今流行中の「コージーゲーム」って何?なぜ流行って、どういう歴史があるの?深堀りしてみた
読者諸君におかれては「コージーゲーム」というジャンルをご存じだろうか?

こんにちは。ゲームデザイナーのヌヌヌだ。現役ゲームプランナー・デザイナーの観点から、ゲームを面白くする「隠し味」を発見したり、感想を書いてみたりするこの企画。新年1つ目の記事を寄稿してみた。
近年盛り上がっている「コージーゲーム」
読者諸君におかれては「コージーゲーム」というジャンルをご存じだろうか?
「コージー(Cozy)」は「居心地の良さ」を意味する言葉で、「コージーゲーム」は「居心地の良いゲーム」だ。弊誌でも過去に取り上げたことがあるが、近年話題に上がることが増えているジャンルで、ヒット作もいくつか登場している。
心地良さが売りの「Cozy系ゲーム」が近年Steamで急増中。そもそもCozyとは何なのか、実は結構売れ線Cozyゲーム – AUTOMATON
たとえばSteamのキュレーター、その名も「Cozy Games」が登録されているゲームを見てみよう。
登録されているゲームのうち最も古いもので2024年1月。『Spiritfarer』『Alba: A Wildlife Adventure』『Untitled Goose Game 〜いたずらガチョウがやって来た!〜』『デイヴ・ザ・ダイバー』『Little Kitty, Big City』『A Short Hike』『DREDGE』『Tiny Glade』『Strange Horticulture』『Viewfinder』など、著名なインディータイトルが並んでいる。いくつか見知ったタイトルが見つかったことだろう。このように新興ジャンルである「コージーゲーム」は「居心地の良さ」を武器に、近年勢力を増している。

今回は「コージーゲーム」についていろいろと深掘りしてみる。楽しんで頂けたら嬉しい。
コージーゲームは新しい潮流
さて、まずはコージーゲームとは何かについて改めて考えてみよう。
乱暴な話にはなるが、コージーゲームが「居心地の良いゲーム」だとしたら、その他のゲームは「居心地の悪いゲーム」ということになる。挑戦的なゲームは常に暴力と脅威にさらされ、ストレスフルだ。それに対してコージーゲームは非挑戦的・非脅威的でリラックスできる。そう、コージーゲームを単純化し、やや意地悪な言い方をすれば「挑戦ベースの既存のゲームへのカウンタージャンル」になる。
「挑戦ベースのゲームVS非挑戦ベースのゲーム」という構図は、古くはコアゲーマー対ライトゲーマーという構図で語られてきた。コア層とカジュアル層という括りで語られることも多い。ライトゲーマー向け、カジュアル向けと呼ばれるゲームとコージーゲームはほぼ同義だと言える。
注目すべきは「ユーザー層ではなくジャンル名で語られるようになった」ことだ。先に書いたようにコージーゲーム的なゲームはライト・カジュアル層という括りで語られるようなメイン層に対するサブ、マイノリティ(少数派)だった。それが、近年市場を広げてきた結果ついにはジャンル名を冠するようになった。
つまり、コージーゲームは新しいジャンルというより、既存の類似ゲームを「コージーゲームというジャンルで呼ぶよう(呼べるように)になった」ほうが正しい解釈だと言える。
前置きが長くなったが、それではなぜジャンル名を得るほどに人気になったのか、その理由を考えてみよう。理由はいくつか考えられるが、大きく分けて「社会の変化」と「ユーザーの変化」と「新規ユーザーの流入」が挙げられる。
コロナが生み出した社会の変化
まず、社会の変化について考察してみよう。コロナにより世界の分断が巻き起こった時、ひとつのゲームが注目された。それが『あつまれ どうぶつの森』(以下、あつ森)だ。

