核戦争後の世界で街を再建するシミュレーション『Atomic Society』開発中。この世界に希望なし、しんどすぎる社会を導け
発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第464回目は『Atomic Society』を紹介する。
『Atomic Society』は街作りシミュレーションゲームだ。舞台となるのは核戦争によって崩壊した世界。生き残った人類はほんの数百人。プレイヤーは残された人々を率いて、新たな街を再建していくことになる。『Atomic Society』は『Banished』や『Tropico』といったタイトルと同様のシステムが採用されているという。具体的には、街には「食料」「水分」「健康」「住まい」「モラル」といったパラメータが常に変動しており、それらを適切な値に保ち続けることが目標になる。ただ、本作は前述タイトルよりも圧倒的に雰囲気が暗い。閉塞感漂う世界に嫌気が差し自殺を試みる住民も少なくない。原子力のにおいが残る荒廃した世界で、無秩序で混沌とした世紀末の街を作るか、規律厳しい街を作るかプレイヤー次第だ。
『Atomic Society』は住民の多彩な個性を特色としている。ゲーム内の街は、唯一生き残った人々が身を寄せる最後の場所で、住民ごとのバックグラウンドは大きく違う。たとえば、戦争以前は多くの人々を殺めてきた殺人鬼や、重度の精神疾患を持つ若者、麻薬常習者など訳ありすぎる人々が多いという。殺人鬼や殺人事件を誘発するリスクがあり、麻薬常習者は麻薬を伝染させるリスクを持つ。ほかにも肉を絶対に食さず動物の飼育を拒絶するベジタリアンや、宗教の原理主義をかかげる排他的な人々も登場するという。住民ひとりひとりに性格と過去があり、彼らの事情を把握しながら街を管理することが重要になる。
本作は街作りシミュレーションであるが、サバイバル要素も濃い。事件や飢餓、自殺によって住民はいとも簡単に死んでしまう。まず何よりも住民を守り増やすことが重要になるだろう。そのために重要になるのは「法律」だ。プレイヤーは街を治めるためにさまざまな法律を考案していく。殺人者を刑務所に入れている間は労働生産がなく食料が減り続ける、かといって処刑してしまうと労働力が減る。そうした状況では、殺人者をある程度許容する法律を作らざるを得ないというわけだ。食料のためにモラルを犠牲にするか、モラルのために食料を犠牲にするか。本作の社会はとてつもなく重く、しんどいのだ。ただ経営するだけでなく、キャラクターとして三人称視点で街をうろつくことで住民の生の声を聞くことも可能。しんどい話を率先して聞き解決のために葛藤してもいいし、面倒な問題は徹底的に放っておいてもいい。
開発を手がけているのはイングランドのスタジオFar Road Games。少人数の開発者で構成されているチームだ。それぞれのスタッフに本職の仕事があり、空いた時間に本作の開発に取り組んでいるという。『Atomic Society』の開発にはあえてKickstarterを使用せず、プレアルファ版を販売する方式をとっている。すでにプレアルファ版は1年以上販売されており、開発にはすでに2年以上の時間が費やされているとのこと。
『Atomic Society』の対応プラットフォームはPC、2018年初頭の発売が予定されている。