日本の『スマブラ』プロプレイヤーたちに訊く、競技ゲームとしての『スマブラ』の魅力。ほかの対戦・格闘ゲームとなにが違うのか?(第3回 プレイヤー編 前編)
第1回、第2回で伝えてきた『大乱闘スマッシュブラザーズ(以下、スマブラ)』の競技シーンの歴史。一方で、そもそも競技として見た場合の『スマブラ』自体がどういったゲーム性を持っており、プレイヤーたちがどんな戦略を持ってして戦っているのかに関しては、まだまだ掘りきれていない。今回はさらに前後編の2回にわたり、「Evolution 2017(以下、EVO)」にも参加する「aMSaさん」「うめきさん」「あばだんごさん」の3人の日本『スマブラ』プロプレイヤーにお話をうかがい、特に『スマブラ for Wii U』を中心とした、『スマブラ』自体が持つ競技性や観る魅力について伝えていただく。
――ここでは「EVO 2017」でも競技種目として登場する『スマブラ for Wii U』と『スマブラDX』のゲーム性についてお伺いしたいと思っています。
aMSaさん:
「aMSa」と申します。今「VGBootCanp」というチームに所属してる『スマブラDX』のプロスマブラー(※スマブラー: 『スマブラ』プレイヤーの略称)です。プロになったのが2014年なので、それから3年ですね。『スマブラ』自体は大学時代から、友人と『スマブラDX』をやり続けております。キャラクターはちょっと珍しいんですけど、「ヨッシー」を使っていまして、「EVO 2013」では「ヨッシー」使いとして注目を浴びました。「ヨッシー」はそれまで下から6番目ぐらいのキャラクターだったんですけど、「EVO 2013」と2014年1月にあった大会「Apex 2014」で成績を残したことで、「ヨッシー」のキャラクターランクも上がって、中堅の少し上ぐらいまで評価を伸ばしました。
――『スマブラDX』では、「ヨッシー」は世界的には使われていない?
aMSaさん:
全然いないです。「ヨッシー」にしかない特殊な能力が多すぎるので、職人向けのキャラクターです。そういったキャラクターを使うプレイヤーが海外にはほとんどいなかったというのもあって、注目していただきたいと思います。
うめきさん:
「うめき」といいます。去年設立された「Radical Stormerz」というチームに所属していまして、今年から「Team GRAPHT」さんからスポンサードを受けて『スマブラ for Wii U』のプロとして活動させていただいています。キャラクターは「ピーチ姫」という、どちらかといえばこちらも職人向けのキャラクターを使っています。小さい頃からNINTENDO64の初代『スマブラ』をずっとやっていて、地元では強いと思っていたので近所の大会に行ったんですけど、そこにガチの方がいらっしゃいましてボコボコにされた。でもそのあと、そのなかの1人に「君、スマブラ強いね。ちょっと一緒にやらない?」とあやしげな誘いを受けて入ったんです。そこからガチの大会にも出るようになりました。
aMSaさん:
私と「うめき」さんは大会の運営もやっていますね。
――プロのプレイヤーだけど運営側にも関わってるんですね。
うめきさん:
自分が運営に入ろうとした当時は1か月に1度大会があったんですけど、1か月に2回やりたいなと思っていて、誰もやらないから俺がやろうと思ったんです。その時の大会は「Rain(※「DetonatioN Gaming」のスタッフ兼選手。第1回、第2回に出演)」さんが主催をしていたんですけど、その方がちょうど辞めるということだったんで、自分が勢いで引き継ぎました。
aMSaさん:
私もある意味「うめき」さんと同じような感じで、当時は関東で『スマブラDX』の大会ってあまりなかったんですけど、自分が関東に来る直前に大会主催の方々がさらに就活で抜けるというタイミングで、自分のプロスマブラーという立場もあり主催をやろうと思いました。ここ1年ほど、2か月に一度の頻度で「Battle GateWay」という大会をやっています。順調に規模も大きくなっているので、いい感じに成長していって嬉しいですね。
あばだんごさん:
