『サカつく2026』開発者ぶっちゃけ赤裸々インタビュー。開発が難航した理由、過去作らしさとモダンの両立の難しさ、そして現時点での手応え

本稿では先日行われたクローズドベータテストの久井氏に所感や『サカつく』ならではの魅力などを紹介する。

日本におけるサッカークラブ経営シミュレーションゲームの金字塔として、『プロサッカークラブをつくろう!』シリーズは数多くのプレイヤーに愛されてきたシリーズだ。そのシリーズ最新作が『プロサッカークラブをつくろう!2026』(以下、『サカつく2026』)として、帰ってくる。

『サカつく2026』プロデューサーの久井克也氏に、弊誌は複数のメディアで合同インタビューを行う機会に恵まれた。基本プレイ無料の運営型タイトルに生まれ変わった最新作の特徴などを訊いたインタビュー前編に引き続き、本稿では先日行われたクローズドベータテストの久井氏に所感や『サカつく』ならではの魅力などを紹介する。

『サカつく2026』プロデューサーの久井克也氏

ユーザーからのフィードバックで架空選手の存在感を再認識

――『サカつく2026』がシリーズ新作タイトルとして発表されたときは、ファンからはどのような反応がありましたか?

久井氏:
正直なところ、本作の発表をした配信では視聴者コメントなどからユーザーの不満が伝わってきました。対応プラットフォームには家庭用ゲーム機も含まれていることには一定の評価をいただくことができたのですが、本作が基本プレイ無料タイトルになるということで批判的な意見も多かった印象です。

そうしたこともあってクローズドベータテストを実施する際には、開発チームも緊張のドキドキが止まりませんでした。しかし、クローズドベータテストに参加したプレイヤーのみなさまには、本作をかなり好意的に受け止めていただけたようで喜んでいます。クローズドベータテストをプレイした方々から「早くリリースしてほしい」との声をいただけるほど、『サカつく2026』に期待する印象がポジティブなものへと変化しているように思います。

――クローズドベータテストでユーザーからの意見として、どのようなものが印象に残りましたか?

久井氏:
テンポの良さについては、数多くの方からポジティブな意見をいただきました。過去作よりもロードは短いですし、対応プラットフォームにスマートフォンを含む『サカつく2026』としては重要な要素を高く評価していただけた印象です。これは『サカつく2026』に期待値が低かったことのあらわれかもしれませんが、「プレイしてみると意外ときちんとした『サカつく』だった」という意見も頂戴しました。過去作に登場した架空選手が登場していることについても、数多くのポジティブな意見が届きましたね。

――もはや『サカつく』オリジナルのキャラクターといってもいい個性的な架空選手たちは、シリーズの独自の魅力と言ってもいいと思います。試遊ではアルガンチューワや河本鬼茂といった選手を見かけました。本作ではシリーズお馴染みの架空選手は網羅的に登場するのでしょうか?

久井氏:
『サカつく』オリジナルの架空選手は、『サカつく2026』でも意識的に登場させたいと思っています。開発チームの内情をお伝えすると、20年以上前のサカつくの開発を知る人間がほぼいなくなってしまっているという状態なんです。私自身も17~18年目ぐらいでして、シリーズの開発に携わったのは『J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!6 Pride of』からなんですよね。

シリーズでも名作とされる『サカつく2002 Jリーグ プロサッカークラブをつくろう!』や『Jリーグ プロサッカークラブをつくろう!’04』の開発に参加した経験をもつスタッフは、もう開発チームに残っておりません。したがって、その頃に有名になった架空選手を知らないスタッフも数多いんです。そうしたこともあって、『サカつく2026』の開発当初は架空選手の数は少ないものでした。あのアルガンチューワでさえ知らないスタッフがほとんどでしたので、架空選手にピンとこないのも無理もないのかもしれません。

しかし、『サカつく2026』の正式発表後に架空選手を登場させてほしいというユーザーから数多くの声が寄せられたんです。私個人としても架空選手を『サカつく』新作に登場させるべきだと考えていましたので、スタッフに実装をお願いしていました。過去作には選手データに特化した辞書のような分厚さの攻略本が存在したのですが、それを参照しながらできる限り多くの架空選手を『サカつく2026』にも登場させるように開発を進めています。

