『鳴潮』Ver3.0前半ストーリー感想。“ギャル”リンネーと共に過ごす、光と影の甘酸っぱSF青春学園生活
メインストーリーに相当する潮汐任務の第三章序幕「未知の予感」と第三章第一幕「氷原の下に灯るトーチ」を約3時間30分かけてプレイした感想をお届けする。

KURO GAMESの手がける『鳴潮』には、いつも人の心の機微を表現するストーリーに感心させられる。主人公と交流することでキャラクターたちがそれぞれの葛藤を乗り越えていき、新たな希望を見出していく姿を目にできるのが『鳴潮』の醍醐味のひとつだ。Ver3.0前半に登場するリンネーはいわゆる「オタクに優しいギャル」と呼ばれる典型的な新キャラクターだが、クールなビジュアルとは裏腹に彼女の抱える苦しみが丹念に描かれていく。目的のために自分を律するリンネーの姿に切なさを感じ、彼女を夜に煌めく星のように輝かせたくなった。
本稿では、2025年1月25日に配信された『鳴潮』Ver3.0「まだ灯らぬ星へ」のストーリーについての感想をまとめたい。具体的にはメインストーリーに相当する潮汐任務の第三章序幕「未知の予感」と第三章第一幕「氷原の下に灯るトーチ」を約3時間30分かけてプレイした感想をお届けする。なお、Ver3.0で新搭載のバイクを中心にした探索についての感想は、こちらの記事でチェックしていただけると幸いだ。なお、本稿は『鳴潮』Ver3.0前半のネタバレを軽微に含んでいる。
近未来SFと学園生活の雰囲気に満ちた新エリア
『鳴潮』はVer3.0という超大型アップデートを迎えるに際して、新エリアの「ラハイロイ」が追加された。ラハイロイは広大なエリアであるが、Ver3.0では学園都市の「スタートーチ学園」で主なストーリーが展開されていく。スタートーチ学園は宇宙エレベーターやワープ装置などが点在する学術都市で、かなり近未来感のある雰囲気だ。Ver2.8に登場した穂波市も現代的な都市だったが、スタートーチ学園は各国からの留学生が集っており、その賑やかさは比べものにならない。
主人公がスタートーチ学園へやってくる流れこそどこか不穏なものが存在したが、最初に出会った生徒がリンネーだったことで新天地へ馴染みやすかった印象だ。主人公とリンネーの出会いこそ交通事故じみた衝撃的なものだったにせよ、以降のリンネーは積極的に学園を案内してくれる。各種の入学手続きや健康診断の受診などにリンネーが付き添ってくれるので、見知らぬ土地で始まる過度な新生活の不安はなかった。主人公の学園生活を追体験しつつ、プレイヤー自身の学生生活の思い出も蘇ってくるような巧みな導入だったと思う。


リンネーは主人公に気さくに対応してくれる。主人公を「漂泊者ちゃん」呼びし、あれやこれと手を焼いてくれるリンネーの姿は、オタクに優しいギャルそのものだ。しかし、その一方でリンネーはなんらかの秘密を抱えているようだ。授業をサボったり、バイクを改造していたりと些細な秘密は主人公と共有してくれるが、リンネーの本質的なところは謎に包まれている。
自由な校風のスタートーチ学園では、人類を地上に縛り付けるさまざまな束縛を突破しようとする研究が行われている。作中世界では自然現象によって人類はまだ宇宙に到達できていないことが示唆されており、そうした制約を打ち破ることがスタートーチ学園の考える真の自由になるようだ。真の自由を勝ち取る一員としてリンネーも学園に所属しているが、ときおり彼女は儚げな姿を見せる。手を伸ばして星を掴もうという素振りを見せながらも、まるで自分の腕がそれに届かないといいたげな切なさに包まれている。
リンネーがバイクを好むのも、自由を感じるからだ。バイクは「自分の道は、自分で選べる」ことを感じさせてくれるものであり、そこには自由に生きていきたいというリンネーの切実な願いが込められている。
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期待と諦めの相反する感情が表現されるリンネーの手
リンネーがスタートーチ学園に愛着をもっているのは間違いない。制服を着崩したり、バイクを改造したりと校則違反スレスレで学園生活を謳歌している。同級生たちや先生たちからの覚えもめでたく、何不自由ない学園生活を送っているかのように見える。しかし、その実態はもはやギリギリの状態だった。
スタートーチ学園は世界中の精鋭が集う最先端の学術機関であり、リンネーにとっては、本来は関わりのない世界だ。ふとしたことをきっかけにスタートーチ学園の一員となったが、リンネーは本来入学することのできなかったことがコンプレックスとなってしまっている。本来は入学することができなかったとはいえ、周囲に馴染んでカリキュラムをこなしていけるのはリンネーが努力したからだ。生まれがどうあったにせよ、リンネーにはスタートーチ学園の学生になることができる素養が備わっていたといえるだろう。
しかし、偶然に得られたチャンスを良しとしないのがリンネーだ。自分の生まれが普通ではなく、生きていくために手を汚してきた罪悪感は簡単に払拭できるものではない。リンネーの素性を周囲は知らないために差別されるようなことはなかったが、コンプレックスを抱えたリンネーは自らをスタートーチ学園の「異邦人」のように考えている。胸を張ってスタートーチ学園の一員になりたいにも関わらず、後ろめたさから自分を認めることができないのだ。昼の明るさを知らない夜の住人にとって、太陽の明るさは眩しすぎる。陽の下のもとで生きていたいと願うも、過去の影は簡単に自分を許してくれやしない。

