「早期アクセス」を経て成功したインディーゲーム、フルリリースで売り上げは2倍に
See also: Kickstarterと早期アクセスを利用した恐竜ゲーム スタジオヘッドが賃金支払わず完成前に失踪アルファやベータバージョンを有料販売しつつ、ビデオゲームの開発を並行して進める「早期アクセス」。開発初期の段階で、プレイヤーからのフィードバックや資金を確保できるビジネスモデルだが、完成から程遠いビデオゲームが販売されたり、開発を途中で放棄するスタジオが登場するなど、問題が生じることも少なくない。
とはいえ、例えばPC版のリリースにてSteam早期アクセスを利用した『State of Decay』のように、上手くこのビジネスモデルを活用するデベロッパーも存在する。蒸気船探索ゲーム『Sunless Sea』を販売したFailbetter Gamesも、早期アクセスを利用して成功したスタジオの1つである。同スタジオは、公式ブログにて『Sunless Sea』がどのように成功したのか、その軌跡を追っている。
Kickstarterと早期アクセス経て成功
『Sunless Sea』は、2013年9月にKickstarterで10万ポンド以上の獲得に成功したプロジェクトだ。開発は、ブラウザゲーム『Fallen London』が好評価を得た英国のデベロッパーFaibetter Games。『Sunless Sea』は、スチームパンクとクトゥルフ神話が融合したような奇妙な世界Unterzeeが舞台の作品である。プレイヤーは蒸気船と乗組員たちを操作して暗黒の海原を進んでゆく。ゲームは『FTL』や『Don't Strave』に似ている。燃料や物資のトレードおよび確保、個性豊かな乗組員とのドラマ、巨大タコや海賊たちとの戦闘などを経て、ゲーム内に設定されているいくつかの目標のうち、どれか1つを成し遂げることになる。
開発が始まった2013年の当初、開発陣は失敗すれば5000本、大成功すれば5万本の売り上げを見込んでいたという。Kickstarterで成功し、その後Steam Greenlightを通過することにも成功した『Sunless Sea』は、2014年6月17日に早期アクセスを利用してローンチされる。結果として、『Sunless Sea』は公式サイトおよびSteam、Hubmle Storeを経由して、6月中に2万8423本を売り上げた。そのうちの2万本以上に当たる72パーセントを初週で売り上げた。
『Sunless Sea』は、その後何度かのセールやアップデートを経て、2015年2月6日にフルリリースされることとなった。セール時やアップデート時のセールスも記録されているが、興味深いのは、フルリリース時に顕著に伸びた売り上げだ。公式サイトとSteam、Hubmle Storeに加えGOG.comでも販売されることになり、ローンチから31日間で5万4210本を販売した。そのうちの70パーセントが初週で売り上げた記録であり、1週間で3万7000本以上を売り上げている。つまり、早期アクセスで登場した時よりも、製品版とて完成した後のフルリリース時の方が売り上げは伸びているのだ。
Faibetter Gamesは、ゲーム実況動画「WTF Is……?」シリーズを手がけるTotalBiscuitが、Twitch上で本作をプレイしたことが主な要因であると推測。また、Kickstarterでの支援者や早期アクセスの購入者に、DLCを無償で提供する約束もしていたため、これも少なからず売り上げの加速に繋がったと考えている。
インディーデベロッパーたちが共有する"成功例"
2015年2月25日、開発が完了してから3週間以内に、『Sunless Sea』は10万本の売り上げに到達した。5万本で大成功のはずが、その軽く2倍を超える記録を打ち立てた。Failbetter Gamesは喜びの言葉とともに、今後も無料アップデートを継続してゆくことを明らかにしている。「我々はとても喜んでいる、10万本の売り上げを可能にしてくれた全ての人々に深く感謝したい。ゲームのフィードバックをくれたみんな。Kickstarterでゲームを支援するぐらい信頼してくれたり、早期アクセス中に買ってくれたみんな。アドバイスを共有してくれたみんな。素晴らしき『Fallen London』のプレイヤーたち。みんなありがとう!」。『Sunless Sea』はセールス面だけでなく、海外メディアからも高評価を得ている。
『Shovel Knight』を手がけたYacht Club Gamesなど、セールスデータを共有するインディーデベロッパーがここ最近増加している。インディーゲームはどうすれば成功するのか。開発者でなくとも考察するのは面白い。