「Luminosity Gaming」という北米のゲームチームにに所属している、『スマブラ for Wii U』のプロの「あばだんご」です。日本でプロを目指して実際にプロになったのは自分が初めてだと思います。あと海外の大きいe-Sportsチームに所属する日本人プレイヤーというのも自分だけかな。『スマブラ』を始めたきっかけは「うめき」さんと被るんですが、ある人に勧誘されたんですよね。最初は『スマブラX』の時にオンライン機能が搭載されたんで、それでいろんな人と対戦するようになって、1度ぐらいオフの大会に行ってみようかなと挑戦してみたらボコボコにされて、そこから誘われて宅オフ(※誰かの自宅を使って『スマブラ』をプレイするオフ会)に行くようになったって感じですね。今は「ミュウツー」を使っているんですけど、基本的にメインは変えまくっています。パッチ後とか、年が変わったりとか、気づいたら変わってますね、自分の場合は。ちょっと勝てないなと思ったらいつの間にか。
aMSaさん:
今旬なキャラを使っている。
あばだんごさん:
そんな感じです。できればほかの人が使っているのとかぶりたくないんですけど、勝てるようなキャラクターを選んでます。
『スマブラ』という対戦アクションゲーム
――まず根本的な話にはなるんですが、そもそも『スマブラ』はどういうゲーム性があって、ほかの格闘ゲームとはどこが違うと思いますか(編集部注釈: 『スマブラ』のジャンルは正式には「対戦アクションゲーム」とされている)。
aMSaさん:
私自身は対戦ゲームだと思っていて、格闘ゲームとの認識はしてないんです。けどシリーズによってはそういう要素が強かったりすることもありますね。
あばだんごさん:
単純に体力ゲージじゃない点は一番最初に挙げられますね。『スマブラ』はたとえダメージを受けてパーセントが高くても、復帰さえできれば生き残れるのが大きいですね。たとえば格ゲーだったら、体力がドットになったら小パンすら食らえないんですけど、『スマブラ』だったらこの技はくらってもいいなという技を意識して、できるだけ命を長引かせるみたいな戦い方がある。100パーセントでスマッシュをくらったらやられてしまうけど、投げはまだ大丈夫だっていうときにはガードを多用したりとか、そういう独自性があるゲームですね。
aMSaさん:
逆に攻める側としたら、相手がこのパーセントだとこの技からこの技がつながって、最終的に撃墜まで持っていけるという駆け引きがあるので、相手のダメージによって自分がやることが全然変わってくる。
うめきさん:
相手のダメージによって同じ弱パンチでも飛び方が変わるんですよね。相手のパーセントが増えると相手が飛ぶ距離が増えて、それによってコンボが繋がったり繋がらなかったり。あまりにも高ければ、それで相手が撃墜してしまったり。そういう駆け引きがあります。
――プロはそういった細かいパーセンテージの数値まで覚えておく?
あばだんごさん:
雰囲気だと思います。『スマブラ』は補正があって、同じ技を使うとダメージが下がって吹っ飛ばなくなるんですよ。それも踏まえるととてつもない情報量になっちゃうんで。
あばだんごさん:
ほかにも、『スマブラDX』ではないんですけど、『スマブラ for Wii U』では自分のパーセンテージでも相手の吹っ飛ぶ量が違う。根性値というか怒り補正みたいのがあって、自分が不利な状態になった方が吹っ飛ばしが強くなったりもします。
――さらに『スマブラ』といえば、崖際の攻防も一つ見どころですよね。
aMSaさん:
格闘ゲームの画面端のイメージですね。追い詰められてる側は不利で、崖上にいる側は攻めている状況。『スマブラ』のシステムは相手を外に押し出して落としてしまえば良いので、崖に捕まってるという状態はなにかの攻撃で落とされる可能性があるんです。崖をつかんでいるときは、ものすごく不利な状態です。
――格ゲーの起き攻とはまた違った概念になるんですかね。
うめきさん:
『スマブラ』でも起き攻めは一応あって、崖をつかんでる時の攻防は別モノですね。崖際ではできることが限られていて、「崖を登りながら攻撃する」「ただ崖を登る」「ジャンプする」「崖を離して空中ジャンプをして空中で駆け引きをする」「回避しながら内側に登る」、それだけしかないです。崖の上にいるキャラクターはガードができるので、基本的に攻撃は全部防げます。あと崖にいてすごく不利なのは、さっき「aMSa」さんが言ったように場外に飛ばされてしまう可能性がある。これは本当に不利で、たとえば崖につかまっている状態で崖上の相手に攻撃を当てても、相手はよほどパーセントが溜まっていない限りはステージの上に着地する。なので、崖上にいる方はなにをするにしてもリスクも少ない。崖下にいる方はリスクリターンが違う上に、できる行動もかなり限られている。