とはいえ、搭載予定の架空選手は膨大な数になりますので、一部の架空選手はリリース後のアップデートで追加されていく予定です。現在は架空選手の実装について優先順位付けをしています。端的にいうと、『サカつく』シリーズで有名な架空選手はほとんど網羅したいという気持ちで開発を進めています。本作に登場する選手の数でいうと架空選手は3000人くらいになるでしょうね。実在選手が5000人だとすると、ゲーム全体に登場する選手は8000くらいの規模になると考えています。

――クローズドベータテストでは参加者にアンケートを行ったそうですけど、架空選手以外にはどのような要望がありましたか?

久井氏:
クローズドベータテストに応募してくださったユーザーは家庭用ゲーム機時代の『サカつく』シリーズを愛してくださっている方が多かったです。家庭用ゲーム機時代に存在したけれど、今はなくなってしまった要素についてのご意見を頂戴しました。

たとえば、「留学」がなくなったことについての意見を数多く頂戴しましたね。開発陣としては留学を積極的に外そうとしたというわけではなかったのですが、実装の優先度が落ちてしまっていたのも事実です。そうしたご意見を踏まえて留学という要素は、同じ体験を得られる要素として「期限付き移籍」という形で復活させようと思っています。


リアルとファンタジーの要素を突き詰めた『サカつく』に

――『サカつく』を現代に蘇らせるにあたって、もっとも注意したことは何でしょうか?

久井氏:
『サカつく』新作はリアルに寄せるのか、それとも過去作にあったようなファンタジー要素をどこまで残すのかについては検討に次ぐ検討を重ねました。ユーザーのサッカーに対するリテラシーが年々向上していると思うんですよ。サッカーの試合だけではなく、サッカーを取り巻く環境や文化についての認識は現在の方がより高度です。ですので昔の『サカつく』をそのまま持ってきてしまうのも、ファンタジーすぎてだめだと思うんですよね。リアルとファンタジーの融合こそが、『サカつく』ならではの魅力だと思っています。

秘書が自分のプレゼントを買うために2億円を使ってくれというイベントが過去作にありましたが、さすがにそのイベントを新作に残していると違和感がどうしても出てしまいます(笑)。『サカつく』っぽい馬鹿馬鹿しさも残しながらも、今プレイしてもおかしくない感覚になるように注意しています。開発においては、ゲーム内で発生するイベントのテンションについての調整を重ねています。

――過去作では選手の強さを「世界で通用」や「世界で屈指」などのアナログなコメントで知ることができましたが、なぜ本作ではプレイヤーに数値を明示する形にしたのでしょうか?

久井氏:
選手の強さをプレイヤーに伝える方法として、数値をプレイヤーに明示するか否かについては開発チームとしても葛藤しました。私としても本当に困った部分なんです。『サカつく』シリーズのファンとしての私は「パラメータは見せないでほしい」という気持ちがありましたから。選手コメントのフレーバーや六角形のレーダーチャーでなんとなく選手の強さがわかるのが、『サカつく』の魅力でもありました。

その一方で、数字で示さないとプレイヤーにとって選手の強さを評価しづらいという時代になってきたという認識もありました。昔は数値化されていない部分をプレイヤーの空想で補う楽しみ方も存在しましたが、最近のトレンドはそうではありません。ビジネス的にも数値化した方がわかりやすいという事実もあります。ガチャを回していただくためにも、選手のパラメータを明確に出しておかないといけないんです。

そうして葛藤するなかでも、『サカつく』らしさを残しておきたい気持ちは依然として強くありました。そこで、本作でも「世界で通用」などの選手コメントが残されています。本当は選手固有のコメントも作りたかったのですが、現時点では存在しておりません。その代わりとして、特別練習の紹介コメントにはフレーバーがわかるような文章になっています。

正式リリースは「2026年初頭」に

――シリーズ久しぶりの新作となる本作ですが、開発が難航してしまった原因としてはどのようなものになるのでしょうか?