『あつ森』は、新型コロナウイルスが起こしたコミュニケーション分断を補うかのように人々の生活に溶け込んだ。コミュニケーションツールの側面は元来『どうぶつの森』がコンセプトに据えていたものだったが、それが非接触・リモートの世に必然性を増し、需要を高めた。『どうぶつの森』が示したセラピー(投薬を伴わない治療)はゲームに対する世間の評価を変えた。「役に立たないもの」から「役立つもの」へと認識が変わったのだ。もちろん、ゲームが持つ「癒し」と「コミュニケーション代替」の効能は『どうぶつの森』以前にも提唱・検証されていたが、実験のためにゲームを遊ばされるのではなく、ユーザーが自らゲームを追い求めた点に意味がある。このように世間のゲームへの認識がアップデートされ、社会から希求されるようになり、「マーケット」が形成された。コージーゲームは受け入れられやすく、売れやすい市場になっていった。
ユーザーの変化「マズローの欲求段階説」の代替ツール

次にユーザーの変化について見てみよう。
「マズローの欲求5段階説」という人間の欲求を5段階の階層に分けて捉える理論がある。人間の欲求は生理的欲求から始まり、安全の欲求、社会的欲求、承認の欲求と上昇し、最後は自己実現の欲求に至るという考え方だ。
過去、働くことはマズローの欲求階層を上昇させる側面があった。働くことで社会的存在になり「私は必要とされている=生きている意味がある」という承認欲求を満たしていた。
しかし、現代は働くだけでは欲求階層を上昇させることはできない。社会全体が効率化を求めた結果、個人が歯車以上の存在になるのが困難になったためだ。仕事で欲求階層を昇れなくなった人々が求めたのが「ゲーム世界での欲求階層の上昇」である。
ゲームは逃避、ストレス発散の道具と言われてきたが、現実が無理ゲーになってきた今、もはやゲーム内での成功を選択するのは当然だ。たとえば『どうぶつの森』や『スターデューバレー』は欲求階層を昇るのに最適だ。安全なコミュニティの中で安全の欲求を満たし、簡単な「おつかい」を繰り返すことで社会的欲求を満たし、人々から称賛されることで承認の欲求を満たす。更にクラフトや着替え要素により自己実現の欲求も満たすことができる。
『スターデューバレー』の主人公が現実社会への疲れから離脱するために農業を選択したのと同じように、ユーザーもコージーゲームを選んでいるとは考えられないだろうか。
新規ユーザーの流入
コージーゲームがマジョリティになった最後の理由は「新規ユーザーの流入」が考えられるだろう。世界的なゲーマー人口の拡大は留まるところを知らず、Steamのユーザー数も毎年最大数を更新している。

新規ユーザーは「最新のゲーム」を選ぶことが多い。そしてゲームに不慣れだ。そうしたユーザーが、安心して遊べそうな対象としてコージーゲームを選んでいるとは考えられないだろうか。つまり、ユーザーが増え、コージーゲームが選ばれ、さらに市場で「売れるので」コージーゲームを増やす。すると、ゲーム業界全体で売れているコージーゲームの評判を目にするようになり、既存ゲーマーもコージーゲームを買うようになる。こうした好循環がジャンルの人気に拍車をかけているのではないだろうか。
まとめよう。
コロナをきっかけにした社会の変化、仕事を通じたマズローの承認階層の上昇の困難さ、そして新規ユーザーの大量流入がコージーゲームが盛況な理由だ。
コージーゲームの起源を探る
ここからは話題を変えて、コージーゲームが誕生するまでの軌跡を考察してみる。冒頭で述べたように、筆者はコージーゲームを新興のジャンルではなく、既存の「コージーゲーム的要素」を内包したタイトルが現代においてジャンル名を冠するようになったと考える。とすれば、コージーゲームは過去において既に存在していたことになる。では、いつ生まれたのだろうか。これから書く内容が正史であるなどと述べるつもりはないが、いくらか妄想を広げるだけの根拠は提示したつもりだ。

