『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』(まどドラ)50時間先行プレイ感想。ただの『スタレ』っぽいゲームじゃない、「まどマギ」大作運営ゲームの底力

この記事では、『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』を約50時間プレイした本作の感想をお伝えしたい。

『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』は、圧倒的なボリュームで『魔法少女まどか☆マギカ』の世界に浸れるRPGだ。シリーズ歴代のキャラクターたちでパーティを組んで原作のストーリーを追体験していると、時間が溶けていく。弊誌は、本作を先行して試遊する機会を得た。この記事では、約50時間プレイした本作の感想をお伝えしたい。なお、試遊は開発中のデータが使用されているため、配信されるバージョンとは異なる場合がある。

『魔法少女まどか☆マギカ』の世界に浸れる膨大なストーリー

本作は、2011年に放送されたテレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』とその関連作を原作としたゲームだ。プレイヤーは記憶をなくしてしまった魔法少女として、シリーズ作品のストーリーを追体験していく。本作はスマートフォン向けゲームでよくあるステージクリア方式を採用しているが、ストーリーを進めるのにいわゆる「スタミナ」は消費しない。キャラクターの育成素材を集める強化クエストこそスタミナの消費は必要になるものの、ストーリーはプレイヤーの好きなように進められるのはいいところだ。

ストーリーのボリュームは凄まじい。テレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』をはじめ、以前スマートフォン向けゲームとして配信されていた『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』や外伝漫画作品の『魔法少女おりこ☆マギカ』などのストーリーを追体験できる。今回の試遊でプレイできた範囲だけでも、キャラクターを育成してストーリーをクリアするまでに約50時間かかった。圧倒的なボリュームと聞くとプレイをためらってしまうかもしれないが、細かく分けられたステージをクリアして少しずつストーリーを進めていくことができる。

もとになった作品を再現したストーリーの作り込みも優れており、とりわけ今回の試遊では『魔法少女まどか☆マギカ』のステージはキャラクターボイス付きでストーリーが展開されていった。ゲームは主に3DCGで表現されるが、イベントシーンでは2Dのアニメを立体的に表現するLive2Dが積極的に用いられている。そのことによって、アドベンチャーゲームのようにストーリーを読み進めていくことが可能だ。原作を知らなくてもストーリーを理解できるのは称賛すべきだろう。『魔法少女まどか☆マギカ』は仲間たちと過ごす日常パートと過酷な運命に立ち向かう非日常パートの対比が際立つ作品であり、原作の魅力的なエピソードの数々を本作は再現した。原作を踏襲した演出やムービーも用意されているので、ファンはそちらにも期待してほしい。

Screenshot
Screenshot

原作アニメに加えて外伝作品のストーリーも追体験可能なため、本作は『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズを横断的に知ることのできるタイトルといえるだろう。そうした意味では、記憶喪失の主人公を採用したのは正解だった。無色透明の主人公を通じて、プレイヤーは魔法少女たちのストーリーを味わうことができる。本作オリジナルの主人公であるからこそ、歴代キャラクターたちのストーリーを群像劇のように楽しむことができるのだ。

主人公は、ストーリー冒頭で「灯台劇場」と呼ばれる場所を訪れる。そこは、さまざまな魔法少女たちの記憶を見ることのできる「記憶の窓」とつながった特別な場所だ。原作でお馴染みの「キュゥべえ」によく似た「A-Q」を相棒にして、主人公は記憶の窓を開いていく。窓の先には、最奥にボスが待ち受ける結界が広がっている。道中のステージは回想、探索、バトルに分かれており、それぞれのステージをクリアすることで主人公は結界の奥へと進んでいく。

バトルのパーティはプレイヤーの編成によるが、各ストーリーでメインになるキャラクターは決まっている。たとえば「暗闇の魔女(巴マミ編の記憶)」であれば、巴マミが主役となる形だ。回想のステージで明かされるストーリーはもちろん巴マミが中心となるし、探索ステージでは巴マミを直接操作することができる。探索自体はシンプルなものだが、魔女の作り出した結界の内部を巴マミで探索できるだけでもファンにとってはうれしい。ちょっとした寄り道でアイテムを入手できることもあった。試遊した限りでは隅から隅まで探索しなければ先に進めないということはなかったので、ストーリーの円滑な進行を妨げないバランスになっていたと思う。

