農業自動化プログラミングゲーム『農家は Replace() されました』、正式リリース後に売上ペースがなんと「3万9000%アップ」との推計。“小難しさ”を強みに変える戦略で
GameDiscoverCoは『農家は Replace() されました』の成功の背景などについて報じている。

インディー開発者Timon Herzog氏が手がけた農業自動化プログラミングゲーム『農家は Replace() されました』。本作は、PC(Steam)での早期アクセス配信開始当時と、正式リリース後の販売収益を比較すると、390倍もアップしたと試算されているという。ゲーム開発者向けマーケティング情報などを提供するGameDiscoverCoが、この成功の背景などについて報じている。
『農家は Replace() されました(The Farmer Was Replaced)』は、ドローンを使って農業をおこなうシミュレーションゲームだ。ドローンには、農作業におけるさまざまな仕事を任せることができ、農園から得た資源をもとに、新たな技術をアンロック可能。そして、Pythonに似たプログラミング言語を使ってプレイヤー自身がドローンの挙動をプログラムし、農作業を自動化させるゲームプレイが大きな特徴となっている。

本作は、PC(Steam)向けに2023年2月に早期アクセス配信が開始され、先日10月10日に正式リリースされた。同時に日本語表示に対応している。本作は、Steamのユーザーレビューにて本稿執筆時点で約4000件のうち95%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得するなど、非常に高く評価されている。また売れ行きも好調のようだが、特に正式リリース後の伸びが顕著だという。
GameDiscoverCoの試算によると、2023年の早期アクセス配信開始から30日間の本作の売り上げはおよそ4000ドル(約61万円)であった一方、先日の正式リリースからこれまでには約165万ドル(約2億5000万円)を記録。同様の比較において、2025年に正式リリースされたタイトルの中で最大の上げ幅を叩き出したそうだ。
本作の販売元Metarootが同メディアに共有した情報によると、本作の売り上げ本数は現時点で約42万本とのこと。ユーザーを国別に見ると、米国が21%でもっとも多く、次いで中国、ドイツ、日本、ロシア、ブラジル、英国などと続く。日本のユーザーの割合は7%とされている。

Metarootによると、本作は発売後1年以上は売り上げが低迷していたそうだ。成功に転じたきっかけのひとつには、複数の著名YouTuberにプレイされたことがあるという。ドローンをプログラムして農作業を自動化させるという本作のコンセプトは強力なフックになる一方で、プレイにはプログラミングスキルが求められるハードルがあり、コードを間違えるとドローンが暴走することも。ただ、それがむしろYouTuberらにとっては魅力的に映ったようだ。結果として本作は思いがけず“バズる”ことになり、今年中頃までにおよそ14万本を売り上げたという。
そして同社は、正式リリースに向けて積極的な施策を展開した。まず、Steamストアページ上のゲーム紹介文をすべて見直し、Python風のプログラミングやその最適化要素を前面に押し出すことにしたという。また、ゲーム内はもともと英語にのみ対応していたが、日本語を含む10言語へのローカライズを実施。難解なゲームであるため、少しでも取っつきやすいようにトレイラーやスクリーンショットも翻訳して、ストアページに掲載したそうだ。
さらに、似たジャンルの作品をプレイしたことのある約1万人ものインフルエンサーにコンタクトを取り、そのうち1000人にSteamキーを配布。数多くのプレイ動画が投稿され、特にショート動画は再生数がよく伸びたという。また、中国のSNS小紅書での活動も開始し、それによって同国内での売り上げが大幅に増加したとのこと。
本作は、もともと魅力的なゲームではあったが、ニッチなジャンルの作品である。また、先述したように早期アクセス配信中の宣伝は十分ではなく、セールもまったくおこなわれなかった。そのためGameDiscoverCoは、YouTuberのプレイをきっかけとしたバイラル化による成功はほぼ偶然の産物であったと指摘。ただ、販売元Metarootはそのきっかけを見逃さず、正式リリースに向けて各種施策を展開したことで、さらに大きな成功を掴むことができたようだ。
『農家は Replace() されました』は、PC(Steam)向けに配信中だ。