あばだんごさん:
択の少なさやリターンの高さは画面端に近いですね。復帰阻止っていうのが格ゲーにはない言葉なんですが、復帰阻止があればパーセントに関係なく倒せてしまう。そういった一髪逆転があるのも『スマブラ』ならではって感じですね。
うめきさん:
あと、『スマブラ』には地上ジャンプと空中ジャンプがある。キャラクターによってまた違いがあるんですけど、基本的には崖につかまっている状態だと空中ジャンプしか出せない。崖を登るときに相手に攻撃されると、空中ジャンプか空中攻撃か空中緊急回避しか択はないので、そこでジャンプを読まれて相手に攻撃をされてしまうと、ほとんどどのキャラクターはパーセントがどんなに低くても撃墜されてしまう。それが本当にリスクの高い状態です。崖は本当に不利です。
――崖際に追い込まれると精神的にも揺れそうです。
aMSaさん:
そうですね。上位の人たちは崖をつかんでいる相手の択を3個ぐらい潰しておいて、読みを通されても有利な状況が変わらないような動きをするんで、ずっと崖に追いやられてしまってなにもできないという駆け引きはよく見られます。
――あと『スマブラ』で印象的なのは、「回避」があるところだと思います。「攻撃」「ガード」「回避」「投げ(つかみ)」とありますが、それぞれの関係性はどのようになっているんでしょうか。
aMSaさん:
基本的には「ガード」に対しては「攻撃」を当てると反撃をとられてしまう。「ガード」に対しては「つかみ」をすればいい。「つかみ」に対しては「その場回避」とか「転がり回避」で避けて反撃をする。
あばだんごさん:
ただ、「回避」からの反撃をとるのは基本的に難しいですね。「つかみ」とかはスカりを確認しないと無理。避けても有利フレームは取れないです。
――ということは、『スマブラ』では「投げ」が強い?
aMSaさん:
そうです。なので、「投げ」が強いキャラは上位に食い込みやすいですね。
あばだんごさん:
あるキャラの「つかみ」が全体28フレーム(全体フレーム、技が出てから終わるまでのフレーム数)で、一方あるキャラの「回避」も全体28フレームなんで、「回避」して反撃を取れることがあまりない。
aMSaさん:
「ガード」を張っている状態からキャンセルで「つかみ」が出せてしまう。なので、攻撃を「ガード」するとつかめてしまいますし、つかまれると思って「回避」しても状況があまり変わらない。
あばだんごさん:
その代わり、空中での動きの自由度が高いんで、「ガード」させる技の振り方の種類が多いと思いますね。先端で当てて反撃を食らわないようにするとか。
――空中でのやり取りがある、というのも『スマブラ』ならではの要素と言えそうです。
aMSaさん:
空中での移動制御が効くのも『スマブラ』ならではですね。通常の格ゲーだと飛び方である程度その後の動きが決まるんですけど、『スマブラ』だと飛びながら「これはまずい」と思って一度引くこともできる。基本的には空中攻撃を相手がガードしても、そんなに不利な状態にはならない。逆に空中攻撃をできるだけギリギリに出して相手にガードさせたら、そのまま攻めを継続できるキャラクターが多かったりしますね。その辺は格ゲーに近いかもしれないですね。
あばだんごさん:
『スマブラ』の場合はほぼ確定で飛びが通りますよね。通らなかったら逃げればいい。
うめきさん:
格ゲーは着地を対空で狩ったりすると思うんですけど、『スマブラ』は相手に攻撃をしてガードして、そのガードをつかみとかで反撃を取るのが基本になります。あと、『スマブラ』のガードはだんだん小さくなっていくんですよね。格ゲーなら後ろ入力を入れておけばずっとガードできると思うんですけど、『スマブラ』は相手に攻撃されるか時間経過でガードの球体が小さくなっていく。小さくなり続けるとキャラクターの体がガードからはみ出してしまうので、そこに攻撃が当たったりします。
――ガードの範囲が見た目通りなんですね。
うめきさん:
『スマブラ』ではガードを少し上や下に動かすことができるので、上から攻撃が来た時にはガードを上にして反撃を取る。ガードさせておいて様子を見て、ガードを小さくさせてから攻撃を始めるという戦術もあります。体の大きなキャラクターは、ガードから早めに体が出やすいというのもありますね。
あと、ジャンプだと格ゲーは相手のいる方向にしかキャラクターが向かないと思うんですけど、『スマブラ』は前も後ろも自分の好きな方向に向けるので、そこも独特ではないかなと。
