AUTOMATON Awards 2016
「ユーザーコミュニティ賞」
どうして人間は娯楽として性を謳歌するのか。どうして人間は陰茎に大きさを求めるのか。どうして人間は多種多様な髪型を生み出すのか。どうして人間はきれいなおねえさんが好きなのか。どうしてゲーマーは必ずしも生殖には結びつかないリビドーへの回帰をポルノや風俗ではなく、『The Elder Scrolls』や『Fallout』シリーズのModに求めるのか。そこには自身のアバターを仮想空間の箱庭で自由に遊ばせるオープンワールドゲームならではのロールプレイ要素と、リアリティを追体験する没入感への強い欲望が入り混じっている。Mod文化は底なしの沼であると同時に新世界への扉でもある。
そこで2016年を締めくくるユーザーコミュニティ賞として、『Fallout 4』および『The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition』(以下、Skyrim SE)で、今年から家庭用ゲーム機向けにもModサポートに対応したBethesda Softworks(以下、Bethesda)を讃えたい。その一環として本稿は、Mod制作に情熱を注ぐユーザーたちの楽園とも言える投稿サイトNexusの活用方法について説明すると共に、筆者の独断と偏見と性癖に塗れた「これなしでは生きていけないベストMod 5選 Skyrim SE編」を紹介する。なお、プラットフォーム別の容量制限や外部アセットを多分に含んでいるという観点から、あくまでもPC版にフォーカスした内容であることをあらかじめ注記しておく。
家庭用ゲーム機のModサポートについて
広義でのModは、PCユーザーの間で20年以上前から親しまれてきたゲームデータの改造全般を指す。Bethesdaは公式ツール「Creation Kit」を無償で提供することで、キャラクターやアイテム、ゲーム内エリアなど、あらゆるコンテンツをユーザーが自由に制作、コミュニティ内でシェアできるサポートに対応している。
家庭用プラットフォームにおけるMod対応についても以前から議論されていたが、Mod導入による安全性が確保できない等の理由でこれまで見送られてきた経緯がある。今年4月、『Fallout 4』のModサポートがPC向けに先行解禁されたことを皮切りに、翌月にはXbox One向けにも実装された。当初はPlayStation 4向けにも6月から対応する予定だったが、ベータテストの実施を前に複数の技術的な課題に直面。再評価の対象として、当時は事実上の無期限延期が決定した。
今年10月に発売した『Skyrim SE』についても、6月の「E3 2016」で発表された際にすでに家庭用プラットフォーム向けのModサポートが決まっていた。しかし、9月に入ってから現状のMod仕様ではソニー側が容認しない意向であることが報告され、PlayStation 4での実現は事実上のお蔵入りとなっていた。Modによってはユーザーがスクリプトに直接干渉するケースも想定されるため、メーカー側が導入による安全性を保証できないからという理由が考えられた。こうした背景から、一時はPlayStation 4におけるMod対応は絶望的と思われたが、10月はじめにBethesdaがソニーと最終合意に至ったことを報告。ついに『Fallout 4』および『Skyrim SE』におけるPlayStation 4向けのModサポートが現実のものとなった。
家庭用プラットフォームでのMod体験を待ち望んでいたユーザーにとって朗報であることは間違いないが、注意したいのはコンソール向けModサポートの技術的な制限である。Bethesda.netのアカウントさえ作成すればゲーム内のメニュー画面から簡単に導入できる一方で、Xbox Oneは5GB、PlayStation 4は1GBまでしかModに容量を割けない。さらに特筆すべきは、PlayStation 4にいたっては外部アセットを一切利用できない点だ。外部アセットとは、本来ゲーム内で使用されていないデータのこと。たとえば、キャラクターを美肌に変えたり、オブジェクトのテクスチャをより高画質にしたりと、グラフィック全般の改善Modは全て外部アセットを利用している。新しいアニメーションやスクリプトを追加する際も同様である。つまるところ、PCユーザーを虜にする“あんなことやこんなこと”が、コンソール版では十分に体験できないというわけだ。
PCゲームのMod世界へようこそ
