嘘つきを暴け。意思を持つキャラ達と騙しあう、完全一人用「人狼」アドベンチャー『グノーシア』とは
メビウス(パブリッシャー)とプチデポットは、PlayStation Vitaダウンロード専用ソフト『グノーシア』を2017年内に配信する。プチデポットは『メゾン・ド・魔王』を手がけたデベロッパーだ。『メゾン・ド・魔王』は、かわいいながらほんのりダークなキャラクター達がマンションに住み込みながら勇者を退治するという、経営シミュレーションとタワーディフェンスを融合させ、世界でヒットを記録した。
新作『グノーシア』は、かわいらしさやポップさが特徴的であった前作とは一転、美しくも怪しげなジュブナイルアドベンチャーの雰囲気を漂わせる謎の多い作品だ。幸運にもA 5th of BitSummitでは、プレイアブル出展されていた同作をプレイできた。今回は、プチデポット代表“めづかれ”こと川勝徹氏から聞いた情報をまじえて、その内容をお伝えする。
『グノーシア』はSF世界を舞台にした人狼ゲームだ。タイトルにある「グノーシア」とは、人間を襲う未知の敵を指す。「グノーシア」は人間に紛れ込み、嘘をつき、人々を殺していく脅威の存在だ。プレイヤーたちは、宇宙船に紛れ込んだ「グノーシア」を排除するために投票をおこない、疑わしいと思われる人物をコールドスリープさせることで解決に図る。「グノーシア」の正体はプレイするごとに変わる。どのキャラクターが「グノーシア」であるかを見極め、うまく投票を誘導して無慈悲な殺戮に終止符を打たなければならない。
展示されていたデモ版では、プレイヤーは宇宙船で目覚め、金髪ショートのキャラクター「セツ」に心配されながら訳もわからず投票に参加させられるところからゲームは始まる。周囲のキャラクターに言われるがままに、誰が「グノーシア」であるかを決め、投票されたキャラクターは有無を言わさずコールドスリープさせられる。正体を突き止めたかどうかの結果にかかわらず、次のループへ行くという流れだ。
本作の1プレイは15分ほどのものになるという。15分の間に怒涛の騙しあいが繰り広げられ、そして1ループが終わる。ひとり用の人狼ゲームというと、無味乾燥としたNPCとだましあうというイメージが強いが、本作はキャラクターがアクセントとなっている。それぞれのキャラクターに個性と意思があり、思考しながらプレイヤーへアプローチをしてくる。プレイするたびに役割や目的意識が変わるので、前回はプレイヤーに対して親切だったキャラがひどい嘘をつくこともあるだろう。たとえば、実際に筆者がプレイした際には「セツ」は優しく心配してくれたが、その余韻を引きずって次のループでセツに優しくしていると痛い目にあった。川勝氏によると、こうしたキャラクターの思い入れがプレイヤーの判断を鈍らせ、そこも面白さのひとつだという。根幹的なキャラクターのアイデンティティというのは変化しないので、役割は変われど、一定の個性は感じられるというわけだ。どのキャラクターもそれぞれの魅力を持っており、美しくも妖しいキャラクターデザインが、個性をより鮮やかに彩っている印象だ。
川勝氏は、キャラクターに意思があるのが本作の特徴のひとつであると強調する。たとえば、議論中にはキャラクターが何度も同じセリフを話すこともあるだろう。キャラクターが話すセリフはあくまで用意されたものであるものの、同じセリフを話すことにはそれなりの意味があるという。川勝氏は『グノーシア』における人狼は、麻雀にたとえるならば、議論中のセリフは捨てた牌だと語る。セリフの意味から状況を読み取る高度な情報戦が展開されるのだ。そういった意味では『グノーシア』は麻雀的であるとも、詰将棋的であるともいえる。氏によると、このCPUのルーチン構築には2年間もの歳月をかけているそうで、したたかなAIがプレイヤーの心と頭脳を揺さぶるだろう。もちろん、こうしたルーチンはプレイヤーだけに向けられるわけではない、CPU同士が潰しあったり、CPU同士が結託したりするなど、人間顔負けの争いが見られるようだ。そして氏は人狼という舞台を使って魅力的にキャラクターを描き、コミュニケーションの楽しみを味わってほしいとの開発メンバーの意図があるとのことだ。
前述したように、本作は1プレイ15分とコンパクトだ。しかし、繰り返して遊んでいくなかで、キャラクターや職業、セリフや戦略が追加されていく。さらに遊びこんでいくなかで、世界における謎が明らかになっていくという流れとなる。最初はさまざまな要素が限定されており、徐々に選択肢が開放されていく。こうしたゲームデザインは、人狼初心者へ配慮してのものであると川勝氏は語っている。そして何度もプレイしていくとプレイヤーの経験値が増えていき、それに合わせてゲーム内でのスキルが習得できるようになるという。いわば本作は二部構成となっており、一部はゲームの世界観に慣れるためのある種のチュートリアル的なアドベンチャーゲームとして進み、要素が開放された後は、より本格的な人狼ゲームとして楽しめるのだ。
本作の開発のきっかけは、スタッフが人狼ゲームに参加し、あまり楽しめなかったことが始まりだったという。人狼ゲームをプレイするには人が必要で、かつルールを理解することも求められる。そして人の相性もあるだろう。そうした「人狼をしてみたいけど、踏み出せない」プレイヤーのために本作は生まれたようだ。本作はさまざまな要素が詰められているが、人狼ゲームというコンセプトにはまったく曇りがない。川勝氏は本作を「会議やミーティングで、仲間を引き入れて成功したり、裏切られて失敗したりするといった日常的に起こる議論の中に面白さがある」と語るとおり、人狼ゲームの楽しさを凝縮したタイトルになっている印象だ。
人狼ゲームとしても、ノベルアドベンチャーゲームとしても、完成度の高さを感じさせた『グノーシア』は、今年のBitSummitでは一番のダークホースであったと言い切れる。2017年内の配信にむけての続報に期待したい。