久井氏:
想定よりも開発が長期化した理由を赤裸々にお伝えしますと、開発当初に注力する部分を間違えてしまったことが挙げられます。というのも、今回の開発では真っ先に試合画面を作り始めてしまったんです。これは会社のなかで企画を通すための方便でもあったんですが、いきなり試合画面から作り始めるとうまくいきませんでした。

シミュレーションゲームの新作は過去作からの変化を見せることが難しいのです。シリーズ特有の変わらない良さみたいなものも当然あるんですが、企画の決裁者からするとそれは新作としてなかなか受け入れにくいものなんですよ。『サカつく』新作で企画を通すために、過去作との違いを生み出そうというのがプレッシャーになってしまったのかもしれません(笑)

開発と同時にほかのタイトルの研究も同時に進めました。シミュレーションゲームでプレイヤー同士の同期対戦機能を入れたらアクティブユーザー数やゲームを継続してプレイするユーザーが増えたという話も聞いて、それも取り入れようと努力しましたね。試合画面、対戦要素、そこからシミュレーション要素、この順番で開発を進めようとしたのが、そもそもの間違いでした(笑)

試合画面自体は満足のいくものに仕上げることができたのですが、そこにこだわりすぎてもよくないことに気が付きました。そのあたりの開発で1年ぐらいロスしてしまったかもしれません。回り道になってしまいましたが、この段階でようやく正真正銘の『サカつく』新作を作ろうという気持ちに立ち返ることができたと思います。そこから3年ぐらいかけて『サカつく2026』を仕上げていきました。

――現在の『サカつく2026』はどこまで完成に近づいているのでしょうか?

久井氏:
『サカつく2026』は、完成に近づいています。クローズドベータテストでいただいた意見を反映して、リリース時にはいくつかの機能を追加する予定です。開発計画を見直して、クローズドベータテストで不満点として挙がっていたところはリリース時には解消することを目指しています。

具体的に正式リリースで追加される機能としては、セーブデータは複数保存できる形式へと変更します。セーブデータを複数保存できるようにする理由としては、ユーザーからの要望に応えたいからです。それはチームの編成に関わっていまして、ガチャ選手のいるチームも作りたいけれど、ガチャ選手なしのチームも作りたいという声が寄せられたことに関係しています。それに応えるためには、セーブデータを分けるという方法を提示することができると考えました。

――当初は2025年リリースと発表されていますが、そこに変更はないのでしょうか?

久井氏:
当初は2025年内のリリースを目指していたのですが、「2026年初頭」にリリース時期を変更させていただきます。このインタビュー記事が解禁されるまえに公式生放送を配信し、そちらでリリース時期とタイトルのアップデートを発表させていただく予定です。

――最後に『サカつく2026』を待ち望んでいる読者へのメッセージをお願いいたします。

久井氏:
『サカつく2026』に期待してくださっている読者の皆様に、感謝申し上げます。クローズドベータテストに参加してくださった方もありがとうございました。クローズドベータテストでいただいたフィードバックについて開発チームはポジティブな印象を受けています。

それなら早くリリースしてほしいとの意見は当然あると思うのですが、私のエゴを含めて開発チームはもっと『サカつく2026』の完成度を高めていきたいと考えています。クローズドベータテストでいただいたフィードバックをポジティブに捉えたからこそ、ゲームを改善していきたいという気持ちが強くなりました。

リリース後のアップデートで改善していく方法もあるかもしれませんが、私たちとしては『サカつく2026』の正式リリース時にできる限り完成度の高い作品にしたいんです。その信念のもと、開発チームは皆様からのご意見に向き合って開発を進めています。当初から延期とはなってしまいましたが、正式リリースまでそんなにお待たせすることはありません。ぜひ期待していただければ幸いです。

――ありがとうございました。

『プロサッカークラブをつくろう!2026』は、2026年初頭に配信予定。基本プレイ無料のタイトルとして、PS5/PS4/iOS/Android/PC(Steam)のマルチプラットフォームで展開される。弊誌ではクローズドベータテストのプレイレポートも掲載されているので、そちらもぜひ読んでほしい。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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