新作アニメ調格闘バトロワ『ASURAJANG』インタビュー。D-ZARDのはじまりから開発時に苦労した点などを訊く

『ASURAJANG』はいろんな先人にならいつつ、『ASURAJANG』ならではの道を往く。開発元D-ZARDのプロデューサー、キム・サンジン氏に出発点から苦労話などいろいろ訊いた
パブリッシャーのG・O・Pは、『ASURAJANG(アスラジャン)』を3月27日17時よりサービス開始予定(関連記事)。対応プラットフォームはPC(Steam/Pmang)となる。本作は最大33人同時プレイが行えるバトルロイヤルゲームであり、アニメ調のビジュアルを採用している点や、トップビューゲームながら格闘要素を中心とした駆け引きを採用している点が特徴だ。
この度弊誌では、『ASURAJANG』を手がける韓国企業D-ZARD所属の本作ディレクター、キム・サンジン氏にメールインタビューを実施。D-ZARDの出発点から開発の苦労話まで、さまざまな質問に答えていただいた。
――自己紹介をお願いします。また、D-ZARDはどのような会社なのでしょうか。
キム・サンジン氏:
こんにちは、はじめまして!『ASURAJANG』のディレクター、キム・サンジンです。
私は韓国のゲーム会社であるNCSOFTやKRAFTONで、さまざまなゲーム開発に携わってきました。そして2021年にD-ZARDに加わりました。
D-ZARDは、NCSOFT出身の開発者たちが「本格的なアクションゲームを作りたい」という想いから設立したスタートアップのゲーム開発会社です。現在、『ASURAJANG』と『プリンセスメーカー』の新作を開発しています。

――D-ZARDはプリンセスメーカーの新作も作られています。そんな中で、新作がバトルロイヤルというのは意外です。そんな本作の立ち上げの経緯を教えてください。
キム・サンジン氏:
『ASURAJANG』のプロジェクトは、D-ZARDの設立と同時にスタートしました。創立メンバー全員が「最高のアクションゲームを作ろう!」という強い想いを持っており、その熱意が一つになって開発が始まりました。
そんな『ASURAJANG』は現在バトルロイヤルモードのみのため、ユーザーにとってはバトルロイヤルゲームのように感じられるかもしれません。しかし、今後はさまざまな対戦モードを追加する予定です。そうなれば、単なるバトルロイヤルではなく、”アクションPvP”ゲームとして認識されるのではないかと期待しています。

――企画はいつ頃スタートしたのでしょうか。バトルロイヤルの数多くの作品が出ていた時期に始まったのでしょうか?ちなみに最近ではバトルロイヤルの数が減りましたが……チャンスだと感じますか?(笑)
キム・サンジン氏:
実は、初期の企画自体は2021年頃に始まりました。「誰でも気軽に楽しめるアクションPvPゲームを作りたい!」という思いが出発点でした。しかし、1対1や3対3、5対5といったルールでは、プレイヤーにとって負担が大きくなってしまうのではないかと考えました。もともとアクションゲームは難易度が高いジャンルなので、ルールまで負担になってしまうと、プレイするハードルがさらに上がってしまいますよね。
ご存じの通り、『PUBG』や『フォートナイト』のようなゲームがバトルロイヤルモードを通じてFPSプレイヤーの数を飛躍的に増やしましたよね。「運が良ければ1位になれる」というバトルロイヤルのルールが、ジャンルの裾野を大きく広げたのを目の当たりにして、「コアなプレイが難しいほど、まずは負担の少ないモードから展開するべきだ」と考え、バトルロイヤルモードの開発に力を入れました。今がチャンスかどうかは正直わかりません(笑)
『PUBG』以降、膨大な数のバトルロイヤルゲームが登場し、そして静かに消えていきました。それだけ、プレイヤーの求める「面白さの基準」が高くなっているということですよね。ただ、『ASURAJANG』ならではの面白さは確実にあると信じています。だからこそ、今回のリリースを決めました!
――ゲームシステム的に影響を受けたゲームを教えてください。
キム・サンジン氏:
ゲーム開発者として、私が特に尊敬している作品がいくつかあります。それは、フロム・ソフトウェアの『ダークソウル』シリーズと『SEKIRO』、そしてカプコンの『モンスターハンター』シリーズです。もちろん、ただのファンというだけでなく、これらの作品は私の開発スタイルに大きな影響を与えています。
特に、『ダークソウル3』のPvPを楽しんでいたときに、こんな考えが浮かびました。「スタミナベースのアクションPvPゲームを作ったら絶対に面白いはず。なぜ、世の中にこういうゲームが存在しないのだろう?」そして、チャンスが訪れたとき、これらの作品の特徴である「タイミング反応アクション」と「スタミナシステム」を軸にしたアクションゲームの開発を決意しました。
さらに、私が幼い頃に夢中になって遊んだWESTWOODの『NOX』からは、クォータービューと戦闘テンポの要素を取り入れました。そして、乱闘ゲームの名作である『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズからは、「落下による敗北」と、「スマッシュ」の要素をミックスし、戦闘デザインに活かしています。なお「スマッシュ」にあたる要素については、『ASURAJANG』ではBlowと呼んでいます。これらの作品から得たインスピレーションを組み合わせることで、『ASURAJANG』ならではの独自の戦闘体験が生まれたと考えています。
――アートスタイルのモチーフを教えてください。いろんな地域文化が混ざっていて面白いです。ちなみにアニメ風の部分はどの作品からの影響が強いですか?
キム・サンジン氏:
ゲームの初期のモチーフは仏教のコンセプト、特に「六道輪廻」やインド神話からインスピレーションを受け、東洋風の世界観を作りたいと考えていました。ゲームタイトルの『ASURAJANG』も、「アスラ(阿修羅)」というキャラクターたちが集まる場所という意味を持たせています。
しかし、開発の中盤から後半にかけては、マルチバースの概念で世界観を拡張し、より多様なコンセプトを受け入れられるような世界観に変化させました。そのため、現在の『ASURAJANG』は現代・東洋・未来・スチームパンク・中世など、さまざまな要素が混ざり合ったスタイルとなっています。
アニメスタイルについては、さまざまなゲーム作品から影響を受けました。特に、『ゼルダの伝説』、『原神』、『ゼンレスゾーンゼロ』、そして『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』といった、素晴らしい先輩作品たちから大きな影響を受けています。これらの作品に共通する「魅力的なビジュアルとゲーム性の融合」を目指し、私たちのアートスタイルにもそのエッセンスを取り入れました。


