ニンテンドークラシックミニが買えない時は何を買う?
11月10日発売のニンテンドークラシックミニ。爆発的ヒットで市場在庫は尽き、転売価格が横行する話題の品だ。メーカー希望小売価格での購入はほぼ不可能であったが、12月下旬に再販され家電量販店でも姿を見るようになった。発売当初に探していた方は今一度探してみてほしい。再販分を入手できなくとも安心されたし。収録タイトルの一部は3DSバーチャルコンソールでもプレイできる。また、人気ジャンルについては、ジャンルの最新作を楽しむという手もある。
それでは、購入予算を仮に6000円として、どのゲームを買えばよいだろうか。アクションゲームに絞ると、2016年は実り豊かな年だ。『ゼルダの伝説』、『メトロイド』、『スーパーマリオブラザーズ』を原典とするジャンルで秀でたゲームが発売した。ニンテンドークラシックミニ収録作すべては網羅できないが、次に紹介する3作で満足いただけるだろう。ファミコン時代を駆け抜けたゲーマーにも手にとってもらいたい。過去と現在を比べ、ゲーム開発技術の進歩とジャンルの普遍性を体験する機会になろう。
Hyper Light Drifter
価格: 1980円
『Hyper Light Drifter』は『ゼルダの伝説』の直系である。『聖剣伝説-ファイナルファンタジー外伝』を始めとする数多くのフォロワーは、プレイヤーの旅路を誘導するストーリー面を強化してきた。本作には文字によるストーリーはないが、想像力をかき立てるピクセルアートで、「説明書に書かれていない背景」を想像するFC時代のゲーム独特の味わいを復刻している。戦闘・ギミック、そして探索に特化した高いアクション性は、このジャンルに食傷気味のプレイヤーを満足させるだろう。
Owlboy
2480円
ジャンプアクションに捕らわれない主人公と、解放感あるステージ構成で、画面を大きく使ったダイナミックなアクションが目新しい。そんな『Owlboy』をメトロイド系ジャンルと呼ぶには少々抵抗があるかもしれない。それでも、『メトロイド』にある未知のフィールドを探索する「冒険」は色濃く受けつがれている。適度なアクション難度かつ多彩なシチュエーション。アクションパートと結びついた巧みなストーリーテリング。そして、SFC時代を想起する丁寧なピクセルアートがプレイヤーをやさしく迎えてくれる。
N++
1480円
『スーパーマリオブラザーズ』シリーズをはじめ、足場や敵をジャンプで飛び越える横視点の2Dアクションゲームは、アクションゲームの王者だ。ファミコンの歴史は2Dアクションゲームの歴史でもある。子供の頃からパッドさばきに磨きをかけたゲーマーは、ストイックなまでにジャンプアクションを追求した『N++』を手にするべきだろう。超高難度ステージに挑み続ける反復が、ミニマルなヴィジュアルとBGMで増幅し、禅めいたトリップ感覚へと昇華する。ちなみに、2017年初頭のアップデートでステージを倍増すると告知がある。
こうした予算限定ゲームパックを考えると、お年玉をもらっていた子供時代を想起する。成人してから久しい「ゲームを買うゲーム」は、 本来なら価格を問わずゲームを評価するGame of the Yearに、新たな視点をもたらしてくれた。2017年1月1日、1万円あればどのようなゲーム体験が得られるだろうか?そうして名を挙げたゲームタイトルは、2016年の総括となろう。次章で、筆者が主戦場とするジャンルから上限1万円の「ゲームパック」を紹介する。なお、定価で計上したゆえ、Steamホリデーセールなどの機会を使えば多少余るだろう。そのときは、ピザとコーラをデリバリーするといい。
宇宙じゃないとダメな人への宇宙ゲーム
宇宙ゲームは人類に残されたフロンティアのひとつだ。メジャージャンルではないが、熱狂的なファン層と彼らの期待に応じたメーカーの長期サポートで、コアな人気を博している。2016年の注目作は、以前からサービス開始し日々拡張し続ける『Elete: Dangerous』。同じく宇宙MMOの代表作であり今年F2P化した『EVE ONLINE』。そして先日の大型アップデートで新生の一歩を踏み出した『No Man’s Sky』。だが、本章ではそれらと違うプレイフィールのゲームを紹介する。
Stellaris+Leviathans Story Pack
3980円+980円
『Stellaris』の主役はずばり銀河史だ。4Xゲームの特性で生成された、星々の覇権を競う群雄劇に身を投じ、数々のSFコンテンツを心ゆくまで楽しんでほしい。弊誌レビューでお伝えしたとおり、発売当初は中盤以降の作業感がプレイ体験に影を落としていたが、発売後に実施した3回の無償アップデートと拡張『Leviathans Story Pack』で大きく改善した。今後の更新も中盤以降のストーリー面を中核に、様々なスペースロマンの実装を計画している。
Fractured Space+Armada Pack
基本無料+3980円
