『バイオハザード レクイエム』は今までの『バイオ』と恐怖の質が違う。倒す・逃げるだけではない第三の選択肢に“追い詰められた”試遊体験

『バイオハザード レクイエム』では、プレイヤーを不確実性の渦に放り込み、慣れを許さない設計でその恐怖を持続させる。

どれだけ巧みに恐怖を演出されても、慣れてしまえば人は鈍感になる。しかし慣れることさえ許されなかったら?『バイオハザード レクイエム』では、プレイヤーを不確実性の渦に放り込み、慣れを許さない設計でその恐怖を持続させる。本稿では試遊を通して体験した本作の進化した恐怖感を紹介しよう。

本作はシリーズの集大成的な多彩な要素を備えながらも、単なる回顧に留まらず、恐怖の「質」そのものを更新する作品に仕上がっている。リアルなグラフィックだけではなく、文脈を感じる敵の動き、刻々と変わる状況、プレイヤーの判断が絡み合うことで、恐怖が“自分事”として立ち上がってくる。


常に変化する状況が、恐怖を“自分事”にする

本作の主人公は、FBI職員グレース・アッシュクロフトと、対バイオテロ組織「DSO」に所属するエージェントのレオン・S・ケネディだ。ふたりは廃ホテルで起こった連続変死事件を追うなかで、それぞれの過去と向き合い、やがて交錯する運命へと導かれていく。

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試遊では、序盤のステージである療養施設を舞台に、主にグレース編の探索や戦闘、謎解きを体験できた。またレオン編についても試遊できたため、後半では両パートの比較も交えながら紹介していこう。

まずグレース編で印象的だったのは、敵の存在が「障害物」ではなく、「状況の一部」として機能している点だ。本作の敵は、ただプレイヤーに向かって突進してくる存在ではない。照明を消すことに執着する個体、音に過敏な個体など、生前の性格や行動様式を思わせるゾンビも存在する。敵はときに喋り、その言葉や挙動を観察すれば、習性を利用して戦闘を避けたり、同士討ちを狙うことも可能だ。むしろ序盤は物資が極端に少なく、そうした対処を選ばざるを得ない場面が多い。

また、療養施設は同じ場所を何度も通る探索設計で、敵の配置や状況が刻々と変化していく。たとえば照明ギミックを使ってひとりの敵をやり過ごした廊下が、次に通ったときには別の敵が増えている。倒したはずの敵が、より危険な姿で復活する。あの時倒しておけば、倒さずに逃げていれば、そんな後悔も生まれる。つまり、「敵が出たから倒す」「危ないから逃げる」という反射的な行動だけでは上手くいかないのだ。敵は部屋を越えて追跡してくることもあり、安全地帯は少ない。その中で、プレイヤーは常に状況の文脈を読み取りながら判断を迫られる。

この構造が生むのは、「ライブ感」のある恐怖だ。恐怖は固定配置されたイベントではなく、プレイヤーの行動と判断の結果として発生する。自分の選択が状況を作り、その状況が次の恐怖を生む。この循環が、恐怖体験を強く“自分事”に引き寄せる。


進化した「ままならなさ」

『バイオハザード』シリーズを通して変わらない要素があるとすれば、「ままならなさ」だろう。移動は現実的な遅さで、エイムには癖があり、物資は少ない。乗り切れなくはないが油断はできないストレスが、常に根底に流れている。

だからこそ、恐怖が乗った瞬間に焦りが生まれる。焦りはエイムのブレを生み、判断ミスを誘発し、赤く染まった体力バーがさらなる冷や汗を呼ぶ。敵の見た目の怖さだけではなく、自らの責任で手詰まりに陥るかもしれない恐怖。本作で興味深いのは、基本システムはそのままに、先述したゾンビの習性の活用が攻略の選択肢に加わることで、さらに「ままならなさ」が深みを増している点である。

試遊で強く印象に残ったのが、弾薬がリボルバー1発しかなく、体力も残りわずかだった場面だ。照明に執着するゾンビの習性を利用してやり過ごし、アイテムを探してトイレへ逃げ込む。鏡を磨き続けるメイドゾンビの背後にハーブを見つけ、嫌な予感を覚えつつも手を伸ばした瞬間、ゾンビが反応。行き止まりで追い詰められ、思わず発砲してしまう。やり過ごそうとせずにさっさとハーブを取って逃げていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。

そうして敵は倒せたものの完全に丸腰となり、後がない状況で再び照明ゾンビをやり過ごさなければならなくなった。ここでも、なまじっか「やり過ごす」選択肢があるせいで走るリスクをとるよりも恐怖を押し殺して“安全策”を取りたくなるわけだ。

判断は間違っていなかったはずだ。むしろ合理的だったはずの行動が、結果として状況を悪化させる。この嫌な汗が出るような感覚は、従来のシリーズにはなかった質の恐怖だ。目の前を敵を倒すか、逃げるかだけではなく、種類にあわせて「やり過ごす」。この対処法が増えたからこそ、それが崩れたときの絶望が深くなる。そして倒すにせよ逃げるにせよやり過ごすにせよ、いずれもノーリスクとは言い切れない「ままならなさ」が、不安や緊張感を高めている。


テンションの違う「無理」が出る、グレースとレオンの戦闘

なお今回の試遊ではグレース編だけでなく、レオンのパートも体験できた。両者のプレイ感は、特に戦闘において大きく異なる。

グレースは、FBIの分析官として最低限の戦闘能力を持ちながらも、基本的には普通の人間だ。非力さが際立ち、敵に掴みかかられても体術やナイフでどうにか押し返すのが精一杯。序盤は物資も乏しく、「絶対に無理だ……」と感じる状況が繰り返される。

