マイクロソフトがWindows 10向けMR開発用のAcer製HMDを披露。MRはXbox One/Project Scorpioでも将来利用可能に
マイクロソフトは3月1日、アメリカ・サンフランシスコで開催中のGDCにて「Windows Mixed Realityセッション」を開催し、MR用開発キットを今月から出荷開始すると発表した。このセッションに参加し、優先チケットを受け取った開発者向けにまずは提供される。
同社は昨年、Windows 10の次期大型アップデート「Creators Update」を発表した際に、さまざまなメーカーがVR/MRヘッドセットをWindows 10向けに開発中だとしていたが、今回Acerが手がけたMRヘッドセットの実機が初めて披露された。これは開発者向けの「Windows Mixed Reality Development Edition」とされており、開発用ドキュメントやSDK、Windows 10 Insiderプレビューへのアクセス権とともに開発キットに同梱される。
このAcer製MRヘッドセットは、片目あたり解像度1440 x 1440の液晶ディスプレイを搭載し、そのリフレッシュレートは最大90Hz。ヘッドフォンは装備されていないが、音声出力用の3.5mmジャックが用意されており、好みのヘッドフォンを利用可能だ。そしてヘッドセットからPCへは、映像用のHDMI 2.0とデータ用のUSB 3.0をまとめた一本のケーブルで接続する。
Windows Mixed Reality 向けヘッドセットは、ユーザーの動きをインサイドアウト方式でヘッドセット単体で検出するため、センサーやトラッカーを外部に設置するなど煩わしい準備は必要ない。マイクロソフトのMRデバイスHololensでは透過型のディスプレイを採用し、ユーザーが直接見ている景色に映像を重ね合わせることで複合現実を実現しているが、このAcer製MRヘッドセットはVRヘッドセットのように視界を完全に覆っており、周囲の環境は前方に配された二つのカメラで撮影してディスプレイに映し出す仕組みのようだ。
Windows 10向けVR/MRヘッドセットはAcerのほかに、ASUS・Dell・HP・Lenovo・3Glassesといったメーカーも開発している。今回発表された開発キットの価格は明らかになっていないが、これらのメーカーのヘッドセットの価格は299ドルからと安価になることが発表されていた。ちなみに、Windows 10 PCを内蔵し単体で動作するデバイスのため単純な比較はできないが、Hololensの開発キットの価格は33万3800円からとなっている。
MRの活用例としてマイクロソフトは、作業中のPCのサブディスプレイやアプリを空間中に配置して利用したり、バーチャルペットを飼ったり、あるいは壁や家具の位置・形状を検出して部屋をまったく別の見た目に入れ替えたりといった用途を提示している。専用のデバイスを使わず、ユーザー自身が空間中のMRコンテンツに触れて操作することもできる。Windows 10を利用するため、PCゲームやストリーミングを通じたXbox Oneゲームの画面を表示させることももちろん可能だ。
WindowsストアではユニバーサルWindowsアプリが現時点で2万本以上リリースされており、その中にはすでにゲームを含むMR用のものが配信されているという。ゲーム開発者はマイクロソフトのインディー支援プログラムID@Xboxを通じてMR対応ゲームを開発・配信することができ、それ以外の開発者向けにはWindows Mixed Realityプログラムが用意されている。
マイクロソフトはこのMR体験をWindows 10 PC向けだけでなく、2018年内にはProject Scorpioを含むXbox Oneデバイス上でも楽しむことができるようにする計画だとしている。今年末に発売予定のProject Scorpioについては、強化されたハードウェアによってVRにも対応可能であることが明らかになっていたが、MRにも対応し、さらに従来のXbox Oneでも利用可能になるということは今回初めて言及された形だ。
Windows 10ベースで動作するXbox Oneでは前述のユニバーサルWindowsアプリを利用可能で、PC向けとして馴染みのあるアプリがXbox One上で利用可能になってきている。ゲームに限らず、どのようなMR体験が今後生み出されていくのか興味深い。