新作『鬼武者』は“オープンワールドでもなく死にゲーでもない”、「CERO Z」剣戟アクションゲームに。開発者は「鬼武者らしさ」で、ほかにない体験を届けたい

プロデューサーの門脇章人氏とディレクターの二瓶賢氏にインタビューを行う機会に恵まれた。

カプコンの剣戟アクションゲーム『鬼武者 Way of the Sword』が、シリーズ20年ぶりの新作として2026年に発売される。新作の主人公は伝説の剣豪である宮本武蔵。「Summer Game Fest 2025」では本作の2ndトレイラーが解禁されており、武蔵のライバルである佐々木巌流の姿がお披露目された。

AUTOMATONはほかのメディアと合同で、プロデューサーの門脇章人氏とディレクターの二瓶賢氏にインタビューを行う機会に恵まれた。シリーズ復活にかける思い入れやこだわりを聞くことができたので、この記事で紹介したい。なお、直前には開発陣による映像プレゼンテーションがメディア向けに実施されており、そちらを視聴してからインタビューに臨んでいる。

プロデューサーの門脇章人氏
ディレクターの二瓶賢氏

初代作の魅力を現代で表現して『鬼武者』らしさを追求

――最初に、門脇さんと二瓶さんの自己紹介をお願いいたします。

門脇章人氏(以下、門脇氏):
『鬼武者 Way of the Sword』プロデューサーの門脇です。現在の『鬼武者』シリーズの全体を統括していくような役割を担当させていただいております。カプコンの近年のタイトルとしては『戦国BASARA4』(2014年)でプロデューサーを担当させていただいたほか、『モンスターハンターダブルクロス』(2017年)や『モンスターハンターライズ』(2021年)といったタイトルのプロデュースに携わりました。『鬼武者』シリーズの開発に携わるのは今回が初めてですが、私自身が『鬼武者』シリーズのプレイヤーだったこともあって感慨深いですね。

二瓶賢氏(以下、二瓶氏):
『鬼武者 Way of the Sword』ディレクターの二瓶と申します。『戦国BASARA』シリーズ、『ドラゴンズドグマ オンライン』(2015年)、『エグゾプライマル』(2023年)などのタイトルで15年以上アクションゲームの開発に携わってきました。ディレクターとして開発に参加する初めてのタイトルが『鬼武者 Way of the sword』となります。『鬼武者』の過去作にクリエイターとして携わったことはなかったんですが、プレイヤーとして『鬼武者』は印象的なタイトルでした。そうした『鬼武者』にディレクターとして携わることにプレッシャーも感じていますが、それ以上に充実した気持ちで開発に取り組めています。

――本作は2006年に発売された『新 鬼武者 DAWN OF DREAMS』から約20年振りの新作になりますが、なぜここまで期間が空いたのでしょうか。

門脇氏:
『鬼武者』の新作を作りたいという声は、カプコンの社内でずっとありました。『新 鬼武者 DAWN OF DREAMS』の発売から20年が過ぎようとしていますが、『鬼武者』新作の話題は途絶えたことはなかったと記憶しています。しかし、新作を開発できる人員の確保が難しかったんですよ。ゲーム開発の規模が年々拡大していく一方で、人手が足りないという状態でした。転機になったのは2020年頃だったと思います。

その頃になると、カプコン独自のゲームエンジンであるREエンジンによる開発環境が整ってきました。本作の開発で中心となるメンバーがそろったタイミングでもあり、2020年になってようやく『鬼武者』新作の開発をスタートできたんですよ。そうして開発が進んでいって、2024年に2026年発売と発表させていただきました(関連記事)。

――最近20年間でアクションゲームの流行も移り変わってきました。そうしたなかで『鬼武者』が復活するにあたって、新たに取り入れられた要素はどのようなものでしょうか?逆に、変えなかったこだわりもあれば教えてください。

二瓶氏:
本作はオープンワールドのゲームでもなければ、「死にゲー」と呼ばれるような高難易度のゲームでもありません。アクションゲームが得意な人はもちろん楽しんでいただけますが、アクションゲームが苦手な人にも楽しんでもらえることを本作は目指しています。本作では剣と剣のぶつかり合いをアクションで表現することを第一に考えました。その結果として取り入れられた新要素の「受け流し」と「弾き」という2つのアクションが本作では重要になっていますね。とくに「弾き」はボス戦で有用なもので、「力動ゲージ」と呼ばれる特殊なゲージを削ることができます。その力動ゲージを削り切ることで「崩し一閃」が発動し、ボスの部位を破壊することができるんですよ。

