『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』のゲーム内ゲームは、作るのがめちゃ大変。「地方まで筐体探し」の苦労は、レトロゲームを後世に残すため、あと大好きだから。情熱燃えるホンネを開発者に訊いた

龍が如くスタジオ技術責任者の伊東豊氏、および『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』プロデューサー兼ディレクターを務める堀井亮佑氏にインタビューを実施。シリーズにゲーム内ゲームが収録されてきた経緯や、レトロゲーム文化への想いをうかがうことができた。

セガは2月12日、『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)および、PS5/PS4/Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S。

本作では、セガが1990年10月6日に発売した携帯型ゲーム機である「ゲームギア」がシリーズ初登場。『ソニック&テイルス』や『コラムス』といったセガの名作レトロゲームはもちろん、バンダイナムコエンターテインメントの協力により、ナムコ発の『パックマン』『マッピー』『ギャラガ’91』を含む12作品が収録されている。そのほか、街中のゲームセンターでは『救急車』や『スラッシュアウト』などの懐かしのアーケードゲームを遊ぶことが可能だ。

写真左が伊東豊氏、写真右が堀井亮佑氏

『龍が如く』シリーズにおいて、作中で遊べるレトロゲームの存在は、今や欠かせない要素となっている。このたび弊誌は、龍が如くスタジオ技術責任者の伊東豊氏、および『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』プロデューサー兼ディレクターを務める堀井亮佑氏にインタビューを実施。シリーズにゲーム内ゲームが収録されてきた経緯や、レトロゲーム文化への想いをうかがうことができたため、その内容を本稿で紹介する。別記事とあわせてお読みいただきたい(関連記事)。

レトロゲームが『龍が如く』の街に根付くまで

――『龍が如く』シリーズにレトロゲームが登場するようになった経緯について、そもそものきっかけを教えてください。

伊東豊氏(以下、伊東氏):
実在したゲームをゲーム内で遊べるようにしたい、という思いはずっと持っていて、『龍が如く3』では『Answer×Answer』、『龍が如く5』ではバンダイナムコエンターテインメントさまの『太鼓の達人』の一部を切り出して実装したのですが、レトロゲームを本格的に実装したのは『龍が如く0 誓いの場所』からですね。 『龍が如く0』は1980年代のバブル期が舞台なので、当時のゲームを作中で実際に遊べたらいいよね、という話になり、レトロゲームに詳しい自分が担当することになりました。ある程度はコストをかけてもいいということだったので、『スペースハリアー』『ファンタジーゾーン』『スーパーハングオン』『アウトラン』の4タイトルを、それまでのような簡易的な移植ではなく、フルスペックで実装しました。そこから本格的なレトロゲームの実装路線が始まって、現在のスタイルにつながっています。

堀井亮佑氏(以下、堀井氏):
もともと『龍が如く』というタイトル自体が、街を歩いて、その中で色々なことができるゲームです。そのため、街中のゲームセンターに入ったら実際にゲームで遊べた方がいいだろうとか、そういった考えが根底にはあります。

シリーズ初期の『龍が如く』は今ほど規模の大きいタイトルではなかったので、 企業タイアップが限られていましたし、ミニゲームもオリジナルのものを制作する必要がありました。しかし、シリーズの広がりとともに実在企業とのタイアップが広がり、さらに実在するゲームも入れられたら街のリアリティをもっと高められるだろうということで、そうした要素が実装されるようになっていきました。つまり、「レトロゲームを絶対に入れたい」という発想が先にあったのではなく、神室町という街を表現する中の1つのコンテンツとしてレトロゲームが取り入れられ、それが次第に発展していった、ということだと思います。

――当時のゲームを取り入れたいという意図はよく分かります。一方で、『LOST JUDGMENT:裁かれざる記憶』ではマスターシステムが登場するなど、時代設定と直接関係のない例も見受けられますよね。

伊東氏:
『龍が如く0』にレトロゲームを収録したことへの反響はとても大きくて、当時を知らない若い方でも楽しんでくれているということがわかりました。そんな中、「龍が如くスタジオ」(以下、龍スタ)の中に個人でマスターシステムのエミュレーターを作っているプログラマーがいるということを聞いたので、これはさらに多くの名作タイトルを若い方にプレイしてもらえるチャンスだと思い、導入が決まったというかたちです。

