次世代大型RPG『Clair Obscur: Expedition 33』の開発陣は、JRPGの大ファンだからこそ“ただのJRPG”は作りたくなかった。フランスから届いたJRPGへの熱い思い

フランスのデベロッパーSandfall Interactiveは、『Clair Obscur: Expedition 33』をPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに4月24日に発売する。ゲーム内表示は日本語に対応する。
『Clair Obscur: Expedition 33』はターン制RPGだ。特定の年齢の人々を消し去ってしまう呪いの数字を描く「ペイントレス」が人々を脅かす世界で、ペイントレス討伐の旅に出る第33遠征隊の冒険を描いている。また、ターン制RPGでありながら、敵の攻撃をリアルタイムでパリィや回避できるリアクティブな戦闘システムも話題を呼んでいる。
本作はJRPGにインスパイアされており、ゲームシステムやキャラクターの人物描写などにはその影響が強く表れている。一方で、世界観や映像表現などのビジュアル面に関しては、フランスらしさを感じられるこだわりが随所に見られる。
弊誌ではSandfall InteractiveのGuillaume Broche氏とFrancois Meurisse氏にインタビューを実施。独自の魅力を放つ本作の開発経緯や、リリースへの意気込みについてお届けする。本インタビューと共に開催されていた、本作の試遊体験会の感想記事はこちら。

──自己紹介をお願いします。
Francois Meurisse(以下、Meurisse)氏:
Sandfall InteractiveのCOO(最高執行責任者)兼プロダクションディレクターの、Francois Meurisseです。
Guillaume Broche(以下、Broche)氏:
Sandfall InteractiveのCEO(最高経営責任者)兼クリエイティブディレクターの、Guillaume Brocheです。
Meurisse氏:
私たちはもともと日本がものすごく大好きで、リスペクトをもっています。旅行としては何度も日本に来ているんですが、今回は初めて出張という形で日本を訪れるので、すごく楽しみにしていました。

──本作の魅力を教えて下さい。
Broche氏:
本作は、ストーリー、ゲームプレイ、世界観の3つの大きな柱で構成されています。特にストーリーに関しては人の心を掴むような感動的なストーリーを作るため、ひとりひとりのキャラクターを作り込むようにしています。
Broche氏:
私たちのバックグラウンドとして、JRPGがすごく好きなメンバーが集まっています。本作にもJRPGを踏襲した伝統的なコマンドRPGを採用しているんですが、私たちのチーム独自のものを作るということを目標に、伝統の中に新しさも感じられるようなゲームプレイを目指して開発を続けていました。ビジュアル面や世界観に関しても、今までのJPRGにはないようなフランス的な世界観を作り込んでいるので、フランスのスタジオならではの文化的な背景を感じていただけたら幸いです。
Broche氏:
遊んでいただいたらフランスを感じていただけるような仕上がりになっているんじゃないかと感じておりますので、プレイ中に開発陣の顔を思い浮かべていただけたら嬉しいです。
──本作はコンセプトといいビジュアルといい、ほかにはない独自の魅力をもっていると思います。開発はどのようにスタートしたのでしょうか。
Meurisse氏:
本作はもともと、Guillaume(Broche氏)がひとりで手がけていたソロプロジェクトでした。リアクティブなターン制RPGというコンセプトが生まれたのは彼がUbisoftに在籍していた6年ほど前です。彼がUbisoftから独立した後少しずつチームは広がっていて、今では30人ほどのチームで取り組むかなりチャレンジングなプロジェクトとなっています。2019年の企画スタート、2020年のSandfall Interactive設立を経て、本年やっとリリースする準備を迎えました。
南フランスのモンペリエにある「The Manoir」という邸宅がSandfall Interactiveのオフィスで、もしみなさんがフランスに来てくれればぜひ歓迎いたします。こちらのオフィス、実はゲーム内でも出てくるので、プレイ中に見比べてくれたら嬉しいです。


──ストーリーについて教えて下さい。
Broche氏:
年に一度、別の世界から来た「ペイントレス」と呼ばれる存在が呪われた数字を描いて、その描いた年齢の人たちがたちまち消え去ってしまうという呪いをもたらします。この数字は年々カウントダウンをしていて、33の数字が描かれた年に組織された第33遠征隊がペイントレスに立ち向かいます。