雑魚敵を瞬殺可能な通常の一閃はシリーズを象徴するシステムで、本作にも登場します。一閃は発動するタイミングがシビアなところがありますが、崩し一閃は弾きを繰り返してゲージを削りきれば発動することができます。そこが両者の違いですね。崩し一閃は通常の一閃より発動が簡単でありながらも、ボスを気持ちよく倒せる新アクションになっています。逆に新作でも変えなかったところは、鬼の篭手を使ったアクションですね。相手の魂を吸収する「魂吸収」は本作に登場しますし、発動するタイミングの駆け引きを含めてシリーズのアイデンティティーとして大切にしています。

――『鬼武者』シリーズ以外のタイトルで、開発の参考にしたゲームはありますか?本作に取り入れたいと思ったゲームや、あえて遠ざけようと思ったゲームなどがあれば教えてください。

二瓶氏:
本作の開発でもっとも重視したのは、初代作の『鬼武者』のいいところを現世代機で表現するということです。最初から『鬼武者』らしい侍の姿を追求してきたので、ほかのゲームについては気にしないまま本作の開発に集中できていますね。

門脇氏:
同じものにしたくないという意味では、ほかのタイトルを参考にしているといえるかもしれません。

二瓶氏:
侍を題材にしたゲームはいくつも作られていますし、和の雰囲気を忠実に再現して海外で大ヒットを記録したタイトルも存在します。そうした和の雰囲気の再現を重視することの良さはもちろん私たちもわかるのですが、『鬼武者』の新作としては戦国とファンタジーを融合させた独自の世界観も大切にしたいんですよ。

門脇氏:
アクションについても、カプコンらしさを追求していきたいところです。プレイヤーから「やっぱり、カプコンのアクションゲームはすごいよな」といってもらえるようなタイトルにしなければならないと思っています。

――2ndトレイラーで姿を見せた佐々木巌流は狂気を感じさせるような雰囲気があったのですが、彼はどのような性格をしているのでしょうか。メインストーリーでは彼がどのように描かれていくのかも教えてください。

二瓶氏:
本作の宮本武蔵と佐々木巌流は、武蔵が鬼の篭手を身に付ける前から因縁があります。2人は素の人間だったときから、何度も戦いを繰り広げてきました。巌流から武蔵に絡んできて、その都度武蔵が勝利を収めています。巌流は自分の負けを認めることができません。巌流は天才肌の剣士で、自己流で腕を磨いてきました。巌流の性格はひねくれたところがあって、それはアクションにも反映されています。フェイントを駆使して攻撃を決めたときは、相手を馬鹿にしたかのような笑みを浮かべます。鬼の篭手を手に入れた巌流はより、狂気的な振る舞いを見せるようになっていくんですよ。悪に染まって強くなった巌流と侍としてまっとうに生きてきた武蔵の戦いがストーリーでも大きな見どころとなっています。

宮本武蔵と三船敏郎で世界中に注目を集める作品に

――『鬼武者』にはどのような特徴があるのでしょうか?本作で『鬼武者』デビューする新規層に向けて「鬼武者らしさ」を言語化していただけると幸いです。

二瓶氏:
『鬼武者』の特徴を端的にいうと、単純な剣戟アクションゲームではないということですね。鬼の篭手を身に着けた侍の主人公は剣術だけでなく、魂吸収といったアクションも駆使して先へ進んでいきます。戦国時代とダークファンタジーを融合させた独特な世界観も『鬼武者』の特徴として挙げられますね。初代作の当時から斬新な世界観でしたし、今なお独自の魅力になっていると思います。

――カプコンのIRページによると『鬼武者』シリーズは総販売本数870万本を突破しておりグローバルな人気もうかがえますが、新作を含め「バッサリ感」というシリーズのキャッチコピーは海外ではどういう風にアピールされているのでしょうか?