宇宙戦艦MOBA『Fractured Space』は、『World of Tanks』と『Legends of Legends』から得たインスピレーションを出発点とし、宇宙とSFにこだわることでエポックメイキングを達成した。精査は弊誌レビューと、Redbull誌の開発元インタビューを読まれたし。12月14日のPhase 2アップデートで、新規プレイヤーのへのサポート、プレイ報酬を大きく改善した。レビューで指摘した戦艦選択のドラフト制とランクマッチは、2017年初期に実装予定とあるので期待されたし。対人ゲームゆえ要する技術・知識は多いが、宇宙戦艦の艦長になりたいゲーマーには学びも遊びとなるだろう。基本無料はデモ版のようなもので、課金コンテンツ『Armada Pack』がゲーム価格だと考えて差し支えない。
Sid Meyer’s Civilization セット
眠ることなく「もう1ターン」を楽しみたい、だって? それなら『Sid Meyer’s Civilization VI』をおいて他にない。筆者は他にいくつか4Xゲームをたしなんでいるが、シヴィライゼーションが出たあとにあげるタイトルは思いつかない。オーケー、いいたいことは分かる。また「未完成品」だ。だが、今作は未完成の粗があっても楽しい、新作感に満ちたものである。ローンチ版はUIやAIの練磨に不足はあったが、11月、12月のアップデートで改善が見られた。購入を再検討するには良い機会だ。
Sid Meyer’s Civilization VI
7000円
The Game Awards 2016を始め、海外・国内メディアで高い評価にある。2010年代における4Xゲームの記念碑というべき本作は、単に過去作の延長したものではない。基幹にかかわるゲーム要素を大胆に新調し、4Xゲームに新しいプレイ体験をもたらした。その結果、他作品とくらべゲーム中の各要素のシナジーが複雑となったが、AAAならではのコンテンツ品質で理解を大きく助けている。。ゲームアドバイザーの不足が非効率なゲームプレイそしてプレイテンポの鈍化を招き、AIライバル文明はそれに輪をかけて未成熟だが、これら不満点はCivilizationのネームバリューが大きすぎるゆえの評価だろう。はっきりいえば、Civシリーズでもっともマシな「無印」である。拡張パックを待つ戦略は本作をもって陳腐化した。
銃・病原菌・鉄
文庫版上下各972円
Civシリーズは史実を元にした歴史コンテンツが魅力だ。そのうち、古代時代以降の歴史については高校の世界史にある。また、叙事詩、演劇を始め映画やドラマ、マンガといったエンターテインメントで多くの人に親しまれている。しかし、プレイヤーが最初に体験する太古時代については余り知られていない。「畜産」「陶器」といった最序盤の技術ツリーについての背景を知れば、人類の夜明けがより楽しめるものとなろう。
そこで、ゲームを楽しむための「参考文献」に『銃・病原菌・鉄』を推薦する。本書はスペインとアステカの衝突という、Civでおなじみのシチュエーションを疑問の出発点として、そこに至った文明の発展を考古学をはじめとする幅広い学術的視点で解き明かすポピュラーサイセンスである。多岐にわたる分野を俯瞰視するゆえ知識の迷子になるかもしれないが、Civシリーズのプレイ体験を有するゲーマーなら、画面を思い浮かべながら読破できるだろう。
1万円もの大金を自由にできるのか?
現実は非情である。読者の多くはお年玉を払う側であり、そうでなくとも年末年始は何かと物入りだ。生活水準の差はあれど、自由に使える1万円とは意外にも大金である。思わぬ出費やガチャ爆死などで懐がさびしいときは、財布にやさしいゲームの出番だ。F2Pゲームは数多くあるが、その中でもe-Sports性に留意したMOBAジャンルはP2W要素が薄いので気軽に楽しめるだろう。本年リリースの新機軸MOBAとして、本稿で紹介した『Fractured Space』と、ターンベースMOBA『Atlas Reactor』をあげておく。最後に、課金要素がある基本無料ゲームではなく、本当に無料で広告表示もない、イチオシのフリーゲームを紹介する。
Numbo Jumbo
無料
Mumbo Jumbo(ちんぷんかんぷん)をもじり、大阪人を想起する洒落たタイトル『Numbo Jumbo』は、Googleがサンフランシスコで開催したGoogle Play Indie Games Festivalの受賞作。数字が書かれた玉を指でなぞり、足し算をつくって玉を消す消しモノパズルだ。効果音や画面演出はシンプルながら心地よく、タッチパネルの操作感もあいまり、プレイフィールは快い。ゲームモードは4種類あり、思考速度を競うタイムアタックや、熟考を要する手数制と、プレイヤーにあった遊び方を選べるのが愉快だ。表層面は優等生だが、プレイ体験に加えた「ひねり」がプレイヤーを熱くさせる。ゲームの累計得点を消費し、ヒント、数の変更、シャッフルといったアイテムを購入できるのだ。ズルといえば悪く聞こえるが、ゲームシステムにあるのだから気前良い。となると、アイテムを大量に抱え込んでのスコアアタックに挑むのがゲーマーのサガ。そこには、鉄火場めいた危ない楽しさが隠れている。