毎年その年に描かれた年齢の人たちが残りの1年を賭して遠征隊となり、ペイントレスに抗ってきたんですけども、1~2週間でみんな壊滅してしまっていたという歴史があります。主人公となる第33遠征隊は、そういった過去の遠征隊が辿った軌跡を踏んで冒険を進めていくことになります。そのため第33遠征隊は33歳となるキャラクターたちで構成されているほか、唯一の年下のキャラクターとして「マエル」が登場しています。マエルが主人公のチームに加わっている理由は、ストーリーを楽しみにしていてください。
──描かれる数字が年々減っていく本作の世界では、年上の人たちはいないのでしょうか。
Broche氏:
おっしゃる通りペイントレスが描いた年齢以上の人々は消滅してしまうので、ゲーム開始時点では33歳以上のキャラクターは存在しません。ただ、ひとりだけ登場する年配のキャラクターである「ルノワール」にはストーリー上の謎があるので、そちらも楽しんでいただきたいです。
Meurisse氏:
これは完全な偶然なんですが、私たちはふたりともリリースの1ヶ月後に33歳になるんです。なので私たちにはあまり時間は残されていないかもしれないですね(笑)
一同:
(笑)

──トレーラーでは、エッフェル塔が曲がっているようなアートが確認できました。本作のストーリーは現実とリンクするような要素があるのでしょうか。
Broche氏:
本当にストーリーの中核となる部分なので今は詳しく語れないのですが、そういったゲーム内のデザインと現実世界との共通点はすべて意図的なもので、ストーリー的に意味のあるものです。ファンタジー世界とフランスの情景の調和やポストアポカリプス的な要素をきれいに描写したいという思いもあるので、ビジュアル面もきちんと作りこんでいます。

──ストーリーは非常にシリアスに見える一方で、コミカルなキャラクターも確認できます。本作はどのような雰囲気で進行するのでしょうか。
Broche氏:
本作はダークでしっかりとしたテーマをもっているので、暗くなりすぎないように一部のキャラクターを面白く好かれやすい性格に設定しています。このあたりもJRPGと同じ手法ですね。キャラクターたちに共感してもらうことでゲームへの没入感や気持ちの繋がりなどをユーザーに感じてもらいたいという狙いがあります。
作中のキャラクター同士のコミュニケ―ションを通じて、シリアスなだけではなくさまざまな感情を持っていると感じられるような、本当の人間を描くということを意識してキャラクターを作りこんでいます。

Broche氏:
今回のキャラクターにはものすごく力を入れて作りこんでおりますので、それに見合うように声優の配役にも時間をかけています。英語版だけでなくフランス語版にも力を入れており、フランスで知名度の高い声優を起用しています。

──日本語声優の予定はあるのでしょうか。
Broche氏:
どうしても最初の構想に入っていなかったので準備ができなかったのですが、日本での反響も含めて、皆さんの支援次第で対応を検討するかもしれません。
──本作のゲームプレイについて教えて下さい。
Broche氏:
従来のコマンドバトルをメインシステムとして採用しつつも、古さを感じさせないようなアクション性の高いゲームに仕上がっています。私たちがリアクティブターンバトルと呼んでいる、敵の攻撃に対してリアルタイムに回避やパリィができるアクション要素を備えたコマンドバトルになっています。極端なことを言えば、ゲームスキルの高い方がやり込めばノーダメージクリアもできるようなシステムということです。新しい形のRPGをぜひ感じていただきたいです。

キャラクター性能のカスタマイズも自由度が高いシステムを用意していて、さまざまな形のビルドが作れるような奥深さを備えています。たとえば、「ルネ」というキャラクターは基本的には魔法使いとして氷属性や炎属性の魔法を使うんですが、ビルドを物理属性に寄せるようなことも可能です。ユーザー独自のビルドのミックスを楽しんでいただきたいです。

シナリオを一直線に進んでいくだけのゲームプレイにならないように、ワールドマップも登場します。ワールドマップは探索が可能で、グラフィックのクオリティを一切下げずにワールドマップに落とし込むシステムにはかなりの力を入れて開発しました。ただただ一直線にゲームを攻略していくのではなく、世界観を楽しみながらゲームにのめり込んでいく没入感を楽しんでいただけたら幸いです。
──戦闘システムとストーリーはどのように出来上がっていったのでしょうか。
Broche氏:
今とは異なる別のストーリーをプロトタイプとして使用していた時期はありましたが、リアクティブアクションとコマンド性RPGの掛け合わせというコンセプトに関しては初期案から変わっていません。調整を重ねてどんどんゲームが研ぎ澄まされていく中で、今のチームが出来上がった時に現在のストーリーや世界観が決まりました。
──本作はJRPGから強い影響を受けているとのことですが、実際に開発の参考にしたのはどのようなタイトルでしょうか。
Broche氏:
私は世代的に『ファイナルファンタジーVIII』『IX』『X』が好きで、本作の様々なところがその3タイトルからの影響を受けています。また、『ファイナルファンタジーVII』『VIII』『IX』の世界観が広がっていく感覚に感銘を受けていて、本作のワールドマップの原型になっています。ぱっと見では分からないかもしれないですが、『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』からも影響を受けていて、回避やパリィの爽快感を参考にしました。

