Steamで2025年めちゃくちゃ高い評価を獲得したヒットゲーム開発者に、成功の理由と成功後の生活の変化を訊いた。『Tiny Bookshop』『Town to City』『StarVaders』『Is This Seat Taken?』『Cast n Chill』開発者
2025年にゲームをリリースし高評価を得たインディースタジオ・販売元にアンケートを実施。自らの作品の成功をどのように受け止めているのかや、今後の展望などについて語ってもらった。

毎年のように活気を増していくインディーゲーム界隈では、2025年もたくさんのタイトルがリリースされ盛り上がった。一方で、非常に高い評価を獲得したり、大きな成功を掴んだりできたタイトルは、全体からすると一握りだろう。そこで弊誌では、2025年にゲームをリリースし高評価を得たインディースタジオ・販売元にアンケートを実施。自らの作品の成功をどのように受け止めているのかや、今後の展望などについて語ってもらった。
今回のアンケートは、Steamのユーザーレビューにて本企画開始段階で好評率95%以上を獲得していたインディーゲームを中心に選定して実施。みな同じ5問に回答してもらった。なお、たくさんの回答をいただいたため、回答してくれた開発元・販売元の所在地域別に3回に分けて記事を公開する。本記事は欧米編である。日本編・中国編記事は後日公開。
『Tiny Bookshop』
PC(Steam)/Nintendo Switch

──自己紹介と『Tiny Bookshop』の紹介をお願いします。
『Tiny Bookshop』を手がけたチームの一員であり、ゲームデザイナーのDavid Zapfe-Wildemannです。『Tiny Bookshop』は、移動式の古本屋を経営するゲームです。もともと私のちょっとした空想をきっかけとし、最初はカードゲームとしてプロトタイプを制作していたのですが、その後少しずつ発展していく中で、いま皆さんにご覧いただいている小さなインディーゲームになりました。
──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率96%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。
『Tiny Bookshop』のビジュアルや設定、コンセプトは、誰かの心にすぐに響くだろうと考えていたので、ユーザーはそのような部分に惹かれて選んでくれたのではないでしょうか。ただ、こうした高評価を見るたびにホッとした気持ちになっています。というのも、本作はリリース前からちょっとした注目を集めていたため、皆さんの期待に応えられるのだろうかと心配していたのです。
実はリリース前に配信した短い体験版では、ゲーム後半のコンテンツをあまり明かさないようにしていました。皆さんには、製品版のプレイを通じて驚きや喜びを感じてほしいと期待していたからです。どうやら、その狙いが上手くいったようですね。
──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。
もちろんです!この3年のあいだ、私たちは常に“サバイバルモード”状態で、次の数か月分の資金をどうやって捻出するか心配ばかりしていました。もし『Tiny Bookshop』が売れていなかったら、あるいは発売を1か月延期せざるを得なかったら、チームへの給料の支払いはかなり難しい状況になっていたでしょうね。でも今はそんな心配をすることなく、次の数年を見据えて活動できます。こんなことはまったく予想していなかったですし、肩の荷が下りた気持ちです。
──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。
『Blue Prince』ですね。
──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。
『Tiny Bookshop』開発での疲れを癒しつつ、新たなインスピレーションを探すことになるでしょう。また、『Tiny Bookshop』のサポートももう少し続けたいと思っています。
『Town to City』
PC(Steam)

