『テトリス』の歴史を記録した書籍「テトリス・エフェクト」が11月1日に発売。任天堂がソ連に送りこんだ一人の男の視点で綴る
白揚社は、『テトリス』の歴史を綴った初めてのノンフィクション作品「テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム」を11月1日に出版すると発表した。価格は2300円(税別)。著者はテクノロジー系ニュースサイトCNETの編集者であり、アメリカCBSのテレビ番組にテクノロジー専門家として出演もするDan Ackerman氏である(翻訳者は小林啓倫氏)。
正規のパッケージ版だけで1億7000万本以上を売り上げ、世界でもっとも売れているゲームとされている『テトリス』は、東西の冷戦が終わりを迎えようとしていた1980年代のソビエト連邦で、国立科学アカデミーの科学者アレクセイ・パジトノフ氏によって開発された。1980年代当時すでに大きな人気を獲得しており、ただのコンピューターパズルゲームでありながら、ソ連にとっては西側への貴重な文化輸出品のひとつだった。そのため、『テトリス』の知的所有権は政府直轄の組織ELORGによって管理されていた。
巨額の富を生む可能性を秘めたその落ち物パズルゲームを求めて、西側の企業はライセンスの獲得に躍起になったが、本書はELORGに接触するためにソ連に渡った中のひとりヘンク・ロジャース氏がモスクワの地に降り立つところから幕を開ける。ロジャース氏のクライアントは任天堂である。任天堂はのちにゲームボーイ版『テトリス』を発売し大ヒットさせるが、そのライセンス獲得はロジャース氏が代表を務めるBPS(Bullet-Proof Software)が担当しており、その当時の秘話が語られる。ロジャース氏は、後年には『テトリス』の版権を一括管理するTetris Holdingをパジトノフ氏と共に設立しており、まさに『テトリス』を語るうえで欠かせない人物のひとりである。
【UPDATE 2017/10/26 13:10】 記事初版にて「(ゲームボーイ版『テトリス』の)開発はロジャース氏が代表を務めるBPSが担当」と記載していましたが、正しくは「ライセンス獲得はロジャース氏が代表を務めるBPSが担当」となります。訂正しお詫び申し上げます。
本書ではそういったライセンス争いや法廷闘争、また『テトリス』はどのようにして生まれたのか、そして東西を隔てる“鉄のカーテン”によって阻まれることなく、いかにして西側諸国へと広まったのかなどを、関係者への取材をもとに映画のようなストーリー展開で詳しく記録している。