「INDIE STREAM」レポート [3] – PLAYISMの生存戦略
引き続き、PLAYISM から国内向けサービスについて広報関連業務を中心にハンドルする水谷氏が登壇しました。
まず要旨とあわせて記者の私見も述べると、PLAYISM は単なるゲーム配信サイトではありません。「日本版 Steam」などと解釈されたりもしていますが、それは半分くらい間違っています。そして、INDIE STREAM を創設したことだけが違いではありません。
先に後ろ向きな理由を指摘すると、生粋のスチマー諸兄はご存知のとおり、もはや Steam は単純なゲーム販売にはとどまらない総合ゲーミングコミュニティ&プラットフォーム&サービスへと変貌しています。現状の PLAYISM では良くも悪くもその領域には達していません。
前向きには、PLAYISM ならでは柔軟さがあること。とくにインディー系にフォーカスしてラインナップを取り揃えてきたこともあり当該分野にあかるく、タイトルの選出にあたる審美 眼がいくらか担保されています。たとえば『LA-MULANA』の配信の是非について投票を求めるようなことはないでしょう。
そして、ローカライゼーションに積極的であること。「それは Steam の方が先に進んでいることではないか」という声が聞こえてきそうですが、それはあくまでも Valve 作品の話です。PLAYISM の母体となっている Active Gaming Media (AGM)の主要業務の1つがローカライズであり、そのリソースを大いに活用できるのです。インディー作品で多言語対応されるケースはあまり多くありませ んが、PLAYISM がかかわることでそれが実現されます。
以下、水谷氏の講演。
AGMは30名くらいの会社です。弊社では” Boundless Entertainment”を掲げています。これは”Borderless”ではありません。「限りなくエンターテイメントの可能性を広げていく」という理念です。
具体的には、まずローカライズ。AGM には大勢の外国人社員がいます。もう1つがクリエイティブ。これは広告制作です。私もコピーライターとして普段仕事をしています。
ローカライズ―ようするに作品を世界に届ける形に変えること―と世界の人に届けるクリエイティブのちからを掛け合わせることで、日本のものや世界の ものを国境を越えて可能性を広げられるのです。我々はとくにインディーゲームの支援をするダウンロードサイトとして PLAYISM を運営しています。
私たちは PLAYISM で世界のゲームを日本語にして配信したり、逆に日本のゲームを英語にして海外に配信したりしています。その最終目標は、 PLAYISM の拡大だけではありません。インディーゲームの価値を高め、そのデベロッパーの可能性を広げることにこそあります。
PLAYISM というサイトにこだわるのではなく、もっと広い市場に対して作品をパブリッシングしてゆく・リリースしてゆくお手伝いもしています。たとえば NIGORO の『LA-MULANA』は PLAYISM から Steam・GOG・GamersGateといった海外の主要な PCプラットフォームに展開しました。
日本人が Steam などで作品を出すことはすごくハードルが高いのです。そこで知名度の高い『LA-MULANA』をもってして日本インディーの海外での突破口をひらきました。
『LA-MULANA』の実績もあり、プチデポットさんの『メゾン・ド・魔王』 を Steam でリリースすることが決定しました。 (会場歓声) ありがとうございます、買ってください。 (会場笑) 今回は Greenlight 審査なしで10月半ばくらいのリリースを予定しています。横に繋がることでこういうことができるようになるという1つの事例でしょう。
今日ソニーさんの本社に集まっていることからもおわかりいただけると思いますが、PC 向けだけでなく、コンシューマへ、つまりPlayStation プラットフォームへインディーズの可能性を展開することも想定しています。PlayStation Mobileではピグミースタジオさんのご協力ですでに『Eufloria』や『僕は森世界の神になる』を移植して配信しています。
ソニーさん・PlayStationプラットフォーム・そして我々の今後の予定をご紹介します。まず、チェコのデベロッパーが製作した『Machinarium』。すでに海外 PSN では販売されているにもかかわらず日本では出ていませんでした。そこで我々が協力し、PS3/Vitaで国内でもリリースへこぎつけました。
これをはじめとし、海外のインディーゲームを日本のPS3やVitaの市場への持ち込みを計画しています。逆もしかりです。先にあったとおり、 『LA-MULANA』を Vita へ移植しようとしています。こちらもピグミースタジオさんのご協力です。このように、日本のインディータイトルを世界へ発信することができるようになるの です。
そして、PS4 への取り組みが始まっています。海外でも複数の賞を受賞した『TorqueL』 のPS4版の開発のお手伝いをしています。このように、国内のインディーゲームを PS4 を通じで全世界に発信することを考えているのです。ただ、Unity に PS4 が対応するかまだ不透明だったりします。Unityさんとソニーさんのほうでうまく話を進めてほしいところです。
日本にも法人化していない、いわゆる同人ゲームシーンや、個人開発の方がいらっしゃいます。これまでは法人でなければソニーさんとお付き合いするの は難しかったのですが、PLAYISM が仲介することで個人でも PS4 で作品を出せるようになるのです。『TorqueL』の事例のように、我々を頼っていただければ―もちろんマージンはいただきますが―ソニープラット フォームに挑戦できるような形を今後整えてゆきます。
最後に、日本人で PLAYISM と話をしてみたいという方は私、水谷へお声がけください。海外の方は彼、Joshua(注: PLAYISM の運営にかかわる人物。別名プレイズムマン1号。水谷氏の講演の通訳をしていた)へどうぞ。
水谷氏のプレゼンはここまで。このあと、新たにセクションを作ってインディー受け入れを進めるSCEJAからディベロッパーリレーション課の多田氏 らによる軽い講演がありました。PS4 アーキテクチャが PCのそれと類似しており、PC向けに開発されたインディー作品の移植が容易であること、販売にあたるサポートをすることなどを強調しました。
インディー界のキーマン4人によるトークセッションに続きます。