大型基本プレイ無料アクションRPG『デュエットナイトアビス』開発者、リリース直前なのになんと「キャラ+武器ガチャやめる」と言い出す。「すべては長期運営のため」

『デュエットナイト』のリリース前に、とんでもない変更が入った。その背景をプロデューサーの十倍大熊氏に訊いた。

Hong Kong Spiral Rising Technologyは10月28日より、『デュエットナイトアビス(DUET NIGHT ABYSS)』をリリースする。対応プラットフォームはPC/iOS/Android。基本プレイ無料で配信予定だ。

同作は幾度ものベータテストを実施。いよいよ製品版リリースを迎える。しかしどうやら様子がおかしい。『デュエットナイトアビス』ではテストするたびに、ユーザーのフィードバックを踏まえて大きな変更を加えられてきた。しかし今回の変更はその中の最大規模。何を変えたのか……は記事タイトルに記載しているが、とんでもない変更が入った。その背景をプロデューサーの十倍大熊氏に訊いた。

──自己紹介をお願いします。

十倍大熊:
皆さんこんにちは、『デュエットナイトアビス』のプロデューサーの十倍大熊です。よろしくお願いします!中国・杭州にあるPAN STUDIOに所属しています。うちのスタジオはまだ若いチームなんですが、ゲームや二次元文化が大好きな仲間たちが各地から集まって、『デュエットナイトアビス』の開発とパブリッシングに取り組んでいます。

──『デュエットナイトアビス』はどのようなゲームでしょうか?

十倍大熊:
『デュエットナイトアビス』は「マルチ武器バトル」を楽しめるアクションゲームです。僕たちが一番大事にしているのは、“純粋に遊ぶ楽しさ”と“気軽にプレイできること”なんです。これまで世界規模で、1回の技術テストと2回のクローズドテストを実施してきました。そのなかで集まったプレイヤーのみなさんのフィードバックやデータをもとに、ずっと磨き上げてきました。

──ダブル主人公が特徴的ですよね。

十倍大熊:
世界は複雑で、ひとつの視点だけではその感じ方も単一になりがちです。ですが視点がひとつ増えることで、もうひとつの次元が加わり、私たちはより立体的で多面的にこの世界を理解できるようになります。これが、私たちがダブル主人公による物語構成を選んだ最初の理由です。

二重の物語線による語り方は、プレイヤーが異なる主人公の視点を通じて、物語の違いを体験できるのが強みです。それぞれの主人公には異なる物語線、役割、関わる人物があり、ひとつのゲームでふたつの物語を味わえます。そして将来的に、ふたつの物語が交わる瞬間には、プレイヤーにさらなる驚きを与えることができるでしょう。さらに新バージョンでは、主人公を操作可能キャラクターとして加えることで、プレイヤーが物語を体験する際に、より強い没入感を得られるようにしました。

──本作ならではの魅力はなんだと思いますか。特にバトルが個性かなと考えています。

十倍大熊:
ゲーム中では、通常の移動やジャンプに加えて「スピンジャンプ」というシステムを導入しており、キャラクターが高速かつ長距離の移動を行うことができます。キャラクターは近接武器と遠距離武器を同時に装備でき、戦闘中にいつでも近距離攻撃と遠距離攻撃を切り替えることが可能です。

スキル設計においては、クールダウンが短い、あるいはクールダウンそのものが存在しない仕組みを採用しており、多くのキャラクターは十分なエネルギーさえあればスキルを連続して発動できます。

また、キャラクターや武器には「魔の楔」を装着でき、ステータスの強化だけでなく、戦闘メカニクスや攻撃方法の変化をもたらすことで、自由なカスタマイズに幅広い可能性を提供します。