――では格ゲーにおけるめくり攻撃は『スマブラ』では……。
あばだんごさん:
めくり攻撃かどうかに関しては、判断するのが難しいですね。
aMSaさん:
目の前で相手の弱攻撃をガードしたから、ガードキャンセルから反撃を取ろうと思ったら、相手が後ろにいるとかざらにあります。
うめきさん:
ガードキャンセルつかみってのが前方にしかできないので、キャラによってはめくられるだけで相当不利になってしまいます。
aMSaさん:
あと『スマブラ』と普通の格ゲーの一番大きな違いは、コマンド技がないっていう点ですかね。
「ヒットストップずらし」「ベクトル変更」
うめきさん:
格ゲーはコンボを入れたら、コンボをミスるか完走するまで相手はなにもできないと思います。でも『スマブラ』は、技を受けた側がスティックを入力することによって、ダメージを受けているときにキャラクターの位置をずらすというテクニックがあります。たとえば、トレーニングモードで相手がなにも触ってない状態と、プレイヤーが触ってる状態ではできるコンボが全然違う。相手がなにもしなければ10コンボぐらい入るんだけど、相手が技を受けている最中にスティックを動かしたてずらしたりすると、3コンボぐらいしか入らない。これは『スマブラ』独特のシステムだと思いますね。ゲームのバージョンによって違って、『スマブラ for Wii U』の方はそうでもないんですけど、『スマブラDX』では強い効果を持っています。
aMSaさん:
「ヒットストップずらし」と言いますね。格ゲーもそうだと思うんですけど、攻撃がヒットすると爽快感を出すために一瞬止まる。その時にスティックを入力すると、キャラクターの位置がずれるんですね。
あと技の威力によって、ちょっと特殊なヒットストップがあったりするんですけど、このヒットストップが終わったあとに、斜め上に飛んでいく技に対して防御側が下を押すとちょっと低いベクトルで飛んでいくんですね。上の方を押していると上の方に軌道が変わる。これは一般的に「ベクトル変更」と呼ばれています。この「ベクトル変更」が防御に関しては非常に重要なテクニックになっていまして、相手のコンボを食らっている時にもこのテクニックを使って色々と調整していくんですね。
あばだんごさん:
「ベクトル変更」に関しては、『スマブラ for Wii U』だと両方向15度変更できる。『スマブラDX』だと18度ですね。
――これは上位陣なら当たり前のテクニックになってくる。
あばだんごさん:
これは当たり前ですね。上位陣だったらみんな知ってるレベルです。
aMSaさん:
知らないと、もうやられたい放題ですね。つかみから繋がるような連携でも、ちょっと外側に「ベクトル変更」されるとなにも繋がらないとか。
うめきさん:
コンボも重要になってきます。
aMSaさん:
「ベクトル変更」に関しては奥が深くて、コンボをくらうと思ってずらしたらスマッシュ攻撃を食らってしまうとか、本当は撃墜されなかったのに「ベクトル変更」してしまったがために撃墜されたとか。
――シチュエーションがいくらでも想定できてしまいますね。
あばだんごさん:
あと「ベクトル変更」の応用なんですけど、『スマブラ』のステージってだいたい四角形なんですよ。で、その四角形から出たらちょっと高めでも撃墜されるし、ちょっと低めでも撃墜されるので、できるだけ四隅を目指して飛ぶようにしなきゃいけない。そういう風に、適度に「ベクトル変更」をしなきゃいけない。復帰が弱いキャラは低く飛んだ時点でダメなので、とあえず内側にベクトル変更をしたりとか。あと『スマブラDX』だと明らかに復帰できない吹っ飛びがあるので、そんな時はずっと下に倒して受け身だけを狙うというテクニックもあります。
aMSaさん:
「ベクトル変更」しても確実に撃墜されるっていう時に、あえてベクトルを低くして飛ばされた瞬間に受け身入力をすると、地面を転がって吹っ飛びを抑えることができる。これは『スマブラDX』だけですね。限定的な状況で『スマブラ for Wii U』でもたまにあるんですけど、それは偶然起きることがあるという程度で、『スマブラDX』では狙ってやれます。
あばだんごさん:
『スマブラ』では必要とされる防御テクニックが多いかもしれないですね。
うめきさん:
上位になればなるほどすごいです。
aMSaさん:
あきらめるという場面が少ない。一番絶望するのはつかみからの確定コンボで、それだけはどうしようもない。