ここからはPC版『Skyrim SE』へのMod導入について記述する。すでに“Mod廃人”と化しているユーザーにはあらためて説明は不要だろうが、ゲームにModを入れる方法は複数ある。主な選択肢は、ファイルをダウンロードして直接ゲームディレクトリにマニュアルでコピーする方法、ゲーム内のメニュー画面から「MOD」を選択してBethesda.net経由でダウンロードする方法、Mod管理ツール「Nexus Mod Manager」(以下、NMM)をインストールしてコミュニティサイトNexusから導入する方法。ほかにもゲームに特化したマネジメントツールは存在するが、話がややこしくなるので今回は割愛する。マニュアルでの導入はModの数が増えるほど管理が煩わしくなるので絶対におすすめしない。また、公式サイトからの導入に関しても、全てのコンテンツを利用できるわけではないのでベストとは言えない。たとえば、エロいのは無理。
したがって、これからMod導入の沼に片足を突っ込みたいけれど何から始めればいいか分からないというPCユーザーは、まずNexusへアクセスして無料でユーザー登録した後、必須ツールとも言えるNMMをインストールしよう。後は世界中のMod制作者が投稿した作品から好きなものを選んで、ファイルタブから“Download with Manager”をクリックすれば自動的にNMMへカテゴリ別に導入してくれる。ダウンロードしたModをアクティベートするのも、NMM内のリストから選択してクリック一つで完了だ。ここで拡張子「.esp」や「.esm」のプラグインファイルをゲームが読み込む順番に注意したい。これらはゲームの設定を書き換えたりデータを保存する際に使用されるもので、バニラ(Modを使用していない状態のこと)のデータやダウンロードコンテンツにも存在する。つまり、Modでゲーム内容を改変しようにも、本編データより後に読み込まなければ反映されないこともあるということだ。
自分でModを制作しているユーザーや十分に精通した人間ならどのファイルが先か後かはある程度把握できるが、Modの数が増えれば増えるほど何が入っているのかこんがらがってくるもの。ましてや初心者には何のことやらサッパリなはずだ。そこでModのロード順を自動的に最適化してくれる外部ツール「Load Order Optimisation Tool」(通称、LOOT)の導入が推奨される。技術的なことがよく分からない人でも、競合するModを無造作に何百と放り込むなど、よほどのことがない限りは正しくゲームが起動できるはずだ。このほか、PC版Modユーザーにとっての必須アイテムには、ゲームスクリプトを拡張するツール「Script Extender」(Fallout 3やNVの場合は通称FOSE、Skyrimの場合は通称SKSE)も挙げられるが、これらは元々32bitの環境向けに開発されたものであり、記事執筆時点ではまだ64bitで動作する『Skyrim SE』には対応していない。よって本稿ではSKSEが不要なModのみを取り扱う。
日常という究極の没入感を求めて
前置きが長くなってしまったが、いよいよ2016年ユーザーコミュニティ賞として、筆者の独断と偏見と性癖にまみれた「これなしでは生きていけないベストMod 5選 Skyrim SE編」の本題に入りたい。繰り返しになるが、おそらく“Mod廃人”ならすでに全部入れているだろうし、わざわざ大袈裟に紹介するまでもないだろう。あくまでもPC版のMod文化に触れたことがないユーザーに向けて、Mod制作者たちによる変態的な職人芸の片鱗と、それに魅了された“紳士淑女”たちのこだわりに触れてもらうことを念頭に置いているので、あらかじめご理解願いたい。
1. 全裸Mod
鉄板中の鉄板。Mod道の入り口。全ての始まり。おそらく導入していないPC版ユーザーはいないのではないだろうか。通常、キャラクターの装備を全て脱がせると、下着という名のボロ布を身にまとっているだけの状態になる。いわゆる“全裸Mod”は、全てのキャラクターをノーパン・ノーブラにして女体の神秘あるいは男根の哲学を追求しようというもの。誰もが最初に思いつくことであり、究極のリアリティを追求する歴史は長い。『The Elder Scrolls』と『Fallout』の両シリーズにおいて不動の人気を誇り、中には自分の性器をモデルにしてテクスチャを再現する熱心なMod制作者が現れるほどだ。その真髄は単なる乳房や膣、肛門、陰茎の造形に留まらず、人体を芸術たらしめる曲線美や、滑らかな肌の質感を再現するテクスチャにある。