さらにダンジョン挑戦時には、プレイヤーが2名のキャラクターをAI仲間として選ぶことができ、自身の攻略をサポートさせることで、プレイ時の負担を大幅に軽減できます。

──現在の開発状況はいかがですか。

十倍大熊:
そして、ついにグローバルでの正式サービス開始日を発表しました――2025年10月28日より、PC、スマートフォンにて『デュエットナイトアビス』を正式リリースする予定です。リリース版では、スタミナシステムやマネタイズの仕組みを大きく見直し、なんと全キャラクター・全武器を無料で入手できるようにしました。さらに、今後のアップデートもすでに並行して開発中です。これからもプレイヤーの皆さんに高品質なコンテンツを届け続けたいと思っています。

──全キャラクターと全武器無料開放……?すいません、意味があまりわからず。本作はガチャシステムを採用していましたよね。ガチャは、コアとなるビジネスロジックだった認識ですが。

十倍大熊:
はい、過去のバージョンにおいて、私たちのマネタイズモデルは依然としてキャラクターのガチャを中心に設計されていました。もちろん、プレイヤーの課金負担を考慮し、ガチャシステムにいくつかのルール上の最適化を施しました。たとえば、キャラクターガチャの仕様として「最初にピックアップを外さないガチャ」を追加したり、武器をゲーム内のシステム報酬に組み込み、プレイヤーが「依頼の密書システム」を通じて無料で武器を獲得できるようにしました。

さらに、外観コンテンツを補助的な課金要素として組み合わせることで、ガチャと外観コンテンツの二つを融合させ、第2回クローズドβテストにおいて収益モデルを形成しました。

──ビジネスとしての収益モデルはすでに固まっていたとわけですよね。

十倍大熊:
はい。で、正式リリース版のバージョンでは、キャラクターガチャと武器ガチャを廃止し、さらにスタミナ(体力)システムも削除しました。

──え?

十倍大熊:
すべてのキャラクターは無料で入手可能であり、キャラクターの追加も基本的には恒常的なものが主体です。

──???

十倍大熊:
……(笑)そのため、プレイヤーがキャラクター獲得に関して課金の不安を抱く必要はありません。リソース獲得についても、すべてのダンジョンにスタミナ制限を設けていないため、プレイヤーはより自由に自分のプレイ時間を選ぶことができます。ゲームの選択権をプレイヤーに返すことが、私たちが目指しているものです。

──ちょっと言っている意味がよくわからず……リリース直前に、ガチャシステムを廃止したということですか。一体なぜ……?

十倍大熊:
理由があります。前回のテストでのプレイヤーデータや、コミュニティでのフィードバック、ゲーム内アンケートの結果を分析したところ、プレイヤーからの意見は比較的集中していることがわかりました。私たちは社内で何度も議論を重ね、キャラクターガチャ+スタミナシステムという既存のモデルをいくら最適化しても、プレイヤーの根本的な不満を解消することは難しいと判断しました。

──なるほど。

十倍大熊:
そこで、私たちは『デュエットナイトアビス』を作る最初の意図に立ち返り、「遊んで楽しく、気軽に遊べて、負担のないゲーム」を目指すことにしました。この考えに沿って、製品内でこの理念と矛盾する部分を調整し、キャラクターガチャとスタミナシステムを廃止しました。廃止後、ゲームプレイ全体がより自律的で一貫性のあるものになっています。

──プレイヤーからすると嬉しいですが、ガチャのマネタイズシステムを廃止して、今後長期的に運営できるのでしょうか?

十倍大熊:
運営戦略の観点から、私たちは長期的に運営できるゲームを目指しています。マネタイズの判断は、目先の市場だけでなく、3年後、5年後のユーザーのニーズも評価して行っています。プレイヤーが課金するかどうかは、現時点で製品をどれだけ評価しているかによるため、短期的な収益だけを重視するわけではありません。以前のようなPay to Win(課金すれば勝てるようなシステム)や強制課金の要素は極力避け、プレイヤーが遊びたい、楽しみたいと思ってくれることを第一にしています。

短期的には一部の迅速な収益化手段を手放すことになるかもしれませんが、長期的にはプレイヤーの定着や評判向上に繋がり、より健全で持続的なビジネスモデルを形成できると信じています。

──今後のマネタイズはどうなりますか?

