鬱に苛まれるライオンが主人公のRPG『Lenin』開発中。平和でありながら苦しみに満ちた閉塞的な世界を濃密に描く
発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第483回目は『Lenin』を紹介する。
『Lenin』はライオンが主役のRPGだ。この主人公ライオンLeninはただのライオンではなく、物珍しい「アルビノライオン」。世界でたったひとりの存在であるLeninは、仲間がいないがゆえに内気な性格であり、学校ではいじめられ、母親から疎まれるうちにうつ状態に陥ってしまう。気難しくデリカシーの欠ける母親はLeninになぜ生まれたのかと叱責する。同級生のIssacは自らの自信の欠如から逃避するために、Leninをからかい続ける。プレイヤーは悲しみと絶望に染まったLeninとなり、物語をたどっていくことになる。
『Lenin』は『MOTHER』といった名作や近年のインディータイトルから影響を受けているという。本作はRPGであるものの、戦闘はほとんどなく、あくまでパズルを解いたり選択肢を選ぶといった要素がゲームプレイの中心となるようだ。選択肢によってLeninの運命は大きく変化するので、慎重に行動や言葉を選ぶ必要がある。会話中にアイテムを使用することで展開が大きく変わることもある。使用した結果、状況が良くなることも悪くなることもあるので、うまくタイミングを見極めよう。
本作の最大の特徴は、独特の閉塞した世界観だろう。『Lenin』の世界は戦争も滅亡もない。平和であるにも関わらず、どこか居心地の悪さを感じさせる。外の世界は霧が包まれ、家の中には小言を言う母親。誰に会っても歓迎されず、疎まれるばかり。優しさと悲しさが混じり入る音楽が流れ、プレイヤーはLeninとともに孤独を感じるだろう。またゲーム中には時に普段の生活から、Leninの内面とされる奇妙な世界に移動することもある。日常生活で苦しみを感じ、その苦しみと内面から向き合うという重層的な心理的な演出が用意されているわけだ。
開発を手がけているのはブラジル人開発者Lornyon氏を中心とした5名のチーム。現在開発チームは、ブラジルの最大手クラウドファンディングサイトcatarse.meでキャンペーンを実施中だ。現在英語とポルトガル語、スペイン語への翻訳が進められているとのこと。ちなみにitch.ioにてデモ版が公開されている。英語もさほど難しい表現が使われておらず、理解しやすいので、重苦しくも切ない世界を垣間見てみてほしい。