Steamのゲームが遊べる携帯型ハード「SMACH Z」の発売に暗雲。モジュールメーカーが協力を打ち切り発売延期に
「Steam Boy」という名前でも知られる、Steamのゲームを遊べる携帯機を目指して開発されている「SMACH Z」の発売に暗雲が立ち込めている。「SMACH Z」は計画の頓挫や再開を経て昨年に10月にKickstarterキャンペーンをスタートさせ、約47万ドルの集金を達成。翌月11月にはIndiegogoでキャンペーンを実施し、こちらは65万ドルを集金している。合計100万ドルにもおよぶ資金を確保し、すでに完成しているプロトタイプ版のブラッシュアップを進めていた。しかし、同ハードはバッカー向けには2017年4月の出荷が予定されていたものの、いまだ発送されていない。実は、モジュールメーカーとのこじれが背景にあったようだ。
「SMACH Z」開発チームは昨年Rhomb.ioを通じてハードのプロセッサを供給すると発表していた。Rhomb.ioはモジュールを販売するメーカーだ。Rhomb.ioにてマザーボードやSoC、プリント基板などを組み合わせ、顧客のニーズに合わせたモジュールを提供している。
このRhomb.ioは6月26日に公式サイトにて「Rhomb.ioが提供するモジュールS500は、AMD RX421を採用しており、AMDがこのコアを検証している。このモジュールが使えるようになるのは2017年末となっており、クラウドファンディングで『SMACH Z』開発チームが提唱した2017年4月という期日に対して同意していない」という声明を出している。Rhomb.ioはプロトタイプの時期から「SMACH Z」に携わっているが、この期日は開発チームが勝手に設定した、というのが彼らの言い分だろう。
重ねてRhomb.ioは技術的あるいは経済的な問題で、「SMACH Z」を開発および製造する価値がない、あるいはそれが理解することができないと考えており、両者の協力を解消したとも発言している。こうした決断はRhomb.ioの親会社であるTecnofingersと「SMACH Z」チームの協議によって導き出されたようだ。
つまり、「SMACH Z」の2017年4月の発送が正式に不可能となったわけだ。Rhomb.ioは、S500は「SMACH Z」チームを含めたあらゆる人々が利用可能であると述べており、同ハードにAMD RX421を搭載したモジュールが採用される可能性は依然として残っている。もしそうした道を選んだとしても、最短の発送は2017年末以降になるだろう。「SMACH Z」チームは今回のRhomb.ioの発表にあわせてIndiegogoページの発送時期を2018年3月へと延期している。この期日が当面の「目標発送時期」と考えてもよさそうだ。
Kickstarterページの右側に記されている「発送時期」という表記は残念ながらどの製品においても機能しているとはいいがたい。同サイトにて成功をおさめたタイトルが、延期なく製品を発売されることはほとんどなく、Kickstarterのモデルケースとされているタイトルですら延期は経験している。しかしながら、発送時期を2か月経過した時点でハードウェアの心臓部分であるモジュールが完成していないと報告されたことは、ユーザーにとって困惑せざるを得ないだろう。隠していたのか、状況を把握していなかったのは不明であるが、もう少し早く報告があがれば混乱を抑えられたのではないか。
「協力」が解消されたことがどのような影響を及ぼすかは不明ではあるが、S500が今年の年末には生産できるという状況は、製品化の信憑性を考えるうえで朗報といえる。ただ、現代ではプロセッサやモジュールは半年や一年もの間に大きな進化を遂げる。スペック上の1年もの“ロス”の痛みは少なくない。「SMACH Z」チームは今回のディレイをスペックアップに利用するのか、それとも最短の製品化を目指すのか。そうした判断にも注目したいところだ。