次世代チーム戦バトロワ『Arkheron(アーケロン)』は敗北の納得感で“あと1戦”が止まらない。欲をかいても死、単独行動も死、すべての負けに理由がある

次世代チームベースPvPゲーム『Arkheron(アーケロン)』をアルファプレイテストでじっくりとプレイしたので、その感想をお届けしたい。

DRIMAGEおよびDRIMAGE JAPANがパブリッシングを担当し、Bonfire Studiosが手がける次世代チームベースPvPゲーム『Arkheron(アーケロン)』が開発中だ。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S。

本作は見下ろし型のチームベースバトルロイヤルでありながら、その体験は単なる戦闘の連続ではない。塔を登るという一点に向かいながら、強欲と献身が交錯し、“人間の性”が自然と炙り出される。9月に実施されたアルファプレイテストでは、プレイヤーたちがまるで芥川龍之介「蜘蛛の糸」の登場人物のように、わずかな希望を手繰り寄せては墜ちていくシビアな戦いが繰り広げられた。欲を出せば死に、助け合えば生き延びる。行動が勝敗に直結するプレイ体験だった。

本稿では、9月に実施されたアルファプレイテストの感想を通じて、本作の持つ難しさと、だからこそ輝く勝利の快感について掘り下げていく。内容はアルファプレイテストでのゲームシステムやバランスに基づいているため、留意されたい。


強欲が死に直結する、密な連携が必須のゲーム設計

『Arkheron(アーケロン)』は、最大45人(15チーム)が塔の内部で生き残りをかけて戦うチーム制バトロワだ。プレイヤーは「エコー」と呼ばれる記憶を失った存在として、仲間3人で塔に挑む。各階層には装備やモンスターが散らばっており、敵チームと互いに奪い合いながら階層を登っていく。登れるチームの数には限りがあり、上に行くほど生存競争は苛烈になる。探索、潜伏、戦闘を繰り返しながら、塔の「踏破者」を目指して争っていく。

じっくりと本作を味わってまず感じたのは、強欲なワンマンプレイが死に直結する厳しさだ。

塔には無数に宝箱が配置されているが、序盤はチーム3人で固まっているとなかなか装備が集まりづらいため、ついつい別ルートでばらけて探索しがちになる。さらに宝箱には3種のレアリティがあり、射幸心に煽られて上級の宝箱を転々と追いかけていると、仲間と簡単には追いつけない距離に離れてしまうことも多い。あと少し、あと少し、仲間のために強化しているのだと言い聞かせ、ひとりで良い装備を見つけてほくそ笑んでいると、3人そろった敵チームに囲まれて撃破される……この展開が驚くほど多い。

本作では装備の性能差よりも、人数差の方が圧倒的に重要だ。敵はこちらが何を装備しているかはほとんどわからないし、序盤の装備の差などたかが知れている。特に3対1の状況では勝ち目はほぼなく、1人のプレイヤーはすぐさま囲んで襲われるのは自明の理。ほんの少し良い装備を持って逃げまどいながら、あっけなくやられるのはなんとも情けなかった。このゲームでは「自分だけ強くなる」という発想が成立しない。少しの油断、「自分だけ」という強欲さが許されない設計となっているのだ。

逆に言えば、こちらが人数有利であればほとんどの場合勝つことができるし、互いのチームが3人フルメンバーで固まっていれば、抑止力が働き戦闘を避けられることも多い。こうしたリアルな要素は厳しくもある一方で、密な連携を促し、仲間との強いつながりを生む要因にもなっている。

味方を含めたチームの装備の強化についても、そうした協力が前提になっている。本作には「エターナル」と呼ばれる強者の名前が冠した装備が10人分、計40種存在する。同じ名前の装備を2つ揃えるとダメージ減、クールタイム減少といったセット効果が発動し、4つすべてを集めるとそのエターナルに変身できる。変身すれば体力が全回復し、強力なエターナルスキルも使えるため、エターナル装備を集めるのは塔を登るうえで大きな目標のひとつだ。

しかしここで重要なのは「チーム全体で重複して同名のエターナル装備を持つことはできない」ということ。たとえばエターナル「ヴァトン」の武器であるサーペント・スタッフを自分が持っている場合、味方はヴァトンのほかの装備を所持することはできるが、サーペント・スタッフを持つことはできない。つまり同じエターナルの装備を1つでもバラバラに所持している時点で4種類のコンプリート=変身は不可能になり、セット効果の発動も難しくなる。装備のドロップは完全にランダムで、事前に何のエターナルにするか示し合わせるのはほぼ不可能。そのため、互いに状況に合わせて融通しないとチーム単位で装備を強くするのは難しい。

そしてそのために、味方の装備はいつでもゲーム画面に表示されるようになっているのだが、この仕様が独特の葛藤を生む。たとえばこの装備を渡せば味方はセット効果が発動するが、せっかく見つけたエターナル装備をむざむざと手放すのは惜しい、などと逡巡しているうちに、エターナルに変身した強敵に襲われチームごと崩壊する。アルファプレイテストではそんな展開を何度も経験した。