――『スマブラ for Wii U』の過去の試合映像を見ると、パーセントが高いのになかなか両キャラクターが死なないという展開をよく見ましたが、裏にはこういったテクニックがあったんですね。
aMSaさん:
致命的な部分をどうやって食らわないようにするか。食らってもちゃんと「ベクトル変更」して凌ぐ。逆に攻めすぎて低いパーセントで自滅してしまったりとか、そういうこともあるので、ワンチャンスの可能性が常にありますね。そういう時は会場も盛り上がります。
「OP相殺」
――そういえば冒頭で、連続で同じ技を出すと補正がかかるという話もありましたが、あれも『スマブラ』ならではのシステムでしょうか。
あばだんごさん:
はい。10回まで技のキューがあって、同じ技を使うたびに威力と飛び率がだんだん下がっていくんですよ。10回分のキューから外れると補正が切れる。連続して同じ技を10回も振るとすごく弱くなるけど、その分吹っ飛びは弱いからコンボが繋がったりとか。
――安易に同じ技ばかりを振ればいいわけじゃないんですね。
aMSaさん:
特にスマッシュなんかは、ここぞという場面で一発を当てたいので、温存しておくこともありますね。
あばだんごさん:
なにも考えずに使いまくっていると、本来は倒せるパーセントなのに倒せない状況になります。
――普通の格闘ゲームにはないシステムですね。
aMSaさん:
「ワンパターン相殺(OP相殺)」という概念なんですけど、10回分の技が記録されていて、その箱の中に同じ技が入ってるとどんどん弱くなっていく。10 回分の技が入った状態で11回目の技が入った時に、一番古い技の記録がなくなって新しく追加される。
1. ●と□の技があるとする。
□□□□□□□□□□
2. この状況で●の技を出すと、最大威力が出る。
●□□□□□□□□□
3. 一方で同じ技を出し続けると、半分低下するほどの威力補正がかかる。
●●●●●●●●●●
4. 以下の状況にある場合は……。
□□□□□□□□□●
5. 別の技(△)を出すと●への補正がなくなる。
△□□□□□□□□□
あばだんごさん:
10回まったく同じ技を出していると、10回目の技がめちゃくちゃ弱くなる。50パーセントぐらいダメージが下がるイメージですね。
――みなさんは対戦中、出した過去10個の技を覚えている?
あばだんごさん:
覚えないです。やることが多すぎて覚え切れない。
aMSaさん:
このシステムを一番意識しやすいのは、つかみ投げで撃墜を狙える系統の技ですね。1度も使っていない状態だったら、このパーセントで撃墜できるというのを覚えておいて使う。「あばだんご」さんの使っている「ミュウツー」とかは、まさにそれですね。
あばだんごさん:
倒し切れる前に上投げを使ってしまうと、その次の倒せるはずだったタイミングで倒しきれないので、違う投げをしたりとか。使う技を選べば大丈夫なんですけど、倒しきるための技はそんなに頻繁に振る感じではないです。
――ちなみに、OP相殺は『スマブラDX』にもあるんでしょうか?
aMSaさん:
全シリーズにありますね。特にNINTENDO64の初代、あれが影響を一番受けています。箱が4つしかないんですけど、二回連続だとすでに75パーセントぐらいの補正があって、上位陣はそこをしっかり覚えてるみたいな感じでしたね。
うめきさん:
『スマブラ for Wii U』では、つかみを何回か最初に使っておくというのもあります。一部のキャラクターでは、相手のパーセントが高い時にわざと「ワンパターン相殺」を投げにかけておいて、相手を撃墜するようなことも。バースト(撃墜)するためにワンパターン相殺をコンボに利用するんです。
―― 一般のプレイヤーの方は「OP相殺」は意識するんでしょうか。
aMSaさん:
大会でも本当に一部の人だけですね。概念としては知っているけど、常に意識はしていないぐらい。
うめきさん:
キャラクターによっては絶対覚えなきゃいけない場合もありますね。
――たとえばどのキャラクターでしょうか。
うめきさん:
「ルフレ」というキャラクターは下に投げてから空中上攻撃が刺さるんです。一度も技を刺していないと下への投げから空中上攻撃がつながらないんですけど、2回目か3回目の時には下に投げると空中上攻撃で撃墜が確定します。
――「ヒップストップずらし」「ベクトル変更」と並べると、先ほどの「OP相殺」はかなりコアな話に聞こえますね。
うめきさん:
今話したなかだと、一番コアなテクニックですね。
あばだんごさん:
重要なのは「ベクトル変更」などの防御テクニックで、「OP相殺」はキャラクターによっては必須で覚えなければならないという感じになります。でもキャラクターによっては覚えなくても大丈夫で、だいたい雰囲気だけわかっておけばいいですね。
うめきさん:
煮詰めれば煮詰めるほどに最終的に必要になってくるものっていうのは間違いない。
「ストック制」「ステージ」
aMSaさん:
あと『スマブラ』の概念のなかで大事なことの1つに、「ストック」というのがあります。格ゲーのセットとはちょっと違って、画面外に出て倒されると0パーセントになった自分のキャラクターが戻ってきて戦うんです。格ゲーだとセットごとに体力ゲージが戻ったり、ちょっと回復したりとかあると思うんですけど、スマブラでは基本的には撃墜した方のパーセンテージはそのままです。
――ストックの差によって戦略も変わってきそうですよね。
aMSaさん:
ストック数が有利だから、このストック分は飛び道具を主体に敵を削ろうとかは考えますね。『スマブラDX』だと競技ルールでは4ストックあるので、相手のストックを先に削ったら残り2ストックを使って削りにいこうとか。逆にストック差をつけられた方は、ひたすらワンチャンスを狙っていたり。
――この辺りの知識とキャラ対策も含めて考えると、『スマブラ』は覚えることが膨大ですね。
aMSaさん:
しかもパーセントによって相手の吹っ飛び距離がかわるんで、そこら辺も考えるとすごい情報量ですね。『スマブラ for Wii U』は、さきほどお話しした根性補正の分も入ってくる。こちらのパーセントが高い時にはこのコンボはつながる、つながらない、さらにベクトル変更でどうなるんだろうって考える必要がある。
あばだんごさん:
あと『スマブラ』でほかの格ゲーにないのは「ステージ」ですね。キャラクターが乗る台があるので、それによってコンボが違ったり、ステージの広さも違ったりします。『スマブラ』では対戦する前にジャンケンをして、これはいやだとBANするステージを決めることになります。二本目以降は勝った側が一個だけBANして、負けた側は残りのどれかからを選ぶという、カウンターピックをする形式になってます。
「村と街」っていうのは上が狭いステージで、上方向へのコンボで画面外へ敵を出しやすい。「終点」は台がないステージです。「戦場」は三つ台があり、上も横も下も広いステージです。「ライラットクルーズ」は台が傾いて、復帰するときに傾いているとやられてしまう。ランダム性が強いステージで嫌いな人が多いですね。「すま村」は台が移動式になっていて、横に移動します。横がかなり狭いので、横に運ぶコンボが強い。「プププランド」はカウンターピックによく使われるんですけど、ステージギミックとして風が吹いたりします。
aMSaさん:
一番選ばれるのは「すま村」かな。
あばだんごさん:
妥協ステージですね。昔から海外に行くと、「すま村でよくない?」ってジャンケンもしないで決まったりする。
――『スマブラ』は入り口はとても広いけど、上位に行くととても大変だという話を聞きました。ほかの格ゲー経験者も、なかなか『スマブラ』には入りづらいと。
aMSaさん:
『スマブラ』は奥が深いですね。あとは、ダブルスがあるというのもめずらしいかもしれません。
――シングルとダブルスは、競技人口的な比率はどれぐらいになるんですか。
aMSaさん:
大きな世界大会なら、基本的にシングルだけではなくダブルスもセットであります。特に海外の大会だと、会場を二日間とか予約しているケースが多いので、たくさん人が出場している場合もあります。シングルス・ダブルスの関係はテニスや卓球のそれと同じで、シングルスが注目されるんですけど、ダブルスもダブルスで面白い。だいたい強い人同士が組めば強い。もちろんその中でもダブルス主体でやってる人がいて、シングルスだとそんなに勝ち上がってこないけど、ダブルスだとすごいうまい人もいます。
――ダブルスのプロの試合はしっかりと拝見したことがないんですが、やはりシングルとは戦略は大きく違いますか。
うめきさん:
そうですね。1人でしかできないコンボは限られているけど、味方が入ると無限にコンボができる。あるコンボをするために敵を1人飛ばして、そのあいだに別の1人を袋叩きにしたり。試合ごとに面白いコンボが生まれるので、それで盛り上がりますね。
aMSaさん:
ダブルスはより複雑になってきます。出場者は特定の相方と組んで戦略を組んでくる場合が多いですね。