もっとも代表的な全裸Modには、女性用なら「UNP Female Body Renewal – A female face and body replacer」(通称、UNP系ボディ)、男性用なら「Better Males Remesh for Skyrim SE」が挙げられる。女性体型Modは他にも、UNP系ボディと並ぶ定番の作品「Caliente’s Beautiful Bodies Edition -CBBE-」(通称、CBBE系ボディ)があるが、こちらは記事執筆時点で制作者がまだ『Skyrim SE』に対応させていないので、導入するには手動によるダウンロードとデータの置き換えが必要になる。おっぱいの大きさが選べるのはもちろん、4Kテクスチャのオプションもある。ちなみに上記のUNP系ボディModは、無印版で好評だった複数の改変Modを『Skyrim SE』用に1つのパッケージとしてまとめたもので、全ての女性キャラクターの顔面を整える(肌の質感は人間族とエルフ族のみで、カジートとアルゴニアンは造形のみ)ほか、既存のバニラ装備もModの体型に合わせて置き換えてくれる優れものだ。
ちなみに、「XP32 Maximum Skeleton Special Extended – XPMSSE」の導入でスケルトンファイル(キャラクターの骨格を構成する3Dデータ、メッシュやテクスチャと組み合わせてキャラクターを表現する)を書き換えれば、「Fores New Idles in Skyrim」といったアニメーション追加Modを使って“乳揺れ”や“尻揺れ”を再現できる。無印版では、対応した全裸Modや装備Modによって、ジャンプしたり走ったりするだけでおっぱいをたゆんたゆんと揺らすことも可能だったが、前述したスクリプト拡張ツールSKSEがまだ『Skyrim SE』に対応していないので、本作ではもうしばらくお預けだ。このように女体ばかりが優遇されているが、筆者は上記の男性用Modを何よりも評価したい。体毛の量を好みに合わせて細かく調整できるほか、なんと通常サイズの陰茎に加えて「こんなの絶対入らない」と思える大艦巨砲主義のオプションがある。しかも、アップデートファイルにより常時勃起した状態にもできる。死体の股間もギンギンである。
2. 髪型や眼球を大量に追加するMod
バニラの髪型はバリエーションに乏しく、瞳はまるで死んだ魚のようだ。そこで導入したいのが、オプションファイルと合わせて合計300種類以上のセクシーなヘアスタイルを追加する「ApachiiSkyHair SSE」と、バニラの瞳のリテクスチャに加えて200種類ものバリエーションを新たに追加する「TRUE EYES SE」だ。この髪型Modは、『The Sims』や『The Witcher』シリーズ、前作『The Elder Scrolls IV: Oblivion』からモデルを転用したもので、メンズにも250種類以上のスタイルが用意されている。また、頭装備を身に着けた時にボウズになってしまう仕様を防ぐために、併せて装備できるウィッグの追加も可能なのが特徴だ。ちなみに、女性用のヘアスタイルの中には、今年ルイ・ヴィトンのファッションアンバサダーに選ばれたファイナルファンタジーXIII』の女主人公ライトニングさんの髪型もある。これらなくしてキャラクターメイキングは始まらない。
3. 顔面オーバーホールMod
イケメン・美女であふれる国産RPGに慣れたユーザーなら誰しも『The Elder Scrolls』シリーズを初めてプレイした際、キャラクターメイキングのプリセットやNPCの顔面の歪さに驚愕したことだろう。もちろん、見るものに恐怖さえ感じさせるあの形相の数々こそBethesda印の持ち味とも言えるが、剣と魔法の世界を舞台にしたファンタジーだからこそ、住人の外見もファンタスティックでなければならないという人々の想いは世界共通である。そこで登場したのが、いわゆるキャラクターの総合美化Modだ。全種族の顔面を整形すると共に、皮膚はもちろん歯や眉毛、ヒゲのテクスチャも置き換えてくれる。また、メイクや傷跡、顔の汚れなども高解像度になる。有名どころは「Total Character Makeover」と「WICO – Windsong Immersive Character Overhaul」。それぞれ持ち味が異なるので好みに合わせて選ぶといい。顔面オーバーホールModは、それ一つで世界ががらっと変わるほどのパワーを秘めている。
4. 特定NPC・コンパニオン・プレイヤーの嫁を超絶美人にするMod
その名も美人シリーズ。無印版で絶大な支持を集めた同じ作者によるMod「Bijin NPC’s」「Bijin Warmaidens」「Bijin Wives」「Seranaholic」の総称だ。特定の女性NPCは、ヴェックス、サファイア、イリレス、リッケ、フルダ、リセッテ、カルロッタ、カーリア、トニリア、エイドリアン、インガン、メイビン、ジャルデュル、若きイドグロッドが対象。女性コンパニオンは、私兵として仲間にできるリディア、ジョディス、イオナ、ラッヤ、傭兵のジェナッサ、同胞団のアエラ、リア、ンジャダ・ストーンアーム、ウィンターホールド大学のブレリナ・マリオン、ドーンガードからイングヤルドとベレヴァル、オーク要塞のボルガクとユーゴー、ソルスセイム島のフリアなど総勢22名。そして結婚可能な女性NPCとして、カミラ、イソルダ、シルグジャ、テンバ、ターリエ。「Seranaholic」は名前のとおりヴァンパイアのセラーナを超べっぴんさんに変える。
