「グランド・セフト・クトゥルフ」を目指すコズミックホラー『Dead Static Drive』。知らぬ間に日常が侵食されていく
発売前や登場したばかりのインディーゲームから、まだ誰も見たことがないような最前線の作品を紹介してゆく「Indie Pick」。第331回目は『Dead Static Drive』を紹介する。
『Dead Static Drive』は見下ろし視点を採用しているホラーアクションだ。舞台の中心となるのはアメリカにある人里離れた町「Crow’s Demise」。栄えていた農業文化が廃れ、住まう人々も少なくなり、廃墟と化しつつある町だ。プレイヤーとなるのは、そんな寂れた土地に住むとある若者。主人公は平凡な毎日を暮らすなか、仲良くしていた両親がある日突然行方をくらませる。唯一の手がかりは、彼らが向かっていたであろう場所は故郷である「Brightwater」という情報だけ。両親を探す旅の途中に、プレイヤーは知らぬ間に世界を侵食しつつある“終末”に遭遇することになる。
『Dead Static Drive』は「クトゥルフ神話」をテーマとした作品だ。クトゥルフ神話やラヴ・クラフト作品のキャラクターが登場するというわけではないが、ブライアン・ラムレイの作品のように、開発者であるMike Blackney氏が独自に解釈したクトゥルフワールドが描かれる。背骨を露出させ、鹿のような角を生やしたクリーチャーたちがその最もたる例だろう。主人公の住まうエリアはこうした無数の異形の生物であふれており、銃や武器を駆使して彼らを退けながら両親を探していく。
作者自身が「グランド・セフト・クトゥルフ」を目指していると公言する本作は、オープンワールドを採用している。モチーフとなっている『グランド・セフト・オート』は、見下ろし視点を採用したシリーズ初期の作品に近い。本作は暴力や戦闘というよりは探索をメインとしており、日常と狂気が混じりあった奇妙な世界を冒険していく。訪問できるエリアは約21種類予定されており、プレイヤーは残された車とともに孤独なドライブを強いられる。
『Dead Static Drive』の魅力は、『アウターワールド』を彷彿とさせる油絵のようなビジュアルだろう。本作の開発にはUnreal Engine 4が採用されており、Blackney氏が目指している「悲哀的な怖さ」がうまく演出されているという印象だ。本作は『Kentucky Route Zero』から強い影響を受けたと氏は語っており、独特のビジュアルや人間が存在しない街を探索する孤独感などはこうした作品からインスピレーションを得たという。プレイヤーの唯一の移動手段である車のアニメーションも凝っており、単なる移動だけでなく、時にはアクロバティックな運転も楽しめそうだ
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開発を手がけるのはMike Blackney氏ひとり。Blackney氏はオーストラリアに在住している37歳で、これまでのゲームデベロッパーとして積んできたキャリアの中で得た教訓やプロトタイプを結集させ本作の開発に取り組んでいるという。2015年にはUnreal Dev Grants を受賞し、Epic Gamesからの支援を受け充実した環境でゲーム開発を進めているようだ。
発売時期やプラットフォームはまだ明かされていないが、Blackney氏のTwitterには本作の魅力を詰め込んだスクリーンショットやgifアニメが多く投稿されているので、気になった方はそちらもチェックしてみてほしい。