――キム・サンジンさんの推しているキャラを教えてください。
キム・サンジン氏:
私はディレクターでありながら、戦闘デザインやバランス調整など、ゲーム全体のデザインも担当しています。そのため、バランスを公平に保つ立場として、特定のキャラクターを「おすすめする」のは難しいのですが……(笑)今回はおすすめというよりも、「私が一番好きなキャラクター」を紹介する方が、きっと面白いのではないかと思います!
私が最も愛着を持っているキャラクターは「リュウアン」です。リュウアンは超接近戦を得意とするキャラクターですが、遠距離キャラクターにも対抗できるように設計するため、長い時間悩みました。 そして、その結果生まれたのが現在のリュウアンです。コンセプトとしては、「神の力が宿る包帯を投げつけて敵を縛り、動きを封じた後、近づいて連続攻撃を叩き込む!」というものです。
特にリュウアンはデザインに非常に苦労したため、私にとって特別な存在でもあります。実際にプレイしていただければ、リュウアンの独特な戦闘スタイルと、その魅力を感じていただけるのではないかと思います!

――多人数バトロワ系ゲームは多人数の同時対戦プレイを実現する以上、プログラムはもちろん、バランス取りなど含めて開発が難しいジャンルと言えると思います。その中でも、もっとも苦労した点をディレクター目線から教えてください!
キム・サンジン氏:
まず、このような『ASURAJANG』の開発の難しさを理解していただき、この質問をしてくださったことに、本当に感動しました。本作には33人が同時にフレーム単位でアクションバトルをおこなっても問題のないネットワークとプログラミング技術が必要です。
そのほか類似のゲームが存在せず、参考にできるものがないゲームデザインの難しさ、1体のキャラクターをきちんと動かすために必要だった膨大なアニメーションのクリップ、数え切れないほどのエフェクトとサウンド、そして背景……。振り返ってみると、簡単なことは本当に一つもなかったと感じています。
その中でも、最も困難だったのは、やはり「面白さ」を作り出すことでした。単にキャラクターを操作して他のプレイヤーと戦うだけでは、「楽しい」とは言えません。ディレクターとして最も辛かった瞬間は、皆でテストプレイをしていて、周りの反応から「面白くない」という空気を感じたときです。あの瞬間は、本当に心が折れそうでした。
それでも、試行錯誤を重ねながら、何度も改善と調整を行い、今では開発チーム全員が「早く次のテストプレイがしたい!」と楽しみにしてくれるほど、プレイを心から楽しんでくれるようになりました。それが今は何より嬉しいです。


――ベータを遊んでいて「煉獄」モードの意図が気になりました。どのようなことを目的としたコンテンツですか?
キム・サンジン氏:
多くのバトルロイヤルゲームをプレイしながら、「プレイ中に死亡した際の虚しさをどう減らせるか」を常に考えてきました。特にTTK(Time to Kill、敵を倒すまでの時間)が短いゲームほど、その虚しさは大きいと感じています。
例えば、20分間必死にアイテムを集めて、いざ戦闘エリアに入った瞬間、どこからか飛んできた銃弾でヘッドショットされて即死してしまう……そんな経験をすると、正直そのままゲームを続けるのは難しくなります。これがバトルロイヤルモードにおける最大の問題点だと考えていました。
そこで導入したのが「煉獄」モードです。このモードでは、ゲーム中盤までに死亡しても、もう一度挑戦できるチャンスを得られます。ただし、「煉獄」で1分間生き残るという条件があります。実は、煉獄は「敗者復活のチャンス」であると同時に、「新たな機会の場」でもあります。もし序盤のアイテム収集に失敗した場合は、あえて煉獄に入り、「アストラ(装備品)セット」を装備した幽霊を倒すことで、強力なアイテムを獲得してリスタートするという戦略も可能です。このシステムによって、ゲーム序盤での不運な敗北でも、再挑戦できる希望が生まれ、プレイヤーが最後まで楽しめるようにしたいという意図があります。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。
キム・サンジン氏:
長い時間をかけて一生懸命作り上げてきた『ASURAJANG』を、ついに皆さんに正式サービスとしてお届けできることを本当に嬉しく思います。『ASURAJANG』は、独特な操作感とゲームプレイを持つため、最初は戸惑われるかもしれません。しかし、私はこのゲームにしかない「唯一無二の楽しさ」があると信じています。ぜひ、ユーザーの皆さんに『ASURAJANG』ならではの魅力を存分に味わっていただければ幸いです。そして、また次の機会に皆さんとお会いできることを楽しみにしています。ありがとうございます!


――ありがとうございました。
パブリッシャーのG・O・Pは、『ASURAJANG(アスラジャン)』を3月27日17時よりサービス開始予定だ。
©D-ZARD Inc. ALL RIGHTS RESERVED. ©GOP Co., Ltd. All Rights Reserved.