Ubisoft、「色覚異常向けアクセシビリティ開発ツール」を無料公開。3つの色覚型に対応、テスト開発しやすい機能充実

Ubisoftは4月15日、Githubにて「Chroma」を無料公開した。色覚異常向けのアクセシビリティ開発ツールだ。

Ubisoftは4月15日、Githubにて色覚異常向け開発ツール「Chroma」を無料公開した。本ツールはゲーム業界全体におけるアクセシビリティの拡充のため、オープンソースで公開されている。

「Chroma」は世界に約3億人存在すると推定される、色覚異常を持った人々のためのゲーム開発ツールだ。主に1型2色覚(P型色覚)、2型2色覚(D型色覚)、3型2色覚(T型色覚)の3つの色覚型に対応した開発モードが用意されている。本ツールはオープンソースソフトであるColor Oracleのアルゴリズムをベースに開発されている。

本ツールの特徴はリアルタイムのフィルター処理に対応していること。従来の開発ツールでは、スクリーンショットにおけるシミュレーションや、ゲーム内設定を変えた状態で起動しなければテストが行えなかったという。しかし「Chroma」を利用すれば、ゲーム内のパフォーマンスを落とすことなく、即座に確認が行えるとされる。また、デュアルスクリーンでの動作も可能。さらにホットキーで動作し、カスタマイズ可能なオーバーレイを備えているとのこと。

「Chroma」は2021年に、インドに拠点を置く品質管理チームによって開発が始まった。それ以降、Ubisoft内での作品開発において大きな効果をもたらしているという。ちなみに上画像は『The Crew Motorfest』で本ツールを動作させたスクリーンショットとみられる。同作のアクセシビリティ開発においても、「Chroma」が一役買っているのだろう。

アクセシビリティディレクターのDavid Tisserand氏は、本ツールによる開発効率の向上を強調している。また、同氏は「アクセシビリティの拡充はデベロッパー同士の競争ではなく、業界全体で共に進む旅である」ともコメント。本ツールがオープンソースで公開されたのも、そうした理念に基づいているのだろう。David氏は「本ツールを活用して、ぜひフィードバックを寄せてほしい」としており、今後も積極的に開発がおこなわれるようだ。

近年ではUbisoftやPlayStation Studiosなど、大手各社の作品でアクセシビリティが充実している(関連記事)。一方でインディーや個人での開発ではそこまでリソースを割けない状況もあるだろう。そうしたなかで、今回の「Chroma」の無料公開によって、色覚異常向けのアクセシビリティが実装される作品の増加も期待されそうだ。近年ではElectronic Artsもアクセシビリティ系の特許をさまざま無料開放するなど業界全体でアクセシビリティ技術の公開が進んでいる(関連記事)。誰もがゲームを楽しみ、それに対応したゲーム開発がしやすい未来に向けて、業界が歩みを進めている状況がうかがえる。

「Chroma」はGithubにて無料公開されている。

Haru Takitoh
Haru Takitoh

アクションゲームとゲーム音楽が好きです。一番好きなゲームは『アーマード・コア6』、衝撃を受けたゲーム音楽は『サルゲッチュ』。

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