新作オープンワールドサバイバル『山外山(ヤマソト)』先行プレイ感想。祈れば雨が降り、柱を壊せばやぐらが崩れる、自然やそこにあるものが作用しあう化学オープンワールド

海に浮かぶ島を舞台にした30分のデモの中には、神話世界と物理演算が織りなす驚きが凝縮されていた。『山外山』の世界では、自然そのものが最大の武器であり、創造の道具でもある。

雨を祈れば大地が潤い、伸びた植物が道を切り開く。木を伐り橋を架け、やぐらは土台を壊せば崩れ落ちる……古代の神々が支配していた神話の世界に、もし現実の物理法則が適用されたらどうなるのか。中国・CyancookGamesが開発中の新作『山外山(ヤマソト)』は、そんな“あり得ない仮定”を体験に変えるサバイバルクラフトゲームである。対応プラットフォームはPC(Steam)。

今回、弊誌は東京ゲームショウ2025にて『山外山』を試遊する機会に恵まれた。海に浮かぶ島を舞台にした30分のデモの中には、神話世界と物理演算が織りなす驚きが凝縮されていた。『山外山』の世界では、自然そのものが最大の武器であり、創造の道具でもある。ひらめきをそのまま実行することができ、思いもよらない結果を返してくる――そんな“遊び心あふれる実験場”のような体験だった。

本稿では、環境利用とアプローチの多彩さを体感した『山外山』試遊の感想をお届けする。

“観察”すると、世界の理が見えてくる

山外山』はオープンワールドサバイバルクラフトゲームだ。ソロプレイおよびオンライン協力プレイに対応する。舞台となるのは、東方のエキゾチックな雰囲気を持つファンタジー世界。プレイヤーは神々との戦争で崩壊した文明の末裔として、クラフト・戦闘・建築を繰り返し、天災や“巨獣”、古の神々に対抗すべく文明を創り直していく。

最初に感じたのは、“自然”がプレイヤーの最大の武器になるということだった。茨が道をふさいでいれば火で焼き払ってもいいし、トランポリンのようなキノコに乗れば崖を飛び越えられる。やぐらの柱を壊せば上の構造物がガラガラと崩れ、上にいた敵兵を巻き込む。自然の法則がゲームシステムに直結しており、ほぼすべての行動に結果が返ってくるのだ。

とくに印象的だったのは、「観察」が攻略の起点になる設計だ。本作では特定のキーを押して周囲のオブジェクトを「観察」すると、用途や相互作用のヒントが浮かび上がる。茨が燃えること、球根が水を欲していること。そうした自然現象を理解することそのものが、プレイヤーのスキルとなる。観察し、仮説を立て、実行する――まるで神話世界の法則を、科学者として検証しているような感覚だった。

この構造により、道筋は常に複数ある。火で焼くのか、迂回して登るのか、風を使って飛ぶのか。単に自由度が高いのではなく、「この世界の理を自分なりに読み解いて進む」こと自体が、遊びの核心になっている。

ユニークな「合成」システムが生む、“実験”の連鎖

本作の体験は破壊や探索だけでは終わらない。『山外山』では、素材を組み合わせて新たな道具を生み出す「合成」システムが存在する。手持ちの木材にフィールド上の植物などを掛け合わせると、思いもよらないアイテムができあがる。たとえば「爆裂の実」を合成すれば即席の爆弾に、「膨れキノコ」を組み合わせれば風を起こすアイテムに変化する。単なる木の実を付ければ、“ジャム”をまき散らせるなど、結果のユニークさも際立っている。

UIも直感的で、前述の「観察」で用途を確認し、ワンボタンですぐに合成が完了する。「どんな素材にも意味がある」という信頼感があり、触れることそのものが楽しい。こうした細部の設計は、プレイヤーの好奇心を促進するための工夫として洗練されていた。

とにかく次から次へと試したくなる。素材ごとに反応が異なり、失敗しても何かしらの結果が出る。クラフトというより、実験に近い。何を合成しても結果が返ってくることで、プレイヤーの想像力が途切れない。成功すれば快感、失敗すれば発見。結果がどちらに転んでも学びになる設計だ。試遊では木材に数種類の素材を合成することができたが、製品版では合成用の「施設」を用いた複雑な合成もできるそうで、クラフト部分の奥深さには期待したい。

さらに、試遊では一部の建築要素も確認できた。木材を集めて橋をかけたり、遮蔽物を設置して敵の攻撃を防いだり。本編ではより本格的な拠点建築が可能になるという。また、採取した食材を料理して回復効果を得るなど、サバイバル的な生活要素も導入されている。単に戦って消費するだけの世界ではなく、“生きるために創造する世界”が広がっていた。

創造と実験の循環は、プレイヤーに「世界と対話している」という実感を与える。ただものを作るのではなく、世界がどう反応するかを観察しながら手を動かす。その過程にこそ、『山外山』の真価がある。

