ウズベキスタンが『The Sims 4』など多数のゲームを発売禁止に。政治的な安定・社会の安全を脅かすと認定
中央アジアに位置するウズベキスタン共和国の知的財産庁(Intellektual Mulk Agentligi)が5月25日、同国内での流通・販売・レンタルを禁じるゲームタイトルのリストを公開し、イギリスBBCなどが報じている。その具体的なタイトルは以下のとおり(原文の誤字は修正済み)。
・Assassin’s Creed: Brotherhood
・BoneTown
・Call of Duty: Black Ops
・Carmageddon
・Castlevania: Lords of Shadow
・Dead By Daylight
・Dead Rising
・Dead Space
・DOOM 3/2016
・Dying Light
・Fallout: New Vegas
・Grand Theft Auto: San Andreas
・Hatred
・Hitman(シリーズ全作)
・Kane and Lynch 2: Dog Days
・Left 4 Dead 1/2/3
・Lula 3D
・Mafia II
・Manhunt 1/2
・Mass Effect
・Mortal Kombat X
・Naughty Bear
・Phantasmagoria
・Postal 2
・Prototype
・Resident Evil 4
・Shadow Warrior(2013)
・Silent Hill 3
・SOMA
・The Punisher
・The Sims 3/4
・Until Dawn
こうして見ると、主に強い暴力・性的表現が含まれるタイトルが対象になっていることが分かる。これは2012年に制定された、国民生活および政治的な安定のため、あるいは民族/宗教間の対立や誤情報の流布を防ぐための法律に基づいて決定されたとしており、これらのゲームには暴力やポルノを助長、あるいは社会の安全を脅かす内容が含まれていると認定されたとのこと。ただし、それぞれのタイトルについて個別具体的な理由は明示されていない。また、発売はおろか公式に発表もされていない『Left 4 Dead 3』が含まれていたり、『Hitman』などシリーズ全作が対象になっているものもあれば、同程度の表現を含んでいながらシリーズの中の一作だけが対象になっていたりと、どのような過程を経て決定が下されたのか首を傾げる部分はある。
以前弊誌が紹介したように、国や地域によって特定のゲームが発売禁止となることはままある。その理由もまた国や地域によって変化するもので、たとえば上記リスト内で唯一毛色の異なる『The Sims』シリーズは、日本を含め多くの地域では対象年齢が10代前半以上、あるいはさらに低年齢にレーティングされている人生シミュレーションゲームだが、LGBTに不寛容なロシアでは『The Sims 4』が18才以上対象とされて話題になった。ウズベキスタンでは同作のどのような部分が受け入れられないと判断されたのかは定かではないが、同国では男性間の性交渉を刑法により違法としており、ロシアと似た背景は存在する。
また、たいていはゲーム内の強い暴力・性的表現が問題となることが多い中、ウズベキスタンではそれに加えて“政治的な安定”や“民族/宗教間の調和”を乱すものであると認定したり、“社会の安全を脅かす”と強い表現を用いて排除していることが特徴的だ。これは日本のCEROや欧米のESRB/PEGIといった民間のレーティング機関ではなく、国家が直接関与していることで、反政府デモや民族間対立などを経験している近年の同国内事情を色濃く反映させているのだろう。今回の決定は同国のゲーマーには気の毒だが、こんなところからも異なる政治・文化を持つ国のさまざまな事情が透けて見えるもので興味深い。