門脇氏:
「バッサリ感」については、海外でも同じような表現を使っているようですね。シリーズ久しぶりの新作となる本作では、日本国内と海外で同じキーワードを設定してグローバルに展開していこうと開発当初から決めました。作品名の『鬼武者 Way of the Sword』は統一されたものになっています。そうした本作をグローバルで展開するのにうってつけの主人公が、三船敏郎さんをフェイスモデルにした宮本武蔵でした。「剣豪」とも称えられる宮本武蔵と世界的な俳優である三船敏郎さんの組み合わせは、世界中のユーザーから興味をもってもらえるんじゃないかなと考えています。

――Netflixのアニメ版『鬼武者』にも三船敏郎さんをイメージした宮本武蔵が登場しましたが、本作と何らかの関係があるのでしょうか?

門脇氏:
本作とNetflixのアニメ版『鬼武者』はストーリーや設定がつながっていません。それぞれが独立した作品となっています。同時進行的にNetflixのアニメ版『鬼武者』と本作が作られていったというわけではないんですよ。しかしながら、三船敏郎さんのフェイスモデルを主人公に使いたいという声は以前からカプコン社内では挙がっていました。

――「鬼武者らしさ」を継承するために、本作の開発で注意したことを教えてください。過去作の開発陣からフィードバックを得られる機会はあったのでしょうか?

二瓶氏:
一閃については、ずっとこだわっていますね。トレイラーで公開された一閃についても、製品版に向けてまだブラッシュアップしているところです。よりきれいな太刀筋の表現方法などを模索して、とにかく気持ちのいい一閃を追求しています。過去作のスタッフともコミュニケーションを取って、開発を進めていますね。一閃の気持ちよさや魂吸収の駆け引きについては過去作から本作に受け継がれている部分です。

門脇氏:
日本向けのトレイラーは部位欠損なしの設定で撮影しています。そういう意味では、本来の姿をお見せできていないというところはありますね。ゲームでは部位欠損の有無を設定で変更できますので、部位欠損の表現を有効にした状態でプレイしていただくとトレイラーとはまた違った印象を受けると思います。本作はCERO:Z(18才以上のみ対象)のレーティングとなっていますが、日本国内版と海外版で違いが出るようなことはしません。

――本作をZ指定のゲームにすることについて、どのような議論がありましたか?

門脇氏:
開発の初期段階では『バイオハザード RE:2』(2019年)や『バイオハザード ヴィレッジ』(2021年)のように、CERO:D(17才以上対象)とCERO:Z(18才以上のみ対象)の両方を用意することも考えていました。しかし、そうしたタイトルにおいて、プレイヤーが手に取ってくれるのはZ指定版が多かったんです。そうしたこともあって、『鬼武者 Way of the Sword』はZ指定のみとなっています。

―――ゴア表現を極力排除したD指定で発売しようみたいな選択にならなかったのはどうしてでしょうか?

門脇氏:
D指定の範囲で表現しようという気持ちはそもそもありませんでした。プレゼン映像では清水寺のステージを観ていただきましたが、父が子を投げ捨てるような衝撃的なシーンが本作にはたくさんあります。そうしたシーンが含まれていることからZ指定はマストでした。D指定のバージョンを別に作るとしたら大幅な変更が必要となってくるでしょうし、それが実現できるかもわかりません。部位欠損というゴア表現だけではなく、ストーリー描写においてもZ指定相当のゲームになっているんですよ。

剣の達人のモーキャプ収録や寺で録音など開発陣のこだわり

――シリーズの特徴である「一閃」というアクションを表現するときに気をつけているのはどのようなことでしょうか?

二瓶氏:
本作では、侍としての一閃と鬼武者としての一閃で表現に違いが出るようにしています。両者にはエフェクトやスピード感の違いが存在しますが、現時点でもまだこだわって作り込んでいるところですね。一閃が決まったときの敵のリアクションも、一閃をより気持ちよくすることにつながります。

門脇氏:
シリーズ初期の一閃は目に見えない速さでしたね。どういう形の一閃がいいのかについては、試行錯誤を繰り返しています。

――宮本武蔵のアクションを作り上げるために、こだわったところを教えてください。

二瓶氏:
剣の達人をお呼びしてモーションキャプチャーの収録を行いました。ただ、剣の達人ともなると、相手に自分の動きを読ませないことに長けているんです。その達人の動きをそのままゲームに取り入れてしまうと、剣の心得のないプレイヤーにとっては遊びにくいものになってしまうことに気がつきました。そこからはゲーム向けのアクションになることを意識して、モーションの調整を重ねましたね。

――本作のサウンド制作についてのこだわりはどのようなものになっているのでしょうか?