──自己紹介と『Town to City』の紹介をお願いします。
『Town to City』の開発元Galaxy Groveの設立者で、ゲームディレクターのJoost van Dongenと申します。『Town to City』は、美しい19世紀の地中海沿岸を舞台にした、心落ち着く街づくりゲームです。本作では、自由に道路を描いて活気ある広場を作ったり、曲がりくねった路地で街に個性を持たせたりといったことができ、住民からのクエストを達成し彼らの幸福度を高めることで、街がさらに発展していきます。また、街を自由にいじって美しくしていける、豊富なカスタマイズオプションも用意しています。
──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率98%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。
本作のプレイテストにおいて、たくさんのプレイヤーが本当に楽しんでくれていたため、高評価を頂けるだろうとは思っていました。といっても、好評率98%もの評価までは予想していなかったですよ!たくさんのポジティブなレビューを頂けているのは、本作のアートから楽曲、ゲームプレイ、そのペース配分まで、すべてが統一された雰囲気になるように、開発に多くの時間を費やした成果だと思います。
たとえば、本作の経済システムについては、プレイヤーに楽しさと同時に挑戦も提供するよう、たくさん試行錯誤しました。プレイヤーが公園をいじっている30分間は、経済のことを忘れても良いような仕組みにもしています。その仕上がりには非常に満足していますし、どうやらプレイヤーの皆さんも気に入ってくれたようですね!
──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。
あまりないですね。ゲームを作ることも、チームと一緒に仕事をすることも楽しいですし、それを続けています。でも、もし本作が売れていなかったら精神的に疲れていたかもしれないですから、成功を得られたことは本当に嬉しいです!
──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。
毎年たくさんの素晴らしいゲームがリリースされていますが、いつも遅れてプレイしています。小さな子供がいて、かつてのようにいつでもプレイできるわけでもないですし。今年プレイした中でもっともインスピレーションを受けたタイトルといえば『Timberborn』になりますが、これも少し前のタイトルですよね。
今年発売されたゲームから選ぶとすれば、『Clair Obscur: Expedition 33』を挙げます。まだプレイできてはいませんが、同作の明確なフランスらしい表現からはとても刺激を受けます。私たちはオランダ出身ですので、オランダらしさを感じさせながらも、世界中の人々にアピールできるゲームをいつか作ってみたいですね。
──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。
『Town to City』は現在早期アクセス配信中で、2026年内には正式リリースする計画です。それまでには複数回の大型アップデートも予定していますよ。また、来年には新作経営シミュレーションゲームを発表するつもりでして、皆さんの反応を見るのが楽しみです。実は、2026年以降にリリース予定の別の経営シミュレーションゲームをさらに2本開発しており、エキサイティングな年になりそうです!
『StarVaders』
PC(Steam)

──自己紹介と『StarVaders』の紹介をお願いします。
『StarVaders』のリードデザイナーを務めていますEddieです。モントリオール出身の3人の友人同士で集まってゲームを作っています。もともと業界経験はあまりなく、趣味で小さな作品をいくつか一緒に手がけたのち、『StarVaders』をリリースしました。信頼し合える仲間とチームを組めたことはラッキーだったなと思っています。
──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率97%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。
実は、リリース時点での本作のクオリティにはかなり自信がありました。プレイテストに多くの時間を費やし、全員一致でポジティブなフィードバックを得ていましたから。それでも、実際に皆さんに本作を購入してもらい楽しんでもらっているのを見ると、本当に嬉しいですし恐縮しきりです!
この作品が成功した背景には、厳格なプレイテストプロセスを設けたことと、あらゆるファンからのフィードバックに耳を傾けてきたことにあると思います。皆さんの協力がなければ、ここまでの仕上がりにはならなかったでしょう。ゲーム制作に時間を費やすほど、コミュニティとプレイヤーの存在が開発プロセスにおいていかに重要であるかを、より実感します。
──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。
私自身の生活には大きな変化はないです。次のプロジェクトに向けて懸命に取り組んでいるところですし、皆さんに楽しんでもらえる素晴らしいゲームを作り続けたいと思っています。私は常に、柔軟で流れに身を任せ、何が起こるのかを見守る心構えでいます。計画を立てるのがあまり得意でない性格なのでね(笑)
期待するところとしては、これからの数年間でさらに成長し、まだ経験したことのない人生の新しい道を見つけたいと思っています。それは旅をする中で見つかるかもしれませんし、芸術表現を通じてかもしれません。世界には、まだまだ学ぶべきことがたくさんありますから。
──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。
『Blue Prince』には感銘を受けました。個人的にいつか実現したいと思っていたデザイン空間を、見事に探求した作品だと言えます。この作品のすべてが大好きですし、唯一無二で力強いビジョンを持つプロジェクトであったことが感じられます。この作品は、真にユニークなものを作るということはどういうことなのか、私に多くのことを教えてくれました。
──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。
現在、私たちは2つの新作に取り組んでいます。ひとつは『DiceVaders』と呼んでいる、『StarVaders』と世界観を共有する小規模なゲームです。そしてもうひとつは未発表の実験的なプロジェクトで、開発にはかなり時間がかかる見込みです。『DiceVaders』に関しては2026年前半にリリース予定ですので、続報をお待ちください!
『Is This Seat Taken?』
PC(Steam)/Nintendo Switch/iOS/Android

