約10年延期して発売された『Dead Island 2』、延期一因として「最初の開発元が自分のビジョンにこだわりすぎた」と暴露される。プレイヤーからの意見も聞かなかった
本作の2014年のE3での発表は大きな反響を得たが、その3〜4週間後に訪れた開発マイルストーンにて、ゲーム内容の酷さが明らかになったという。

パブリッシャーのDeep Silverから2023年4月に発売されたゾンビサバイバルゲーム『Dead Island 2』。本作は、何度も発売延期された末にリリースされたが、その背景の一端が明らかになった。海外メディアGamesIndustry.bizが報じている。
本作は、ゾンビサバイバルゲーム『Dead Island』シリーズの現時点での最新作だ。ソロプレイおよび最大3人でのオンライン協力プレイに対応。ゾンビアウトブレイクが発生したロサンゼルスを舞台に、多数用意された武器やスキルを駆使してゾンビの大群と戦う。

『Dead Island 2』は2014年のE3にて発表され、当初は2015年春の発売が予定されていたものの延期を重ね、結果的に約9年もの年月を経た末にリリースされた。最終的に完成させたのはDeep Silver傘下のDambuster Studiosであるが、もともとは『Spec Ops: The Line』などで知られるYager Developmentのもとで開発が進められていた。なお、シリーズの過去作を手がけたTechlandは、『Dying Light』を開発中だったため携わっていない。
Yager Developmentが本作の開発から離れたのは2015年7月のことで、販売元Deep Silverとのビジョンの違いを原因として契約解除に至ったと説明された(関連記事)。そのビジョンの違いとは何を意味していたのか、当時Deep Silverでグローバルブランドマネージャーを務め、現在はゲームコンサルタント会社で働くMartin Wein氏が、イギリスで先日開催されたゲーム開発者向けイベントDevelop:Brightonでの講演の中で明かした。

海外メディアGamesIndustry.bizによると、その講演にてWein氏は、開発チームが作品のデザインビジョンから逸脱した際のエピソードや、その軌道修正に市場やプレイヤーの調査が役立ったかどうか質問され、実際に体験した事例として『Dead Island 2』でのエピソードを語った。本作の2014年のE3での発表は大きな反響を得たが、その3〜4週間後に訪れた開発マイルストーンにて、ゲーム内容の酷さが明らかになったという。
Wein氏は、オリジナル版である『Dead Island』を楽しいものにしていた要素が、まったく取り入れられてなかったと振り返る。プレイテストを実施しても、やはりフィードバックは辛辣だった。そこで今後の方針について話し合ったところ、開発チームは自分たちに任せてほしいと述べたとのこと。ただ、それから2〜3か月経ってもゲーム内容は変わっていなかったそうだ。
Deep Silverは、複数回のプレイテストを通じてプレイヤーの新作に対する期待やモチベーションを測り、それに沿った作品作りを望んだという。一方でYager Developmentは、プレイヤーからのフィードバックよりも自らのビジョンを追求することを希望。この両者の溝が埋まらなかったため、Deep Silverは契約を解除し、別の開発スタジオを探すことにしたそうだ。

Wein氏は、駄作(a shit game)のままリリースすれば多少の利益は得られたかもしれないが、『Dead Island』シリーズを殺すことにつながっていただろうとコメント。最終的にリリースされた『Dead Island 2』がヒットしたこともあって、プロジェクトをリセットさせたDeep Silverの当時の判断は正しかったと振り返っている。
開発元が自らのこだわりを追求することは必ずしも悪いことではないが、プレイテストでは不評だったということで、Yager Developmentが示した方向性は『Dead Island』シリーズ作品としては受け入れられるものではなかったのだろう。またプロジェクトの規模的に、Deep Silverとしてもリスクが大きすぎると判断したのかもしれない。
『Dead Island 2』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)および海外PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売中だ。