二瓶氏:
これまでのシリーズ作にはなかった試みとして、3Dサウンドに挑戦しました。実在する寺のなかで音声を収録させていただいて、寺の鐘の音も収録したんですよ。そういったサウンド面のこだわりが本作には存在します。カットシーンについても単にBGMを流すという形にはなっていません。場合によっては、音楽を流さないでキャラクターの表情を見せるシーンも存在します。

門脇氏:
リアリティを追求したサウンドを作りたいというスタッフもいます。寺のなかで会話するというシーンにはそのこだわりが表現されていますね。響き方をリアルに再現したいということで、特殊な機材や収録方法を使って音声を収録しています。

――幻魔のデザインについてはどのようなことに気を付けているのでしょうか?

二瓶氏:
幻魔がおどろおどろしい存在であることは、過去作と変わりはありません。本作の幻魔のデザインについては、グロテスクな面がありながらもカッコいいと思ってもらえるようなものを意識しています。和服を着ている幻魔も存在すれば、肉体が鎧のようになっている幻魔も存在しますね。


2026年の発売に向けて開発は佳境に

――『鬼武者』シリーズのさらなるリマスターなどは計画していないのでしょうか?

門脇氏:
『鬼武者』と『鬼武者2』がリマスターされたように、『鬼武者3』や『新 鬼武者 DAWN OF DREAMS』などもリマスターしてほしいという要望が存在することは理解しています。できればやりたいなと個人的に思っているんですけど、リマスターも結構な開発期間がかかるんですよ。『鬼武者』と『鬼武者2』のリマスターでは、権利関係の整理やリマスターとしての移植開発にもかなりの期間が必要でした。いまは最新作の『鬼武者 Way of the Sword』に注力していますので、そちらを期待していただけると幸いです。

――化け物が出てくるゲームの開発現場には怪奇現象が発生するということもあるそうですが、本作の開発ではいかがだったのでしょうか?

門脇氏:
本作の開発が始まったときに、チームのメンバー全員で清水寺に行ってお祓いをしてもらいました。

二瓶氏:
お祓いに行ったときの写真を、開発現場のフロアに飾っています。そのおかげもあって、開発中に不可思議なことは起きていませんね(笑)

門脇氏:
最近のゲーム開発の現場では、夜通しで仕事をすることもありません。夜に私たちが現場にいないだけで、もしかしたら怪奇現象が発生しているかもしれませんね(笑)

――ドイツで開催されるgamescom 2025では本作を試遊できるとのことでしたが、日本国内で本作を体験できる機会はあるのでしょうか?

門脇氏:
日本国内で試遊できる機会を作るとしたらさまざまな調整が必要になりますので、断言はできません。しかし、私の個人的な気持ちとしては日本国内でも本作を試遊できる機会を作りたいと思っています。

――最後に『鬼武者』シリーズファンと、本作から『鬼武者』に興味のある新規層の両方に向けてメッセージをお願いします。

門脇氏:
本作は「バッサリ感」を代名詞とする『鬼武者』シリーズの新作として、爽快感あふれるアクションゲームを目指しています。シリーズを追ってくださっているファンの方にも、本作から『鬼武者』に入る方の両方に楽しんでいただけるタイトルになると思います。2026年の発売に向けて本作の開発はまさに佳境を迎えているところですが、期待して待っていてください。

二瓶氏:
久しぶりのシリーズ新作となることから、本作への期待の高さを感じています。私たち開発陣が理想とする『鬼武者』を作り上げたいと思うと同時に、シリーズのファンから「これは鬼武者だね」と認めていただけるようにより一層開発に集中していきます。本作で初めて『鬼武者』に触れる新規の皆様につきましては剣戟のアクションはもちろん、ストーリーやキャラクターについても楽しんでいただけるようなものにしていきたいと考えています。2026年の発売を楽しみにしていてください。

──ありがとうございました。

鬼武者 Way of the Sword』は、2026年に発売予定。プラットフォームは、PS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)となっている。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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