コージーゲームの代表作として『どうぶつの森』と『スターデューバレー』が挙げられるように、コージーゲームは歴史という観点で見てみるとその始祖といえるゲームはもっと古くから存在する。コロナ禍での躍進が取り上げられる『あつまれ どうぶつの森』は2020年発売で、『スターデューバレー』は2016年の配信だ。そして……ご存じの方も多いと思うが、『スターデューバレー』は日本のゲーム『牧場物語』に触発されて開発された(PC Gamer)。
開発者のエリック・バローン氏は『牧場物語』のクローンを、それもとびきり自分好みにアレンジして製作することを明言している。コージーゲームの代表作に『スターデューバレー』が挙げられるなら、その源流には『牧場物語』がある。
このまま『牧場物語』の歴史へと進む前に『どうぶつの森』の歴史を先に語ろう。『どうぶつの森』は長寿シリーズで、初代作品は2001年にNINTENDO 64向けタイトルとして発売された。
開発当初のジャンルはRPG風だったが「プレイヤー間のコミュニケーションの発生」を意図してゲームデザインが進められた結果現在の形に落ち着いたという。
社長が訊く ゲームセミナー2008~『どうぶつの森』ができるまで~
このときの「プレイヤー同士をつなげる」という施策が、インターネット時代の幕開けと共に拡張され、コロナ禍での爆発的売り上げに至ると考えると先見の明に驚かされるばかりだが、重要なのは宮本茂氏が残したこんな言葉だ。
「以前、私たちは難易度で興味を引っ張っていくものと考えていましたが、いまヒットするゲームには難易度がなくてもいいのです。」
これは書籍「パックマンのゲーム学入門(2005)」の中で語られた宮本茂のインタビューからの抜粋だ。この本では『どうぶつの森』に対して「まだ、大ヒットというほどにはなっていない」と発言するほど、当時は『どうぶつの森』がIPとして育っていない事実に新鮮さがある。
宮本茂氏が「いまヒットするゲーム」と名指した『どうぶつの森』は2001年発売で、その時点から既に「難易度ベースのゲームデザイン」の対抗馬として「非難易度ゲーム」の到来を意識しているのはやはり巨匠というほかないだろう。2001年の段階で任天堂の中には、少なくとも宮本茂氏の中には新しいゲームの時代が見えていたに違いない。
『牧場物語』に話を戻そう。初代『牧場物語』も古いタイトルで、初代はスーパーファミコンで1996年に販売された。この時代、牧場物語のようなコージーなゲームが普及していたかというとそんなことはなく、開発者である和田康宏氏が「資金調達に苦労した」と言うように、斬新なゲームだったのだ。
【GDC 2012】和田康宏氏が語る「牧場物語」誕生秘話 – GAME Watch
『牧場物語』のコンセプトは「田舎で人生を送る経験ができる、戦わないゲーム」である。戦わないゲーム、ここでも既に「非難易度ゲーム」の発露がある。当時は『ヴァンパイアハンター(1996)』や『ストリートファイターZERO2(1996)』がセガサターンやプレイステーションへ移植され、ナムコからは『鉄拳2』が発売されるなど格闘ゲームが大盛況、今も昔もメインストリームであるRPG市場では『女神異聞録ペルソナ』が発売されるなど、新しいハードによる新しい時代の到来を感じさせる時期だった。
そうしたタイトルの「暴力的」で「ダーク」で、それでいてゲーマーにとって馴染みのあるスタイルに対して『牧場物語』はその名の通り牧歌的なプレイスタイルを提案した。この構図はコージーゲームの「現状に対するカウンター」という構図がそのまま当てはまる。当時はニッチだったスタイルが、時代を経てようやくジャンル名を生むほど一般化されたのだ。(余談だが『牧場物語』は『川のぬし釣り(1990)』の影響もあるのではと推測するが定かではない)
『牧場物語』と同時期に発売されたゲームとして『スーパーマリオRPG(1996)』の存在も見逃せない。任天堂とスクウェア(現:スクウェア・エニックス)が共同開発したことで知られるタイトルだ。開発者の1人である西健一氏はその後『moon(1997)』を開発した。『moon』はキャッチコピーが「もう、勇者しない」であり、露骨に『ドラゴンクエスト』をはじめとした従来のRPGへのアンチテーゼとして開発された。ゲーム内容はシニカルで刺激的だが、RPG的世界の中で日常的な問題解決が繰り広げられる牧歌的な内容とも言えた。

