水やりアクションシューティング 『Apocalypse Gardening』
最前線のインディーゲームを紹介してゆく連載Indie of the Week。第65回では、『Apocalypse Gardening』を紹介する。本作は、現地時間1月23日から開催されたGlobal Game Jam 2015にて生みだされたタイトルだ。開発に参加したのは"もっぴん"こと麓旺二郎(ふもとおうじろう)氏とnemk氏。わずか48時間にて製作されたシンプルなタイトルだが、両者のセンスのよさが光るアクションシューティングゲームである。
お花を育てて敵を撃つ
プレイヤーは銃と水やりの"じょうろ"を持った自機を操作し、周囲360度から襲い来る敵を撃ち倒してゆく。敵の攻撃を受けライフがゼロになると、その時点でゲームオーバーだ。エンディングは存在せず、死ぬまでに何体の敵を倒し得点を稼げるか、ハイスコアを競いあうタイプのタイトルである。
『Apocalypse Gardening』では、自機のライフゲージは敵と接触するだけでなく、時間経過によっても減少してゆく。そのため、ライフを常に回復しなければならない。その回復手段として登場するのが、ステージ上に生やすことができる"お花畑"だ。襲い来る敵のなかには、倒すと苗を地面に落とす「苗モンスター」が存在する。この敵が落とす苗にじょうろで水をやると、お花畑へと成長する。自機がこのお花畑の上に位置しているあいだは、自動的にライフが回復してゆく仕組みだ。
お花畑は徐々に枯れてゆくため、頻繁にじょうろで水やりをしなければならない。だが自機には、ライフゲージにくわえて青色の"水ゲージ"が存在している。水ゲージは弾を撃ったり水やりをすることで消費してゆくため、敵の攻撃がゆるむタイミングを見計らって、ステージ中の水場で補給する必要がある。
『Apocalypse Gardening』はとてもシンプルな操作性と、大量の敵を撃ち倒す爽快感にあふれたタイトルだ。それにくわえ、お花畑の維持と水ゲージの管理が絡み合い、戦略性のあるタイトルにも仕上がっている。ただ弾丸を撃ち敵を避けるだけの反射神経ゲームではなく、常に苗の位置や補給のタイミングに関して判断を下さなければならない。
開発タイトルがIGF学生部門にノミネート
『Apocalypse Gardening』を手がけた麓旺二郎氏は、2015年4月発売予定のマートフォン向け2Dアクションゲーム『Downwell』を開発している。この作品は、海外のインディーゲームの祭典「Independent Games Festival(以下、IGF)」の学生部門作品にノミネートされている。学生部門はIGFにおける登竜門的な存在である。彼らが将来、才能あるインディーデベロッパーとなるかもしれないのだ。たとえばNuclear Monkey Softwareは、2005年に『Narbacular Drop』で学生部門を受賞した。この『Narbacular Drop』こそが、後にValveで発売される『Portal』の原型となったのである。
『Downwell』はまだ発売に至っていないが、すでに映像からは同作のプレイフィールを感じ取ることができる。1つのメカニックが様々な効果をもたらすようなゲームデザインは、『Apocalypse Gardening』に通ずるところがある。『洞窟物語』の天谷大輔氏や、『LA-MULANA』のNIGOROに続く、新たな日本2Dアクション界の新星となることに期待したい。