Steamほのぼの昆虫採集ゲーム『Kabuto Park』が売れた、発売から1か月ですでに黒字に。なぜ『Minami Lane』に続いて収益を生めたのか?

新作『Kabuto Park』が発売から1か月で利益を生み出せるほどの成功を得たことを公表した。

インディー開発者のDootことDorian Signargout氏は7月8日、新作『Kabuto Park』が発売から1か月で利益を生み出せるほどの成功を得たことを公表した。そして本作の開発から発売までを振り返り、ほかの開発者と情報共有している。

本作は、子供の虫捕りをテーマにした昆虫収集ゲームだ。温かみのある手描きイラスト調グラフィックが採用され、カブトムシやクワガタ、カマキリ、蝶、トンボなどの虫が収録。プレイヤーは自然あふれる土地を巡り、ミニゲーム形式にて虫を捕まえてコレクションする。また、子供同士の遊びとして虫同士を戦わせる要素も存在し、さまざまな効果を持つカードを駆使して勝利を目指す。

『Kabuto Park』は、PC(Steam)向けに今年5月にリリース。Steamユーザレビューにて、本稿執筆時点で約1800件のうち実に99%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得するなど、非常に高い評価を得ている。ちなみに開発者のDorian Signargout氏は、商店街運営シミュレーションゲーム『おいでませ、みなみ通りへ!(Minami Lane)』を昨年リリースし、Steamにて同じく「圧倒的に好評」ステータスを獲得。比較的小規模な作品を好んで手がけ、ヒットを連発しているクリエイターだといえる。

そんなSignargout氏は7月8日、ゲーム開発者の交流の場となっているRedditのGamedev板に、本作において取り組んだことなどについて投稿した。その中では、本作は発売初日に5500本、発売から1週間で1万8500本、1か月で3万5000本を売り上げたと公表。そして開発にかかったコストの内訳も開示しながら、すでに利益を生み出していることを明らかにした。

本作の価格は5ドル(580円)で、各種手数料を差し引くと1本あたり2.5ドルが手元に入ることから、およそ3万本が損益分岐点だったという。なおSignargout氏自身は、『おいでませ、みなみ通りへ!』からの収益が十分にあるため報酬なしで働いたが(関連記事)、仮にその分も含めると、本作の開発コストの総額は約6万5000ユーロ(約1100万円)にのぼるそうだ。

『Kabuto Park』は、『ぼくのなつやすみ』や『ポケットモンスター』『甲虫王者ムシキング』『Chillquarium』といった作品から影響を受けて開発したという。シンプルで小規模な作品にすることを前提に、ほかにどのような小規模作品が成功しているのかを調査しつつ、自分の好きなものをテーマに据えたそうだ。Signargout氏は、鳥をテーマにしたゲームとして開発し、最終的には捕まえたり戦わせたりといったことに相性の良いカブトムシなどの虫を最終的に採用。これにあたっては、『なつもん! 20世紀の夏休み』も参考にしたとのこと。

開発期間は9か月で、これまでに手がけた作品よりは長くかかったものの、ゲームの規模が大きくなりすぎないように注意し、素早くリリースすることを最優先にしつつ、ゲームの柱となる要素の作り込みと磨き上げ作業に集中したそうだ。

また、開発においてはプレイテストを重視したそうで、1か月かけてプロトタイプを制作し、その月末にプレイテストすることを繰り返したという。プレイテストは、プレイヤーの反応を見て無用なこだわりを捨てたり、作業の優先順位を決めたりすることなどに役立ち、ゲームの完成度を高めることはもちろん、開発を容易にすることにもつながるとSignargout氏は述べている。

本作のマーケティングに関しては、主にXやThreads、BlueskyといったSNSへの継続的な投稿で、作品の認知度を高めていくことに注力したという。すべてSignargout氏が自身でおこなったため、マーケティング費用はゼロ。認知度が売り上げに直接結びつくわけではないものの、適切なコンテンツクリエイターやメディア関係者にゲームキーを提供することや、コミュニティの構築、ほかの開発者との交流に役立ったそうだ。

また、本作にてプレイヤーがどんな体験を得られるのか、Steamのストアページを通じてゲーム内容を正確に伝えることの大事さも語られている。もしプレイヤーの期待を煽るようなことをすれば、短期的にはよく売れるかもしれないが、長期的には自らの作品をダメにしてしまうと同氏は警鐘を鳴らしている。


本作の今後についてSignargout氏は、この夏に何らかのコンテンツに取り組む可能性があると述べる。また、より大きな成功を目指すうえでは、ローカライズやゲームパッドへの対応、コンソールへの移植などできることはたくさんあるが、まだ何も決まっていないとのこと。そして、9月頃には次なる新作に取り掛かる予定だそうだ。同氏は、短いサイクルで面白いゲームを追求することは開発者にとって健全なスタイルであるとし、ほかの開発者にも小規模作品を手がけることを勧めて投稿を締めくくった。

『Kabuto Park』は、PC(Steam)向けに配信中だ。体験版も配信中である。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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