十倍大熊:
今後は、マネタイズの中心を外観コンテンツに移します。キャラクタースキン、武器スキン、特殊アクション、アクセサリーなどを提供し、既存の内容をベースに横方向・縦方向の拡張を行い、プレイヤーにより多くの魅力的な外観コンテンツを届けていく予定です。

私たちはゲーム内の数値的な難易度を調整し、初心者体験やストーリー体験がスムーズで、わかりやすいものになるようにしました。ガチャシステムがなくなったことで、プレイヤーはゲーム内でまだ解放していないキャラクターや武器を直接確認でき、好みに応じて入手することができます。これにより、キャラクターガチャに伴う課金のプレッシャーはなくなるのではないかと私たちは思います。

──スタミナシステムを削除したことでどのような影響がありますか。

十倍大熊:
スタミナシステムを削除したことで、プレイヤーは「今日のスタミナでどの育成素材を集めるのが最も効率的か」と悩む必要がなくなります。スタミナが余って無駄になる心配や、時間がなくてスタミナを消費できず、他のプレイヤーより進行が遅れる心配もなくなります。こうした不安はすべて解消されました。

──新しいマネタイズで、本作は成功できるのでしょうか。そもそも何を「成功」としますか。

十倍大熊:
ビジネスの観点から見ると、「リターン率」はゲームの成功を測る最も直感的な指標かもしれません。しかし私にとって、短期的な利益を追いかけることは核心的な目標でもなく、重要なポイントでもありません。私は常に、製品の成功の定義は単なる商業データを超えるべきだと考えています。私たちが重視しているのは、チームがこの過程で継続的に成長し、能力を蓄積すること、技術の反復・イノベーションの突破、製品の長期的な健全な運営、そしてプレイヤーとの深いインタラクションの構築です。

本作を通じて、世界中のプレイヤーに高品質で多様なゲーム体験を提供したいと考えています。今後もゲームコンテンツや遊び方の継続的な改善を推進し、深みのあるストーリーと爽快な戦闘を兼ね備えた高品質IPの構築を目指します。

同時に、『デュエットナイトアビス』を通じてより緊密なプレイヤーコミュニティを築き、フィードバックを聞きながらゲーム体験を絶えず最適化していきたいです。私たちの目標は、単に人気のあるゲームを作ることだけでなく、世界中の二次元ゲームファンをつなぐ架け橋となり、プレイヤーにより多くの良質なコンテンツと持続的な楽しさを届けることです。正しい方向性を堅持し、これらの次元で不断に改善を続ければ、成功の可能性はより高まると信じています。

──ありがとうございます。ただなんとなくガチャシステムをやめたのではなく、信念をもってやめたことが伝わりました。楽しみです。今後に向けてメッセージをお願いします。

十倍大熊:
このたびはインタビューの機会をいただき、誠にありがとうございます。ゲーム業界のクリエイターとして、何より嬉しく、誇りに思うのは、皆さんが私たちに関心を持ち、作品を楽しんでくださっていることです。ぜひこれからも『デュエットナイトアビス』を応援していただければと思います。

また、プロデューサーとして、日頃からの皆さんのご注目とご支援に心から感謝しています。『デュエットナイトアビス』は2025年10月28日よりグローバルリリースを迎えますので、ぜひ皆さんに『デュエットナイトアビス』を体験していただきたいです。体験中に何か気になる点があれば、ぜひフィードバックをお寄せください。これからも私たちは製品の改善に努め、より面白く楽しいコンテンツを開発し、皆さんに最高のプレイ体験を届けられるよう努力してまいります。ぜひ事前登録もおねがいします。
 
──新たな『デュエットナイトアビス』の旅立ちに期待しています。ありがとうございました。

デュエットナイトアビス』は、10月28日に基本プレイ無料で配信予定だ。現在事前登録受付中である。また公式XアカウントYouTubeからも情報をチェックできる。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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