堀井氏:
今回のゲームギアの導入もそれに近いのですが、すでに動くものがあるなら入れよう、という思想は常に根底にあります。内部にエミュレーターを作っている人がいるなら、それをうまく活かすに越したことはない。ゼロからレトロゲームを入れるためにエミュレーターを開発する、という判断はなかなか難しいですからね。個人で形にしてくれていなかったら、いまのようなレトロゲームの実装の流れは生まれていなかったとも思います。

伊東氏:
レトロゲームの実装といっても、家庭用とアーケードでは全く状況が異なります。先ほども言った通り、家庭用ゲーム機であるマスターシステムやゲームギアは、龍スタのプログラマーが個人で制作していたエミュレーターが入っているのですが、アーケードゲームの場合、龍スタの中にある「アーケードゲーム復刻チーム」という小さいプロジェクトチームの動きが大きいです。今回もそのチームから、「NAOMI」というアーケード基板のエミュレーターが完成しそうだという話が上がってきたので、それなら入れようということになりました。

レトロゲーム復刻までの道のり

――家庭用とアーケードでは事情が異なるのですね。ではまず、家庭用ゲームはどのような工程を経て実装されているのでしょうか。

伊東氏:
まずはゲーム機のエミュレーターにROMのデータを読み込ませて、正常に動くかどうかを確認します。大変なのは、その後のデバッグ作業ですね。実機と挙動が違うというバグレポートが上がってくると、その都度修正が必要になります。

また、当時のゲームには激しい画面フラッシュがあったり、ライセンス的に使用できないデザインが使われていたりするので、その都度プログラムを解析してパッチを当てて修正していきます。また、とあるタイトルで過激な表現があり、コンプライアンス的に問題ないか、各方面に確認を取ったというケースもありました。

堀井氏:
レトロゲームを『龍が如く』の一部として世に出す以上、その中の表現には我々が責任を持つ必要があります。昔のゲームは難易度が高いものも多く、ステージスキップのような便利な機能もありません。明確なガイドラインがあるわけでもないので、デバッグはどうしても時間がかかる作業ですね。

――自社タイトルということで、当時の資料やデータも参照しやすいのではないかと思ったのですが、そのあたりはいかがですか。

伊東氏:
当時の開発資料に関しては、ほぼ残っていないのが実情です。例えば、同じタイトルでバージョン違いのROMデータが存在していても、細かい違いがわからないんですよね。最後のバージョンを採用すればいいかと思いきや、実はそれが未発売のものだった、ということもありますし……。複数バージョンがある場合は、発売された中でなるべくメジャーなものを収録するようにしています。

また、当時は日本での発売からかなり時間が経って海外版が発売されることも多く、その間に中身が大幅に書き換わっていることも珍しくありません。『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』のゲームギアは、本編を日本語でプレイしている方は日本版のROM、それ以外の方は海外版のROMがデフォルトで選ばれるようになっています。

――アーケードゲームについても、開発の上で難しかったことがあれば教えてください。

伊東氏:
アーケードの場合、まずROMのデータを用意するだけでも一苦労だったりします。家庭用のタイトルであれば、製品からデータを取り出せばいいのですが、アーケード基板は絶対的な枚数が少ないうえに、バージョン違いも多く、セガの倉庫やサーバーにすべてが保管されているわけではありません。さらに、アーケードゲームはリリース後にゲームバランスが調整されることもあるのでどのバージョンを採用するかは、こちらで判断しなければなりません。また、容量も大きいのでROMを吸い出す作業も大変です。基板を用意して、丸一日かけてデータを抽出することもあります。

もうひとつ苦労するのは、入力方式が違うことです。例えばアーケードのレースゲームは、ハンドルやアクセル、ブレーキの付いた筐体でのプレイを前提に作られていますが、家庭用に移植する際にはそれをゲームパッドで遊べるように調整しなければなりません。ガンシューティングはさらに大変です。『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』に収録している『オーシャンハンター』は本来、銃の形をしたコントローラーで遊ぶゲームですが、それをスティック操作で動かせるようにする必要がありました。25年前のプログラムを今になって大幅に修正するのはとても難しいので、コントローラーからの入力を銃の動きに変換するプログラムを新規に作成して解決しています。

――今回の『マジカル・トロッコ・アドベンチャー』のように、いわゆる「体感ゲーム」の実装にも取り組まれていますよね。あのようなタイトルの筐体も、現物は残っているものなんでしょうか。