環境が武器になる、クリエイティブな戦闘

次に体験したのは戦闘だ。斧や弓を用いて複数人で襲い掛かる敵は容赦なく、攻撃は重い。攻撃と回避の駆け引きはソウルライクな手応えで、緊張感がある。しかし『山外山』の戦い方はそれだけではない。戦場のすべてが武器になるのだ。

木製のやぐらに火の矢で着火し、延焼させて敵を燃やす。坂の上から岩を転がして、敵の拠点ごと破壊する。森の奥に住む巨大なイノシシにまたがって突撃する。地形を観察し、環境を利用することで、戦闘そのものが“創造的な遊び”に変わる。

さらに、武器ごとに異なる「決意技」という特殊攻撃があり、使いこなすほど戦闘スタイルが広がっていく。各地で見つかる宝箱からはステータス増加などの効果を持った武器や防具が手に入ることもあり、装備を集め、自身を強化することも可能。環境に頼らず、己の身一つで戦うストロングスタイルも歓迎される構造だ。

試遊が始まってすぐに訪れた広場には、強力なボスが待ち構えていた。巨大な斧を振るい、地面が割れるほどの攻撃は数発食らうだけで致命傷。何度か倒されてしまったが、本作はただのパワー勝負、「死に覚えゲー」ではない。ボスのいる広場の奥には、2つの山に挟まれた木造のダムの壁が見えた。「観察」すると、なにか強い力があれば壊せるようだ。もしあの壁を壊せれば、洪水が起きて敵に大ダメージを与えられる——そんな想像が自然に浮かぶ。試遊時間内に実際に試すことはできなかったが、「環境そのものが必殺の攻撃になる」という予感に胸が高鳴った。戦闘の厳しさ以上に、この世界をどう使うかを考え続けることが楽しい。それが『山外山』の戦いの本質だ。

リアルタイムで変化する、生きた神話世界

『山外山』の特徴は、神話世界をただ幻想的に描くのではなく、現実的なビジュアルの上に構築している点にある。とくに印象的だったのは、リアルタイムの変化へのこだわりだ。祈りによって雨を呼ぶと、だんだんと雲が厚くなっていき、通り雨のように素早く自然に地面を濡らしていく。水を撒けば植物が瞬時に伸び上がり、蔦が絡み、足場を形成する。生まれた道の上を歩むまでがすべてカットシーン無しで進行する。天候や自然現象が単なる背景ではなく、プレイヤーの行動に呼応してその場で変化していく。その瞬間、世界が呼吸しているように感じられる。

一方で、ファンタジー性を存分に味わえるアクティビティも用意されている。足場を伝ってたどり着いた山頂では、鳥を模した装束を入手できる。空中をウイングスーツのように滑空できる装備だ。滑らかな風の流れに乗り、美しい島を眼下に空を切るように飛ぶ感覚は、まるで神話の一場面を自分の手で演じているかのようだった。どの瞬間も、映像や演出を見せつけられるのではなく、自分の行動が風景を変える感覚がある。火、水、風、植物……それらが絶えず動き、互いに干渉し合う中で、プレイヤーは世界の一部として息をしている。

この設計には、「神話世界を現実のように感じさせる」という開発陣の強い意識が感じられた。幻想的な造形でありながら、そこに立つと確かに“生きている”。『山外山』の世界は、眺めるためではなく、触れて、試して、遊ぶための神話として構築されているのだ。

「世界を理解する」という遊び

『山外山』をプレイして強く感じたのは、「理解すること」自体が遊びになっているという点だ。世界をひととおり周ったところで序盤に出会ったボスと再戦してみると、周囲の環境を利用してかなり戦えるようになっていた。世界の理を少し理解したことで、確かに自分が強くなった実感がある。それはゲーム的なレベルアップではなく、知識の蓄積による成長だ。

多くのサバイバルゲームでは、敵を倒すか、アイテムを集めるかが目的になる。しかし本作では、「このやぐらは壊せる」「水を与えれば道ができる」といった発見そのものが報酬になる。だからこそ、プレイヤーの好奇心が止まらない。環境を観察し、素材を試し、戦い、また観察する。一度理解したルールが、次の行動を変えていく。この循環が心地よい。

東方神話の幻想と、リアルな物理演算が組み合わさった『山外山』の世界。ここでは魔法や兵器ではなく、火・水・風・岩といった自然そのものがプレイヤーの力となる。それをどう活かすかは発想次第であり、試すこと自体が楽しみになる。失敗すらも創造の一部だ。本作は、「観察と実験」という、人間が世界を理解しようとする営みを遊びとして提示する。自然と共に学び、考え、創り、壊す——人間が普遍的におこなってきた“生きるための営み”だ。

この“理解の快楽”を、製品版ではどこまで拡張してくれるのだろうか。本作のアナウンストレイラーでは拠点建築やマルチプレイ、砂漠や火山といった多彩な風景、いくつもの独創的なデザインのボスなど、試遊では体験できなかった要素が数多く見て取れる。短い試遊でも大きなポテンシャルを感じた本作が、この野心をどこまで広げていくのか、期待が高まるばかりである。

『山外山(ヤマソト)』はPC(Steam)向けに開発中。ゲーム内は日本語表示に対応する。

Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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