『崩壊:スターレイル』ほど、本作は広大で複雑なフィールドを探索するわけではない。ほぼすべての探索要素は探索ステージのなかだけであり、分岐路を進むかそのままゴールを目指すかなどシンプルなものだ。スケールとしては本作の探索は『崩壊:スターレイル』の探索に劣るが、ステージクリア形式と考えると探索はこの程度になるのも無理はない。本作は魔法少女たちの記憶を取り戻すことを主眼としており、銀河の惑星から惑星を旅して、それぞれの星に拠点を持つような『崩壊:スターレイル』とは大きく異なるのだ。

ブレイクしてからの高倍率ダメージが爽快なターン制コマンドバトル

本作のバトルシステムは、最大5人パーティによるターン制コマンドバトルだ。キャラクターは通常攻撃のほかに、SP(スキルポイント)を消費することで強力な戦闘スキルを使用可能。SPは最大で6 つまでしか蓄積できないので、どのキャラクターがいつ戦闘スキルを使うのかがカギとなってくる。キャラクター個別の必殺技も存在し、ゲージを溜めたあとは任意のタイミングで必殺技を発動可能だ。

敵はHPのほかに「ブレイクゲージ」を持っており、プレイヤーキャラクターが攻撃することでゲージを削ることが可能。ゲージを削りきったあとはブレイク状態となり、敵の行動順を遅らせつつ、こちらから与えるダメージが上昇する。ブレイク後も敵に攻撃を当て続けることでダメージ倍率は上昇していき、ボスのブレイクゲージを削り切ってから、ダメージ倍率を300%から800%まで上昇させる機会があった。ブレイクゲージを削りきったあとに、パーティ全員で攻撃を叩き込んでいくのは本作の華であり爽快というほかない。800%もの高倍率となると、文字通り桁違いのダメージを出せる。

たしかに、本作のバトルシステムやユーザーインターフェースは『崩壊:スターレイル』と似ているのは否定できない。似ている。しかし、採用自体の意義も見いだせる。というのも、ブレイクゲージを削り切ってから連続で攻撃で叩き込んでいくのは『魔法少女まどか☆マギカ』の世界観に合っている。なぜならば、『魔法少女まどか☆マギカ』は魔法少女たちが無慈悲な世界のシステムに「連帯して抗う」物語であるからだ。

今回の試遊でも、ボスの苛烈な攻撃を耐え抜いてからブレイクして反撃していくことが何度もあった。魔法少女たちが次から次へと攻撃していくのは共闘感に満ちており、ボスを倒したときは達成感に包まれる。ユーザーインターフェースが『崩壊:スターレイル』と似ていつつも、必殺技ゲージが魔法少女にとって極めて重要な「ソウルジェム」の形になっており世界観に合わせた独自のデザインになっているのが好印象だ。原作へのリスペクトは随所に存在しているので、開発陣の熱意が窺い知れる。

なにより本作の肝であるブレイクゲージを削り切ってからの攻撃倍率上昇は、『崩壊:スターレイル』とは異なる独自の境地に達していた。つまり、ブレイクゲージを削ってからの敵HPのゲージの減りが顕著なのである。敵の過酷な攻撃を耐え忍びつつブレイクゲージを削り切り、相手を高倍率で一気に倒すというのはシンプルでありながらも本作がたどり着いた境地だ。

Screenshot

キャラクターには、得意とする「ロール(役割)」 が全6種類のなかから割り当てられている。ブレイクゲージを削るのに長けた「ブレイカー」や高い火力でダメージを与える「アタッカー」などもあれば、味方の支援に特化した「バッファー」や回復能力を持つ「ヒーラー」の役割も登場した。最大5人パーティであるため、6つすべての役割を同時に編成することはできない。最大4人パーテイだった『崩壊:スターレイル』よりも、本作は編成できる人数が多いので役割を組み立てる自由度は高い。それぞれの役割もわかりやすくなっており、そこまで悩むことなくパーティを編成できるのは本作の長所だ。とりわけ5人目にどの役割のキャラクターを編成に入れるかはプレイヤーによって、大きく変わってくるだろう。

同じ役割のキャラクターといえども、所持スキルはそれぞれ異なるのでキャラクター同士の組み合わせが重要となる。味方全体にバリア を張るスキルを持つ「ディフェンダー」と相手をブレイクさせたときにHP回復の特性を持つ「ブレイカー」を組み合わせることで、「ヒーラー」なしでも戦えるというような形でプレイヤーなりに工夫することができるのだ。キャラクターはガチャで入手可能で、試遊では数十人がプレイアブルとして存在した。

