謎のスタートアップ企業「Magic Leap」が示す”未来の拡張現実ゲーム”

ソニーのProject MorpheusやValveのViveなど、"ヴァーチャル・リアリティ(仮想現実)"と融合したゲーム体験が我々の目の前に迫りつつある。しかしMicrosoftのHoloLensなど、現実世界に情報を重ねて表示する"オーグメント・リアリティ(拡張現実)"も、着実に進歩しつつある分野だ。アメリカのフロリダ州に拠点を置くスタートアップ企業「Magic Leap」も、そんなAR企業のひとつと見られている。同社は先日、これが未来のARゲームだと言わんばかりの、興味深い映像を公開した。

 


未来の拡張現実FPS?

今回の映像は、米国で年1回開催されている巨大カンファレンスTEDに、CEOのRony Abovitz氏が参加できなかったことのお詫びとして公開されたものだ。タイトル名は「Magic Leapオフィスでのとある1日(Just another day in the offie at Magic Leap)」。TEDにて話す予定であった1つのポイントについて紹介する映像だという。

映像では、AR拡張技術を利用している人物が、GmailやYouTube風のアプリケーションを使用したあと、ゲーム画面を表示し、次々と襲い来る敵の軍勢と戦うWave型FPSを楽しむ様子が映しだされている。現時点でこれが実現可能なイメージ映像であるのかは不明だが、Magic Leapいわく「これは、いまオフィスでプレイしているゲーム」そうだ。

今回の映像がなにをポイントとしているかは語られていないが、空間情報が即座に把握され、段差などの地形に細かく対応している点は注目すべきポイントだろう。タレットやロボットは画面外でも地形を認識し行動しており、天井に出現する穴や崩壊する壁なども狂いなく描写されている。

 

映像の最後にクレジットで表示されるデザインスタジオWeta Workshopは、海外で映画やテレビ向けの特殊効果、小道具を専門に取り扱っており、「サルマンの塔」など映画『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の制作にも参加している。映像中に登場する銃器は、同社が販売する「Dr Grordbort's」シリーズの作品だ。両社は2013年に"シネマティック・リアリティ"分野を推進させるため、協力関係を結んだことを公表している。

 


謎のスタートアップ企業「Magic Leap」

2014年10月に、Googleなどの大企業から5億ドル以上の資金を調達したことで名を馳せたMagic Leapは、謎の多いスタートアップ企業だ。2011年に設立され、本社はアメリカのフロリダ州にあること以外はベールに包まれている。Magic Leapが一体なにを作っているのかは現時点でも謎であり、従来のヘッドセット型デバイスであるのかもわかっていない。公式サイトに掲載された手の平に像や子供が現れるコンセプトムービーから読み取れるのは、同社がAR技術を利用しているらしき製品やサービスを手がけていることだけだ。

ARゲームの強みは、外界からの情報を完全にシャットダウンするVRとは異なり、現実世界の空間と融合した独自のプレイ体験を築けることにある。MicrosoftのHoloLensやMagic Leapが、VRに続きARでどのようなゲームの未来を示してくれるのだろうか。

 

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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