任天堂がDeNAと業務資本提携を発表、新型ゲーム専用プラットフォーム「NX」開発中
本日、任天堂とDeNAは、業務資本提携を結ぶことを発表した。合同記者会見と、プレスリリースにて明らかにしている。任天堂はDeNAの株式1508万1000株(約220億円)を取得し、全発行済み株式の10パーセントを保有する。DeNAは任天堂の株式175万9400株(約220億円)を取得しており、これは全発行式株式の1.24パーセントに当たる。お互いに株式を保有し合い、深く業務提携を進めていく姿勢だ。
任天堂とDeNA、スマホゲーム開発へ
両社は、「グローバル市場を対象にしたスマートデバイス向けゲームアプリの共同開発・運営及び多様なデバイスに対応した会員制サービスの共同開発に関する業務・資本提携」について合意した。両社は任天堂IPがベースとなるスマートフォン向けゲームアプリの開発および運営を行う。任天堂にとっては、拡大し続けるスマートフォン市場へ参入する魅力があり、DeNAにとっては、人気の根強い強力な任天堂IPが使用できる。
なおスマホ向けゲームアプリに関しては、Wii Uやニンテンドー3DSからの移植というよりも、スマートデバイス向け機能に特化された新作ゲームが開発される見込み。このほか、任天堂とDeNAはオンラインメンバーシップサービスをスマートデバイス、PC、任天堂ハード向けに展開する。2015年秋のローンチが予定されているという。
スマホ向けアプリを提供することは、昨年から任天堂の岩田聡社長がすでに明らかにしてきたことだ。一方で、その提携相手が「Mobage」などのサービスを展開しているDeNAとなった点は興味深い。なおDeNAは、住友商事と合弁会社を設立し、2015年4月からデータヘルス事業「KenCom(ケンコム)」を開始する。任天堂もすでに健康事業への参入を明らかにしており、この点でも提携することになるのか、注目が集まる。
ゲーム専用プラットフォーム「NX」も開発中
任天堂の岩田聡社長は会見にて、DeNAははすべての任天堂IPが使用できるが、タイトルは厳選すると説明した。プレイヤーの継続的な利用が見込まれるため、無闇にタイトルは量産しない意向だ。また岩田社長は、任天堂がゲーム専用ハードデバイスへの情熱や展望を失ったわけではないとしており、スマートフォンとゲーム専用機が相乗効果を生み出せるとの味方を示した。まったく新しいコンセプトのゲーム専用プラットフォーム「NX」も開発中となっており、メンバーシップサービスに組み込まれる予定である。「NX」の詳細は来年明らかにされる予定だ。
岩田社長が会見にてことさら強調したのは、「ゲーム専用機に悲観しスマートデバイスへ移行」したわけではないという主張だ。スマートデバイスの普及により、ゲームハードビジネスが難しくはなったものの、まだ有効に機能しているとの認識を示した。その一方で、スマートデバイスを活用することで、ゲームハードビジネスへの相乗効果を狙う。「これは、テレビの存在しなかった125年前に創業した任天堂が、かつてテレビをメディアとして積極的に活用するようになったことと構造的には同じです。スマートデバイスは、今や、人々がパーソナルに社会とつながる窓に成長しているのですから、活用しない手はありません」。スマートデバイスを活用することで、ゲーム専用機の人口を拡大させることが、任天堂の最終的な狙いである。
しかし、任天堂の強力なIPがあるとしても、スマホ向けゲームの開発には課題が残る。現在、スマホゲーム市場は次から次へと最新作が登場する戦国時代だ。岩田社長は、DeNAと協力してリリースするコンテンツの価値を維持ができるとしており、勝算があるとの目処を示している。強力なIPとスマホ向けゲームのノウハウを融合させ、両社は中長期的視点で事業を展開してゆく。記者会見の質疑応答にて岩田社長は、DeNAと協力してリリースされるスマホ向けゲームについて、今年中になんらかのアウトプットはするつもりであるとコメントしている。
ほかにもスマホゲームに課題はあるが、岩田社長はまず家庭用ハードのゲームをそのままスマホゲームに移植はしないとの認識をあらためて示した。IPは利用 するものの、スマホに適したタイトルを開発し、プレイヤーが満足することを狙う。なお射幸心を煽る"ガチャ問題"に関しては、任天堂のIPを使用する以 上、任天堂が納得しない方法でビジネスすることはありえないとした。F2Pやアイテム課金を否定はしないとしたものの、ビジネスとして"いきすぎ"のモデルは望まないとする。
上述のスライドで、任天堂がWii Uとゲーム専用機「NX」を並行して掲載した点は、今回の記者会見のなかでも注目すべきポイントの1つだ。一部のメディアは「NX」が次の主力機、次世代機になるとも報じているが、「NX」は新しいコンセプトのゲームハードとなる予定であり、Wii Uの後継機のような存在になるとは一切伝えられていない。そして、そうならないと伝えられているわけでもない。現時点ではまったく未知の存在であり、冷静に任天堂の次の報告を待つ必要があるだろう。
【UPDATE 2015/3/17 19:50】記者会見の内容について加筆、修正しました。