Screenshot

豊富なキャラクター育成要素

パーティの強さは、編成時の「総戦力」という概念で数値化される。キャラクターや武器に相当する「ポートレイト」をレベルアップさせることで、総戦力は上昇していく。キャラクターの育成要素は複数用意されており、キャラクター自体のレベルのほかには当該キャラクターの「魔力」を解放 させることで、各種ステータスやアビリティが強くなる仕組みも存在した。キャラクター自体のレベルアップや魔力の解放 に使う素材を集めるクエストは、スタミナを消費することで挑戦できる。

キャラクターへの愛着を増す育成要素としては、レベルに応じて各人のストーリーを見たりボイスを入手できる「こころの器」が印象的だった。こころの器のレベルを上げることで能力が上昇するだけでなく、そのキャラクターのことを深く知れるようになるのはいい。育成要素はストーリー進行に応じて解放されていくので無理なく覚えられるが、正直に言って育成要素は複雑すぎるような気がした。

こころの器を強化する素材が手に入るクエストは1日に挑戦できる回数が制限されており、どうしてもバトルで使うキャラクターが中心になってしまうのも惜しいところだ。メインストーリーは加速度的に熱を帯びていくのに、そのキャラクターのストーリー開示は遅れがちになってしまう。各種の育成クエストは1度クリアすれば、以後はスキップ機能を使って周回 することができる。『崩壊:スターレイル』よりも高速でキャラクター育成の素材を集めることができるため、プレイの負担は軽く本作のサブゲーム適性はかなり高い。

Screenshot
Screenshot

多岐にわたる育成要素は複雑だが、それを楽しむコンテンツは用意されている。メインストーリーでクリアしたステージに登場する敵が強くなって登場する「Battle モード」や、より高難易度の「Nightmareモード」が追加されたのを試遊でも確認した。プレイヤー同士が協力してミッションクリアを目指す「ユニオン」や別のプレイヤーと戦う「プレイヤーマッチ」も用意されており、本作はマルチプレイゲームとしての要素も併せ持つ。

Screenshot

充実のギャラリー機能

本作はキャラクター情報を閲覧したり、作中で使われた楽曲を視聴できたりするギャラリーモードが充実している。本作はゲームでありながらも、『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズの資料集的な要素も兼ねていると言っても間違いではない。

『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズに登場するキャラクターたちは膨大な数となっているが、ガチャで引いたキャラクターはギャラリーモードでそのバックボーンを知ることができる。魔法少女になった背景を知ることで、そのキャラクターをパーティ編成に入れたくなったこともあった。

ギャラリーモードの仕組みからして最初は少ないが、メインストーリーを進めていくうちに画像や楽曲が増えていく。印象的なシーンを切り出したポートレイトは、原作を知ってから見ると感慨もひとしおだ。集めたものはギャラリーモードで一覧的に表示されるので、それを見た瞬間に思い出が蘇ってくる。本作のギャラリーモードはいわば『魔法少女まどか☆マギカ』の博物館であり、プレイすればするほどそのコレクションは充実していく。今回の試遊では約50時間プレイしたが、それでもすべてのコレクションアイテムを入手することはできなかった。そのボリュームと充実っぷりはプレイした時間に見合うものだ。

Screenshot
Screenshot

原作再現のメインストーリーとやりこみ要素満載のキャラクター育成に加えて、充実したギャラリーモードは『魔法少女まどか☆マギカ』シリーズの世界観に浸れる最高のファンアイテムだ。その丁寧な作り込みによって、原作のファンだけでなく本作から『魔法少女まどか☆マギカ』を知る人も触れやすい。手軽に進めやすいスマートフォン向けゲームの形式を取りつつも、やりこみ要素もふんだんに用意されている。『崩壊:スターレイル』と似ているバトルシステムは物議を呼んだが、似ていることは事実として、苦境に耐え抜いた魔法少女たちが一気呵成に強敵を倒すことができるのはこの上なく爽快だ。原作ファンだけでなく、ターン制RPGが好きな方も一度さわってみるといいだろう。

『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』は、2025年3月27日にリリース予定。基本プレイ無料タイトルとして、まずはiOS/Android/向けに配信される。後日PC(Steam)向けにも配信予定である。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

記事本文: 44