『moon』の開発会社であるラブデリックの諸作品は、コージーゲームのうち「日常のちょっとした問題を解決する」スタイルの始祖だと考えられる。さらに、アニメーション作家の山村浩二氏(代表作『頭山』)やユーリ・ノルシュテイン氏(代表作『霧につつまれたハリネズミ』)を彷彿とさせる独特なアートを中心としたビジュアルは、現在でも色褪せない魅力を放っている。
さて、再び『牧場物語』に話題を戻そう。『牧場物語』こそコージーゲームの始祖なのだろうか?和田康宏氏によると牧場という舞台設定は『ダービースタリオン(1991)』を参考にしたとのことだが、初代『牧場物語』の恋愛要素は和田康宏氏が関わった前作『メタルエンジェル(1993)』の影響が色濃いだろう。なぜなら『メタルエンジェル』は当時流行っていた『プリンセスメーカー(1991)』や『卒業 〜Graduation〜(1992)』を参考にしているからだ。
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『牧場物語』の「周囲の人々とコミュニティを形成する」というゲームデザインは『プリンセスメーカー』や『卒業 〜Graduation〜』から触発されて生まれ、やがて時代を超えて『スターデューバレー』へと引き継がれたのだと思うと感慨深い。余談も余談だが、『卒業 〜Graduation〜』が構築したゲームシステムはやがて『ときめきメモリアル』に引き継がれ、そこから『実況パワフルプロ野球』のサクセスモード、さらには『ペルソナ3』以降のペルソナシリーズまで引き継がれたとなると、その影響たるや……。
「牧場経営」というゲームサイクルについては和田康宏氏は『シムシティ(PC版は1989)』を参考にしている。時間経過とともにパラメーターに応じて街並みが変化していくシステムが農作物の成長に転化されている。
開発者のウィル・ライト氏が何のゲームを参考に『シムシティ』を製作したかは定かではないが、時間経過とともに変化する街並みは『ライフゲーム』から、あるいはそれに類するゲーム・研究からインスピレーションを受けたとみて間違いないだろう。
ロジックに従い生命体(のように)うごめくドットたちは、ピーター・モリニュー氏が開発した『ポピュラス』といったゴッドゲーム(神の視点ゲーム)のように、同時代のゲーム開発者を刺激し、そこから発展したゲーム製作を促したに違いない。
こうして、やや妄想混じりにコージーゲームの源流を追ってみた。『ライフゲーム』が『シムシティ』を生み、そこから『牧場物語』につながり『スターデューバレー』に至る。さらに『プリンセスメーカー』や『卒業 〜Graduation〜』の育成と恋愛シミュレーション要素が溶け合い、コージーゲームが持つ「コミュニティ形成」へと寄与してきた。
『moon』はRPGの「おつかい」がクエストサイクルとして優秀であることを決定づけ、戦闘のないRPGの基礎を作り上げた。そうそう、近年「カメラを使って攻略するゲーム」が多いのは、もしかしたらレベルファイブ5の『ダーククロニクル(2002)』の影響が強いのかもしれない。『ダーククロニクル』はかなり野心的なゲームで、今見ても異常なほどの量のゲームシステムをともいえるほど搭載している。気になったら遊んでみてほしい。
日本の諸作品だけがコージーゲームを形作ったとは言えないが(『アップルタウン物語』もコージーゲームへの影響が強いとされる)かなりのウェイトを占めていることは間違いない。コージーゲームと呼ばれるジャンルのゲームで遊ぶ際は、過去のゲームの影響や歴史に思いを馳せるとより楽しめるかもしれない。
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