフタイムに疲労を回復するアイテムを使用するといいだろう。このアイテムはゲーム内通貨で購入できる。
アプリ自体が無料ということで、ゲーム内のお金のやりくりは難しく、勝つために疲労を回復するアイテムを購入すれば、新たな選手を獲得するための資金が足りなくなってしまう。なかなか強いチームを作り上げることはできないが、サッカー好きの方はぜひとも遊んでみてほしい。
第30回Mobile Pickの最優秀作品には『You Must Build A Boat』を選ぶ。冒険を進めるほどボートは大きくなり、船室とNPCが増えてにぎやかになっていく。ビジュアル面の向上だけでなく、パズルの部分には新要素があり、「ただ見た目を変えただけ」の新作ではない。デバイスを縦持ちで遊べるので、iPhoneやAndroidスマートフォンとの相性も良い。ゲームのルールもシンプルなので、空いた時間の暇つぶしにも最適だろう。