しかし丁寧に探索すれば、新たな武器だけでなく、クラフトに用いる「血液」、アイテムの購入に用いる「アンティークコイン」を集められる。これらを消費すれば、体力上限を増やす、射撃の威力と安定性を上昇させるなどの効果を持つ特殊なアンプルを入手可能だ。装備が整うにつれ、まるでグレースが精神的に成長しているかのように、意外なほど戦えるようになる。

対してレオンは経験豊富なエージェントらしく、グレースよりも強力なハンドガン、そして新装備の「トマホーク」を持っている。トマホークは『RE:』シリーズのナイフと同じく耐久力が設定されているが、その場で研ぐことができるため何度でも使用可能だ。壁や机で敵の頭を潰すなど、発動時の状況に応じて変化する体術や、敵の落とした斧やチェーンソーを用いた攻撃など、アドリブ感のあるアクションも特徴だ。

とはいえレオンは決して強すぎる存在ではなく、湯水のように溢れてくる大量の敵によってかなりの頻度で苦境に立たされる。斧やチェーンソーは敵も拾うため、目の前で武器を持っていかれて「無理無理無理!」と、一気に逃げに転じる局面も多かった。

先日公開された「バイオハザード ショーケース」では、本作のグレースとレオンの差について、ディレクターの中西晃史氏が「緊張と弛緩」と称していた。しかし実際にプレイしてみると、グレースはただ逃げまどうだけではないし、レオンはただ爽快に敵を倒すだけではない。それぞれに別の緊張感を感じられ、パートの切り替えが発生することでプレイヤーに“慣れ”を許さない。『7』や『RE:2』を代表とする静の緊張感と、『RE:4』のような動の緊張感。シリーズごとに進化してきたDNAが、異なるかたちで両者に流れている。

一方で試遊において若干気になったのは、途中から余裕が生まれ始めるゲームバランスだ。グレースは装備が充実してくると緊張感が減り、最終的には低リスクで敵を迷わず倒せる状態となった。レオンも当初は敵の多さに面食らったものの、トマホークが研げるため「詰む」ようなことはないだろうという安心感が生まれていた。

ただ、敵に対処できるようになってくる成長感は『バイオハザード』の魅力のひとつであり、その余裕が次のステージで打ち砕かれるのもまたおなじみだ。ゲーム全編を通して遊んだときに、緊張感が保たれるバランスになっていることを期待したい。


視点により変わる、恐怖の質感

そして本作では新たな仕組みとして、一人称視点と三人称視点をいつでもオプションにて切り替えてプレイできる。ここで特筆すべきなのは、どちらかが“オマケ”になっていない点だ。

一人称視点は没入感が高く、射撃の狙いをつけやすい。視界情報が制限されることで、恐怖の密度も高まる。一方、三人称視点は周囲の状況把握に優れ、探索や回避行動がしやすい。本作に限らず、視点切り替えに対応したゲームは一定数存在するが、その多くが「結局どちらか一方が最適解になる」構造に陥りがちなのに対し、『レクイエム』では両方が等しく最適化されている。どちらを選んでも操作面でのストレスがなく、純粋に好みで選べるほどの品質になっている。『7』で導入された一人称視点も、『4』から長年培われてきた三人称視点も、どちらも『バイオハザード』であり、それぞれが尊重されている。

加えて一人称視点において、グレースは銃を持つ手が震える、レオンは体術の際に一瞬カメラが引いて全身のアクションを見せるなど、一人称視点でも主人公ふたりの個性が際立つ、細やかなこだわりも光っている。

また重要なのは、これが難易度選択とは別の次元で、恐怖の「質感」を調整するシステムになっていることだろう。一人称視点は没入型の恐怖、三人称視点は主人公の背中から伝わる緊張感を生む。視点切り替えは単なるカメラ位置の設定ではなく、恐怖の受け取り方そのものを変える演出装置として機能している。

ただ筆者としては、一人称視点でプレイしているときに「この場面は怖すぎるから三人称視点にしよう」と思い立つこともあり、視点切り替えがポーズメニューを介さずワンボタンで可能であればさらに嬉しかったところ。どちらも完成度が高いだけに、視点を都度切り替えながら遊びたくなる出来栄えとなっていた。


恐怖の集大成、その先へ

本作には多くの新要素が存在する一方で、シリーズ過去作の文脈も随所に感じられる。『1』の洋館を思わせる、豪華な内装と入り組んだ構造が特徴の療養施設。『RE:2』を彷彿とさせる歯ごたえのある謎解き。インベントリですら、グレースは『7』や『RE:2』と同じ形式、レオンは『RE:4』のようなテトリススタイルと、過去作の2種類のシステムを踏襲しており、シリーズから受け継がれた要素は試遊の範囲だけでも枚挙に暇がない。

さらには一人称視点と三人称視点の選択、“静と動”という『バイオハザード』シリーズの集大成的な体験が、交互にプレイする形でゲームプレイ面でも意味をもつことは本作の個性となっている。

またシリーズが積み上げてきたサバイバルホラー体験、「ままならなさ」は、本作で新たな方向へと踏み出しつつある。『レクイエム』は、その名の通り過去作へリスペクトを捧げる鎮魂曲であると同時に、次の『バイオハザード』への宣言でもあるのかもしれない。本編で思う存分恐怖を味わえる瞬間を、期待して待ちたい。

バイオハザード レクイエム』はPC(Steam)/PS5/Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S向けに2月27日に発売予定だ。

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Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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