前述したように、これらは全て無印向けに制作されたModであり、記事執筆現在の段階では『Skyrim SE』には直接対応していない。しかし、別のユーザーが原作者から許可を得て統合した「Bijin All in One-SSE」というModのおかげで、容易に移植できるようになった。このModにはプラグインのESPファイルしか含まれておらず、美人シリーズのメッシュやテクスチャといったデータ自体は無印版のNexusページからマニュアルでダウンロードする必要がある。4つの圧縮ファイルを揃えたら、NMM内から開けるMODディレクトリにコピーした後、「Unassigned」カテゴリからアクティベート。プラグインの管理画面で個別のESPファイルからチェックを外すか、ファイル自体を削除したら上記のオール・イン・ワンESPを導入するだけで完了だ。ちなみに美人シリーズのファイルはNPCはごとに独立しているため、他のModに依存することがない。体型に関しても前述した定番のModを含めて、好みのものを選べばよい。
5. 本番ができるMod
上記全てのModは、まさにこの機能を追加するための布石である。すなわちNPCとセックスするための前戯とも言える。売春Mod「AP Skyrim」は、無印版で流行した「Animated Prostitution – Skyrim – WIP」を別作者が許可を得て『Skyrim SE』用にインポートしたもの。このModこそゲーマーに秘めた最大の謎であり、仮想空間における性行為に異常なまでの執着を示す現代人の神秘なのだ。驚いたことにオリジナルのファイルは、2012年の投稿から現在までのおよそ4年間で112万人以上のユニークユーザーにダウンロードされており、9万件を超えるEndorsements(Nexusサイト内でModの人気度を表す投票数のこと)を獲得している。ちなみに『Fallout』シリーズにも同様のModが存在する。いまやインターネット上でいくらでもポルノ動画が観られるご時世にあって、人々は何故これほどまでにゲームアセットを使ってセックスを再現したがるのか。しかもModの競合や不具合によるクラッシュと格闘してまでだ。
それは筆者を含め、ユーザーの多くが単なる性処理の目的でアダルトModを導入しているわけではない証なのかもしれない。たとえば、『The Witcher 3』ではプレイヤーが主人公ゲラルトとなって3人のヒロインを取っ替え引っ替え抱ける。方々の売春宿では娼婦相手にヤリたい放題だ。開発者は決してゲーム自体をポルノコンテンツにするためにセックスシーンを収録したのではないだろう。多くの映画も同様だ。それでは何故なのか。答えは冒頭で述べたように、まさにゲームの中にリアリティをひたすら追求した結果なのではないだろうか。それは没入感の探求にほかならない。以前、『Fallout 4』でトイレットペーパーの向きを変更するModが話題になった際、常識という名の没入感について論じたように、性行為が日常の一部である人間にとって「Animated Prostitution」のようなModは没入感そのものと言える。オープンワールドの醍醐味は自分の分身を仮想空間の箱庭で自由に遊ばせることでもあるからだ。
終わりに
Modの種類は数あれど、その使用目的は千姿万態。ここまでアダルトコンテンツを含んだModを多く紹介してきたが、究極的には全てが没入感への限りない挑戦であり、リアリティの追求という行為そのものに帰結する。人々がキャラクターの裸体や性器を精巧に描写することにこだわるのも、髪型や瞳にバリエーションや色彩を求めるのも、ゲーム世界の全住人を自分好みに作り変えるのも、そして仮想空間での性行為に必ずしも生殖には結びつかないリビドーへの回帰を見出すのも、全てはリアリティを追体験する上での没入感を渇望して止まないからだ。もちろん、こうした楽しみ方だけがMod文化の全てではないので、ユーザーそれぞれの遊び方でModライフを満喫して欲しい。ちなみに、風光明媚な景色や美人キャラクターを求めてスクリーンショットというアートの世界を極めるなら、ビジュアル効果をコレクションしたツール「ENB」が欠かせない。アンチエイリアスや被写界深度、照明効果など、多岐にわたってオーバーホールすることによって、完全なる新世界への扉が開かれるだろう。