リンネーは「普通」でありたいと願いながらも、その一方で「普通」になることへのハードルの高さを感じている。リンネーは学園を守るために人知れず活動しているが、それは自分が手に入れることのできた普通の生活を守るためのものでもある。リンネーの見せる手の動きには、不安や期待といった彼女の感情が込められている。リンネーが拳を握りしめているときは不安があらわれており、自分の想いを隠して耐えている。リンネーが手を開いているときは思いの丈を正直に明かしてくれているときであり、彼女が学園をどれほど大切に思っているかが伝わってくる。


助けを求めることのできるリンネーの素直さ
リンネーの行動によって誤解が生じてしまったとはいえ、スタートーチ学園を襲う危機はリンネーが引き起こしたものではない。むしろ、リンネーは誰にも頼らずに学園を守ろうとした。そうしたリンネーが教授陣から査問を受けているのは不条理なもので、彼女の退学までかかっているとなれば見過ごすことはできない。
プレイヤーからすれば、リンネーは助けたくなる存在だ。普通の生活に憧れてそれを手に入れてたリンネーを、もといた修羅の世界へ送り戻したくない。リンネーにとってもスタートーチ学園で暮らしていくことはなによりも大切なことであり、それは憧れた生活で守りたい人々ができたことによる。リンネーはコンプレックスだった自分の過去を主人公に明かし、「自分を主人公に任せる」とまでいってくれた。それほどまでにリンネーが主人公を信頼してくれるならば、もはや怖いものはない。2人の握手は信頼関係が結実した証であり、リンネーが守ろうとする尊いものがあらわれている。


リンネーはスタートーチ学園について語るとき、どこか夜空に輝く星空を見ているかのようだった。まるで自分はスタートーチ学園に値しないとでもいいたげな、切なさを感じさせる表情だ。それでも、リンネーのように助けが必要なときに、誰かに助けを求めることのできる人はそう多くない。彼女は主人公と出会うことで、自分のことを打ち明けて助けを求める方法を選択した。これはリンネーにとって決して楽な道ではなかったが、そうした葛藤を乗り越えて成長した証といえる。

『鳴潮』の作中世界が気象現象によって宇宙に到達していないことからすると、スタートーチ学園のすべての関係者にとって宇宙はまだ幻のようなものなのかもしれない。しかし、たとえどのような困難があったとしても、人類は自由を求めて突き進んでいく。それは『鳴潮』のストーリーが人間の可能性を丹念に描いてきたからこそ、不可能ともいえる人類の挑戦に期待できるものだ。キャラクター同士が見せる感情の爆発を触媒として、Ver3.0後半では宇宙を感じさせるSF的なストーリーが展開されることに期待したい。
『鳴潮』は、PS5/iOS/Android/PC(Windows/Steam/Epic Gamesストア)向けに基本プレイ無料で配信中。2026年1月15日から開幕するVer3.0後半では、メインストーリーに相当する潮汐任務の第三章第二幕「二度目の日の出へ」が開放予定。こちらのストーリーでは、主人公とスタートーチ学園の享受モーニエがラハイロイで重要な役割を担う「ロイ一族」の地へと向かう。
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