伊東氏:
もともと筐体の設計図にあたるCADデータはバックアップされていることが多いのですが、筐体に貼られているステッカーなどのデジタルデータは残っていないことがほとんどです。『マジカル・トロッコ・アドベンチャー』もそのような状況だったのですが、セガの倉庫に実物が残っていたので、現物を写真に撮ってきて、それをもとにデザイナーがデジタルデータに変換し、筐体を再現しました。ここはかなりアナログな作業ですね。

また、アーケードゲームを実装する際には、実際に遊べるゲームセンターの情報を集めるようにしています。個人的にこっそり行ってプレイしてくることもありますし、筐体がセガの倉庫にない場合は、その情報を参考に地方まで取材に行くこともあります。ちなみに『オーシャンハンター』は社内にスタンダード筐体しか残っていなかったので、青森県のゲームセンターまで足を運んで、デラックス筐体の写真を撮らせてもらいました。

――今のところ、日本中のどこを探しても現物が全く見つからない……というタイトルはないんでしょうか。

伊東氏:
『マジカル・トロッコ・アドベンチャー』は危なかったですね。結果的には倉庫に残っていたので、ひと安心しました。


『龍が如く』を通じて、レトロゲーム文化をつなぐ

――もし倉庫になかった場合は、どうされていたのでしょうか。

伊東氏:
その場合は当時の写真など、かろうじて残っている資料を頼りに再現していたかもしれないですが、デザイナーの負担が大きくなりすぎるので、実装を見送っていたかもしれません。特に大型筐体のアーケードゲームはメンテナンスが大変ですし、本当にあと数年もすれば、どこにも実機が残っていないということもあり得ると思います。

堀井氏:
アーケードゲームの文化って、家庭用と違って実物が大きいですし、そもそも生産される数も家庭用に比べて多くはないので、なかなか形として残しにくいんですよね。他社さまのタイトルも含めて、今では入手できないもの、遊べないものも数多くあります。でもだからこそ、これらの作品を『龍が如く』の中に収録して遊べる状態にすることは、とても大事なことだと思っています。失われつつある文化をいかに残すか、というのは、ゲームで生まれ育った我々にとって一つの命題でもあると思っています。素晴らしいゲームがどこでも遊べない、忘れられてしまう、というのは本当にもったいないことですから。そこに少しでも抗いたいという気持ちはあります。

伊東氏:
少し偉そうに聞こえるかもしれませんが、それが自分の使命というか、ゲーム業界に貢献できることの一つだと思っています。家庭用ゲームは、まだ実物を持っている方もたくさんいらっしゃると思いますが、アーケードゲームは、作り手側が残そうとしない限りすぐに消えて行ってしまいます。どれだけ名作であっても、誰も何もしなければ、今の若い世代の方たちには、存在さえ知られることがありません。

また、昔のアーケードゲームが復刻されても、お金を出してそれを買うのは当時遊んでいたベテラン世代です。次から次へと発売されるので、レトロゲームが盛り上がっているようにも見えるのですが、実際は同じ人たちしか楽しんでいない。そこにもどかしさを感じていました。

でも、『龍が如く』シリーズの中であれば、多くの若いユーザーに、無料で過去のタイトルを遊んでもらうことができます。「昔はゲームセンターでこんなゲームが遊べたんだ」と知ってもらえるだけでも価値がありますし、過去のアーケードゲームに興味を持って未来に受け継いでくれる人が現れれば本望です。

堀井氏:
『龍が如く』は若いプレイヤーの方も多いですからね。僕らの世代では誰もが知っているというタイトルでも、名前すら聞いたことがないという方が少なくありません。たとえば、『アウトラン』を『龍が如く0』で初めて知ったという声も意外と多い。やはり人は知らないものにはなかなか興味を持てませんから、まずは『龍が如く』を通じて知ってもらう。それが昔のゲームに触れるきっかけになれば、それだけでもIPは永らえていくと思うのです。

僕ら自身も昔のゲームで育ってきたという自負があります。ですから、「これ面白いんだよ、ちょっとやってみてよ」くらいの気持ちで提供している部分はあります。それで楽しさを知って、もっと本格的にレトロゲームに触れてもらえたら、本当に嬉しいですね。