──自己紹介と『Is This Seat Taken?』の紹介をお願いします。
『Is This Seat Taken?』は、個性豊かな人々のグループの仲介をするロジックパズルゲームです。各キャラクターには座る席について特定の好みがあり、それが楽しいチャレンジにつながっています。それぞれのキャラクターにピッタリな席を見つけてあげることで新たなステージがアンロックされていく、心地よくもユーモアがあり、また共感を覚える作品だと言えるでしょう。
──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率97%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。
本作がこれほどまでに好評を受け、プレイヤーから素晴らしいレビューを頂けるとは、まったく予想していませんでした。この高評価の理由は、私たちのマーケティング素材が作品の内容をありのまま伝えているからだと思います。スクリーンショットやトレイラーでご覧いただいたとおりの体験を、プレイヤーが得られるということです。
皆さんは、本作がどういったゲームかを一目で理解できるでしょうし、自分の好みのゲームであるかどうかもすぐに判断できます。そして実際にプレイしてみると、期待どおりの楽しいカジュアルパズル体験が待っていたということでしょうね!
──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。
特に変化はないですね。私たちは本当に地に足がついたタイプの人間ですので。小さなスタジオで、『Is This Seat Taken?』の時と同じように、今後も自分たちが気に入ったゲームを作り続けていくつもりです。
──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。
『Öoo』は心から楽しめたゲームでした。とても面白くて興味深くもあり、パズルアクションゲームが好きな方ならぜひチェックすべきです(好評率99%ですよ)!
──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。
製品化する価値があると思えるゲームが見つかるまで、プロトタイプをさまざま作り始めることになるでしょう!また、『Is This Seat Taken?』向けに取り組んでいることもありますが、まだ詳しくはお伝えできません。
『Cast n Chill』
PC(Steam)/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch

──自己紹介と『Cast n Chill』の紹介をお願いします。
Wombat Brawlerのクリエイティブディレクター兼プロデューサーのMark Whiteです。『Cast n Chill』は、穏やかな湖や川、海を巡る、心地よい放置系(でありアクティブにも楽しめる)釣りゲームです。忠実な相棒と共に、珍しい魚を釣っては装備をアップグレードしながら、伝説級の獲物を釣り上げることを目指します。
──本作はSteamのユーザーレビューにて現時点で好評率95%を得ています。こうした成功はリリース前に想像していましたか。そして高評価を得られたのはなぜだと思いますか。
『Cast n Chill』は、Steamにて(直近30日間のユーザーレビューでは)好評率98%となっていますが、私たちのこぢんまりとした釣りゲームにとっては、率直に言って期待を大きく上回る結果です。これほど大きな反響を呼んだのは、プレイヤーが心からリラックスできる空間を提供できたからだと思っています。せかせかしていてストレスが溜まりがちがちな現代社会において、人はゆったり過ごせる体験を求めています。『Cast n Chill』は、そのビジュアルやサウンドデザイン、楽曲、そして全体的なペース配分を通じてプレイヤーをくつろがせ、まるで禅のような瞑想状態へと誘う作品なのです。
──Steamで成功したことで、生活や心境面で変化はありましたか。
じっくり腰を据えて振り返る時間がまだ取れていない、というのが正直なところです。コミュニティから要望のあった新たな機能やコンテンツの追加にずっと取り組んでいるので。年明けには、自分でも『Cast n Chill』をプレイして、少しリラックスできる時間を持つことができればと思っています。
──2025年にリリースされた他社のゲームで、もっとも刺激を受けたタイトルを教えてください。
『Rusty’s Retirement』ですね。リリースされたのは2024年半ばでしたが、私は2025年初頭になってようやくプレイできたのです。心からリラックスできる数少ないゲームのひとつであり、『Cast n Chill』の開発中にはとてもたくさんのインスピレーションを得ることができました。
また同作については、特に継続的なアップデートや作品への気配りといった、開発者の献身的な姿勢に本当に感銘を受けています。そうした姿勢こそが、この作品がこれほどまでに高い評価を得ている大きな理由だと思います。
──2026年の活動について計画をお教えいただけますか。
まずはビッグサプライズとして、ローカル協力プレイおよびSteamのRemote Play Together機能への対応をおこなう無料アップデートを明日配信します(*12月19日に配信)。プレイヤー同士が隣り合って静かに釣りをするもよし、ちょっとした競争を楽しむもよし。『Cast n Chill』は、仲間と一緒だとさらに楽しい体験になるでしょう。
2026年には、「Eastern Winds」と題した有料DLCの配信を計画しています。これはアジア風の世界を舞台にする拡張パックで、新たな釣り場や魚種、ボート、釣り竿、そして魚を記録する新しい手帳が追加されます。
また、『Cast n Chill』はコンソールにも進出し、Nintendo Switch 2/Nintendo Switch版が間もなくリリースされます(*12月18日に配信)。これは、本作をより幅広い人々に届けるための重要なステップとなります。もちろんローカル協力プレイにも対応しており、近く配信するパッチにておすそわけ通信にも対応させる予定です。
本記事は、今回の高評価インディーゲームアンケート企画の欧米編である。日本編・中国編記事は後日公開。なお、回答いただいた各スタジオのタイトルは、いずれもSteamにて配信中だ。一部はコンソールなどにも展開されており、興味のある作品があればチェックしてみてはいかがだろうか。
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