『フォーオナー』開発ロードマップ公開。専用サーバへの移行、ランクマッチの導入を含む大改革

Ubisoftは7月27日、『For Honor(フォーオナー)』の長期ロードマップを公開した。今回公開されたロードマップで目を引くのは、なんといってもP2Pから専用サーバへの移行である。本作はリリース後、とくに4対4マッチにてコネクティビティと安定性に問題があった。

Ubisoftは7月27日、『For Honor(フォーオナー)』の長期ロードマップを公開した。7月28日にはUbisoft Japanの公式ツイッターアカウントより、以下の日本語翻訳版ロードマップが公開されている。

専用サーバへの移行、そしてアグレッシブな剣戟へ

『フォーオナー』は今年2月にリリースされてから、定期的なアップデートにより改善が図られてきた。ヒーローのバランス調整、装備品スタッツの見直し、マッチメイキングの向上、アンチチートの取り組み、リワード/XP獲得量の増加、AFKファーミングへの制裁など、手を加えた分野は多岐に渡る。コンテンツとしては装飾・衣装・処刑技・エフェクト・エモートといったカスタマイズアイテムが合計で200点以上追加されたほか、5月のシーズン2開幕にあわせて新ヒーロー2体、新マップ2種、そして装備品の新レアリティが加わっている。

今回公開されたロードマップで目を引くのは、なんといってもP2Pから専用サーバへの移行である。本作はリリース後、とくに4対4マッチにてコネクティビティと安定性に問題があった。開発陣は数か月に渡り改善に努めてきたものの、インフラの分析・比較を行った結果、ついに専用サーバへの移行を決断するに至ったという。安定性を向上させることはもちろんのこと、長期的な運営を視野に入れたアーキテクチャを望んだ結果とのこと。ただし移行作業は簡単な仕事ではない。本作のクリエイティブ・ディレクターであるRoman Campos-Oriola氏は専用サーバへの移行を「車を走らせたままエンジンを交換するようなもの」と語るように、実現するのはまだまだ先の話ではある。

では近々ではどのような変化が期待できるのかというと、防御側が有利になりがちな戦闘システムの調整である。主にデュエルモードを意識したものだ。というのも、Oriola氏によると4対4の場合「守りが強すぎる」というマッチ展開は発生しないからである。氏いわく、目標は攻め手がもう少し報われるよう、攻撃時のリスクを軽減し、逆に防御側のリスクを増やすこと。たとえば現状のデュエルだと戦闘中にスタミナが切れても、そこまで危険にさらされることはない。そこにメスを入れるほか、攻撃をブロックした際に受けるダメージ量や、パリィ後のアドバンテージにも手を加えるとのこと。守り一辺倒ではジリ貧になるというわけだ。

アグレッシブな戦闘スタイルが報われる

また今後もシーズン毎に新ヒーロー2体と新マップ2つが追加されていく。8月に開幕するシーズン3では、ランク制デュエル・トーナメントのベータテストが開始されるほか、装備品のレアリティ追加(レジェンダリー)、レベルキャップの変更が予定されている。そして11月開幕のシーズン4では、4対4の新ゲームモード(詳細は今後公開)、訓練用アリーナ(好きなヒーローAI相手に練習できる)、新チュートリアルなどが加わる。

これまでも、そしてこれからもコミュニティと共に

このようにボリュームのあるロードマップを公開したUbisoftであるが、公式ブログで強調されているのはコンテンツの中身というより、いかに開発陣とコミュニティが一体となってゲームの改善に取り組んできたか、という点である。クリエイティブ・ディレクターのOriola氏は、コミュニティからのフィードバックを分析することがアップデートのカギになったと伝えており、たとえばヒーローのバランス調整ひとつにしても、データだけでなく、プレイヤーの認識も重要なファクターとなっている。どのヒーローが強すぎて、どのヒーローが弱すぎると「思われて」いて、そう思われる理由は何なのか。それはデータを眺めているだけではわからない。Oriola氏は「彼ら(コミュニティ)ならヒーローにどのような変更を加えるのか、という点にも耳を傾けました。それは我々にとって、解決すべき問題を特定するための有益な情報なのです」と語っている。

コミュニティから声の上がった「ゲーム内通貨(スティール)の獲得量が少なすぎる」という指摘に関しても、確かに開発陣が想定していたプレイヤーのスティール獲得ペースに追いついていないことが確認できたため、修正が加えられている(関連記事)。そのほか週次のライブ配信(Warrior’s Den)による情報シェアとQ&A、コミュニティメンバーを招くワークショップ、テスト環境の解放など、コミュニティの意見を意識した取り組みが続けられている。こうした活動のおかげで、新機能や変更点が妥当なものであるか早い段階で確認し、必要に応じて軌道修正することができたという。

Steam版の同時接続ユーザ数こそ1000人台(Steamspy)とやや停滞気味であるが、Oriola氏はローンチ以降毎週のようにコミュニティ・トーナメントが開催されていることに触れており、いまだコアなファンに支えられていることが窺える『フォーオナー』。本作には、他作品では替えられない独自の魅力が詰まっているのだろう。かといって同じUbisoftの『レインボーシックス シージ』のような、大幅なV字回復を期待するのは酷かもしれない。というのも、タクティカルFPSという大きな括りの中にいる『レインボーシックス シージ』と違い、『フォーオナー』は独自のジャンルを切り開いている。「ゲームが改善された」という評判を聞いて「タクティカルFPSは好きだし、復帰/新規参入してみるか」といった流れを『レインボーシックス シージ』では作れたかもしれないが、『フォーオナー』に関しては同様の流れを生み出しにくい。

ゲームの改善やコンテンツの追加だけでは、一度本作につまずいた者を立ち上がらせる、もしくは『フォーオナー』という独自のジャンルに新たに足を踏み入れさせる動機としては、まだ弱いように感じる。それでも、コミュニティを大切にし、耳を傾けながら改善に取り組んでいるという実績が認められれば、Ubisoft Montrealのプロダクトに対する信頼に繋がるし、ファンにとっても、継続的なアップデートにより愛し続けられる作品になってくれるのであれば、十分に喜ばしい傾向だろう。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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