――困難も多い中で、ある種の使命感を持って取り組まれているのですね。

伊東氏:
本作に収録されているレトロゲームについては、当時の遊びを完璧な形で求めている方からすると、少なからず違いを感じる部分があるかもしれません。ですが、完全移植をするためにコストをかけるのではなく、少しでも多くのタイトルを実装して『龍が如く』を手に取ってくださった方がミニゲームとして気軽に遊んで楽しめることを重視しています。処理落ちやバグまで再現しても、当時を知らないほとんどの方にとっては「ただの処理落ちやバグ」ですし、むしろゲームのおもしろさを伝えるにはノイズとなってしまうので。

堀井氏:
基本的には完全再現を目指すというよりも、遊びやすくするための調整や、カジュアルに楽しめるような工夫を大切にしています。オリジナル版よりプレイが快適になっている部分もありますので、これをきっかけに昔のゲームに興味を持っていただけたら、僕らとしては大満足ですね。

――当時にはなかった機能まで追加して、遊びやすい環境にされていますよね。今回、『スラッシュアウト』ではAIとのマルチプレイが可能になっています。

伊東氏:
AI機能は私が提案しました。当時のゲームセンターのマルチプレイの楽しさを今の人たちにも伝えたい、でもオフラインで人を集めるのはなかなか難しい。それならAIで動かしてみてはどうかと。また、アーケード版の『スラッシュアウト』は私がディレクターとメインプログラマーを兼務していて、ゲームの仕様やプログラムの構造もすべて分かっていたので、プログラミングもすべて自分が担当しました。最近は管理職としての仕事が多く、プログラムを書きたくてもなかなか触れる機会がなかったので。とても楽しかったです(笑)。

それと、今回のゲームギアには「残像モード」が搭載されていて、画面のにじみや残像のフィルターのオン・オフを、切り替えられるようになっています。本物を忠実に再現というわけではないのですが、当時の雰囲気に近づける工夫がされています。これは、ゲームギア好きメインプログラマーの中井が自ら進んで実装しました(笑)。

堀井氏:
スタッフが趣味みたいな感じでやっているんですよ(笑)。こちらから「残像モード」を発注しているわけではないです。

――今後も含めて、そうした開発スタッフのこだわりが作品に反映されることがあるんですね。

堀井氏:
情熱のあるスタッフが多いので、意見もどんどん出てくるんですよね。「残像モード」についてもそうですけど、正直必須ではないことにまでこだわってしまう(笑)。そういう熱意があります。とにかく楽しみながら作っているので、幅広いタイトルの収録もできているのではないかなと思います。

伊東氏:
私自身、昔からセガのファンでもあったので、どのゲームが遊べたらファンの方に喜んでもらえるか、今遊ぶならどんな機能があると嬉しいか、ということを意識しています。自分が楽しいと感じることは、プレイヤーの方にもきっと楽しんでもらえるはず、という感覚ですね。

また、当時のアーケードゲームは難易度が高く、クリアすること自体がステータスでしたが、本作で初めてプレイする方や当時クリアできなかった方にもぜひ最後までプレイしてもらいたいと思って、アーケード版にはなかったステージセレクト機能やエクストライージーモードを追加するようにしています。

レトロゲームに関しては、私自身もそうですが、現場の人間がみんな生き生きと楽しそうに作っています。特に今まで家庭用に移植されなかったタイトルを収録すると、ファンの方々がとても喜んでくれるので、それも大きなモチベーションになっています。『龍が如く』シリーズの街をリアルに表現すること、レトロゲームの文化を残すこと、そして作り手が作りたいものを作ること。それらが今、すごく上手くいっていると感じています。

堀井氏:
今回のゲームギアのタイトルをはじめ、これだけのレトロゲームを収録することは、他社や他部署の方々など、多くの方の協力がなければ実現できなかったことです。そこに皆さんが快く参加してくださったのは、非常にありがたいことだと感じています。

レトロゲームを愛する人たち特有の一体感というか、「みんなでこの文化を残そう」という熱量は、セガに限らず他社の方々も同じように持っているものだと思うのです。業界全体で昔のゲームを大切にしようという姿勢には、大きな価値があると感じます。

まずはぜひ『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』を遊んでいただいて、その中でレトロゲームに触れてもらえたら嬉しいです。本編もしっかり面白いので、あわせて楽しんでいただければと思います(笑)

――ありがとうございました。

『龍が如く 極3 / 龍が如く3外伝 Dark Ties』は、PC(Steam)およびPS5/PS4/Xbox Series X|S/Nintendo Switch 2向けに発売中だ。

[聞き手:Jun Inaniwa]
[執筆・編集:Niki Jinnnouchi]
[編集:Sayoko Narita]

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Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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