また、『DARK SOULS』などのソウルシリーズからも少しだけ影響を受けています。ただ一本道にボスを倒していくのではなく、さまざまなタイプの敵と戦いながらときには壮大な規模の戦闘も繰り広げていくという流れからは、ソウルシリーズのちょっとしたエッセンスを感じ取れるかもしれません。
──本作のグラフィック面や音楽についてのこだわりを教えて下さい。
Meurisse氏:
アートディレクターのNicholas Maxson-Francombeが作り込んだ、ファンタジーとフランスのベル・エポック時代(19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスで繁栄した文化)がミックスされた世界観が本作の特徴です。自然環境と街並みをミックスしてファンタジーを加えたような舞台世界を楽しんでいただきたいです。

音楽に関しては、ミュージックコンポーザーのLorien Testardが開発当初から手がけるサウンドトラックを採用しています。オーケストラ版などを含めて、計5年間をかけて作曲してもらっていることになりますね。楽曲はSpotifyでも配信予定です。
ゲームエンジンにはUnreal Engine5を採用しており、最新技術で最高のグラフィックで楽しんでいただけるよう力を入れています。
Broche氏:
チームとして大切にしていたのがUnreal Engine5による今までにないようなゲームの描画で、それを現実にするべくプログラマーが丹精込めて作ってきました。本作のこだわりのひとつなので、じっくりと鑑賞していただきたいです。

──日本語のパッケージ版はセガからリリースされるとのことですが、セガと提携するに至った経緯を教えて下さい。
Meurisse氏:
JPRGへのリスペクトが私たちの根底にあるなかで、上手くお話がまとまったため日本でのパッケージ販売を担当していただくことになりました。
Broche氏:
私は日本語がすごく好きなので、カタカナで書かれた日本語版パッケージのイメージができた時は感動で涙が出そうでした(笑)

──システム面などはJPRPGからインスパイアされている一方で、グラフィックは非常に洋ゲー的に思えます。これは意図的なものなのでしょうか。
Broche氏:
すべて意図的にデザインされています。ゲームの基本的なメカニクスの部分はJRPGを参考にしていたんですが、日本人ではない自分たちがJPRGをそのまま作っても意味はないとも感じていたんです。それよりは自分たちの色やフランスのやり方、アートスタイルを前に意図的に出した独自のゲームを出したいという気持ちがあり、意図的にそういったデザインになっています。
──本作はさまざまな要素で構成された複雑なタイトルだと思います。どのような層をターゲットとしているのでしょうか。
Broche氏:
基本的にはRPGのコアなファンたちをメインターゲットとして制作しています。ですが本作をリアクションターンRPGとした副次的な効果として、初めてターンベースのRPGに触れたプレイヤー層にもアクションとして面白いと感じていただけている部分もあります。なので、そういった層がもつターン制RPGはつまらないというイメージを払拭したいという意図も実はあります。

Meurisse氏:
コミュニティの反響をグローバルに見ると、どちらの層にも刺さっていそうな感触は得ています。いいとこどりですね。
──日本のJRPGファンから、どういった反応があったら嬉しいですか。
Broche氏:
何度もお伝えしている通り私たちは本当にJPRGに対するリスペクトの気持ちが強いので、ここに来れて日本の方々に直接訴求できること自体をまず光栄に思っています。
日本が開発したコアなジャンルをあえて手がける上で、私たちがJRPG的な価値観を大切にしているということを感じてほしいですし、同時に私たちが作り上げたニークで今までのJRPGとは違った部分に着目、評価してもらえたらものすごく嬉しいです。
──ありがとうございました。

『Clair Obscur: Expedition 33』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに2025年4月24日発売予定で、各プラットフォームで予約購入が可能だ。Xbox Game Passにも対応する。