やがて、積極的に協力しないと勝てないということがわかってくる。幸い、協力するための仕組みは整っており、定型文、マップピンといった一般的な意思表示手段にくわえて、自分や味方の装備にピンを立てる機能もある。野良でマッチングし、チャットやボイスが使えなくても装備の譲り合いが可能で、連帯感が自然と生まれるデザインだ。

このゲームには自分だけの幸せを考えるスキマはない。勝利するにはいかに三位一体となって行動できるかにかかっている。プレイテストの期間が終盤になると、どのプレイヤーもこの感覚を理解しており、積極的な装備の譲り合いや、味方の持つエターナルと同じ装備にピンを立てるといった光景が多く見られるようになった。譲り合いの文化が自然発生していく光景は、まるで厳しい自然環境が団結を生んだかのようであった。ひとりの欲が全員の死を呼び、本気で協力しなければ勝利はない。この緊張感は、他のPvPタイトルとは一味違うものだった。


「自業自得感」のある難しさと完成度

そうしてプレイテストで何度も塔を登る中で見えてきたのは、とっつきやすさとMOBA的な複雑さを両立した、納得感のある難しさだ。

アクションについては、WASD移動、狙った個所に攻撃を当てられるレティクル、3回まで連続で発動できる回避など、基本的に直感的でスピーディだ。各武器の特殊攻撃や、2種の装備品が持つスキル、エターナルスキル、通貨を支払って使用できる「アンカースキル」など操作項目は多いが、それぞれ段階的に増えていくため混乱は少ない。シンプルでわかりやすいUIや、武器ごとに異なる特性や効果範囲を表したレティクルのデザインなどもあり、意外なほどとっつきやすく、感覚的にプレイできるというのが第一印象だ。

その一方でプレイすればするほど、内側に複雑さを秘めていることがわかってくる。たとえば戦闘では互いの体力が多いため、一度すべての攻撃やスキルを出し切っただけでは決着が付くことは少ない。スキルはCC(行動阻害)が強力で、冷気による減速や壁生成による分断など、1秒の判断ミスが命取りになる。敵の妨害など、泥臭くできることを総動員したうえで戦い続けるという、持続的な集中力が求められる。また、各種装備は初見であってもインベントリから具体的な効果を確認できるが、1フロアが数分で終わる試合展開の速さもあり、基本的に試す時間はおろか、効果を確認する時間すらほぼない。使い方がわからなければ、当然勝てる確率も下がる。また、確実に勝つためには、セット効果の組み合わせの優劣やそれぞれの装備の相性も知っておく必要がある。CCが重要かつ持続的な戦闘や、事前の知識量が勝敗に影響する感覚は、MOBAジャンルのゲームをプレイしているときに近い。

興味深いのは、これらのアクション性と戦略性がしっかりと両立しているということだ。動体視力だけではきちんと戦略を立てているプレイヤーに勝てず、作戦があってもプレイスキルがないと上手くいかない。総合的な能力が求められるがゆえに、「自分には瞬発力がないから」「座学をしていないから」といった言い訳がきかないのだ。周りの状況がわかりやすい見下ろし型で、お互い事前に相手の位置を知る方法がほぼないため、不意打ちで理不尽に撃破されるようなこともない。ついでに言えばキャラ選択もなく、全員が裸一貫というまったく同じ条件で始まる。つまり敗北したときは必ず理由があり、納得せざるを得ない。だからこそ悔しく、だからこそ熱中してしまう。この「自業自得感」を得られるゲームバランスや設計はかなり練り込まれていて、発売前、ましてやスタジオのデビュー作とは思えない仕上がりだった。


絶望の中だからこそ、勝利が眩しいほど輝く

『Arkheron(アーケロン)』のアルファプレイテストを通じて、緊張感と重々しさに振り切ったゲームデザイン、そしてそれゆえに「チームベース」で行動する重要性を感じた。いつでも敗北する可能性があるせいか、かろうじて生き抜いたときには、喜びよりも先に張り詰めていた緊張が解ける安堵感を覚える。

敗北は自業自得だが、挑戦をやめない限り何度でも登り直せる。絶望と希望の往復を繰り返すうちに、プレイヤー自身が変わっていく。この塔の中では、強さとは謙虚に学ぶことそのものなのだ。仲間と歩調を合わせ、経験を積み、ようやく勝利という光を掴む。そのプロセス自体が『Arkheron(アーケロン)』の醍醐味だと思えた。もちろん本作はアルファプレイテストの段階であり、今後の調整でゲームバランスは変化するかもしれない。ただ勝敗の一瞬ごとに「因果」を感じさせるゲームデザインは本作の軸となっている印象で、リリース時にも変わらず味わえることだろう。

Arkheron(アーケロン)』はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに開発中。

「Arkheron(アーケロン)」ストアページ
Steam:https://store.steampowered.com/app/3333850

「Arkheron(アーケロン)」公式ホームページ:https://arkheron.drimage.com/ja/
「Arkheron(アーケロン)」日本公式X:https://x.com/ArkheronJP
「Arkheron(アーケロン)」日本公式Youtube:https://www.youtube.com/@ArkheronJP
「Arkheron(アーケロン」公式Discord:https://discord.gg/arkheron

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Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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