『黒神話:悟空』の影響によりゲーミングモニターの売上が劇的に増加したとの報告。売上2000万本突破のモンスタータイトルは、経済への影響もビッグ

ハイテク機器のトレンド分析を行う台湾の調査会社TrendForceは今月19日、世界のゲーミングモニター市場に関するレポートを公開した。それによると、2024年のゲーミングモニター市場では中国の液晶パネルメーカーが大幅な売上増を記録。その要因として、中国における『黒神話:悟空』大ヒットの影響があるという。Game Rantが報じている。
『黒神話:悟空』は2024年8月に発売されたアクションRPGだ。開発を手がけるのは中国を拠点に置くデベロッパー、Game Science。中国古典小説の「西遊記」がテーマの世界を舞台に、プレイヤーは「天命人」となり、摩訶不思議な西遊の旅路に出る。西天(天竺)を目指す冒険のなかでは、中国神話を題材とした強大な妖怪たちも天命人の前に立ち塞がる。
本作は中国のデベロッパーが中国神話をベースに開発した本格アクションゲームということもあってか、発売直後から中国国内で爆発的な人気を獲得。また、今年の10月には発売からわずか2か月弱で売上が約2060万本を突破し、驚異的な速度で売上を伸ばしていることが報じられた(関連記事)。その後はさまざまなゲームアワードも受賞し、名実ともにモンスタータイトルの仲間入りを果たした(関連記事1、関連記事2)。なかでもUnreal Engine 5を用いて描かれる美麗なグラフィックは評価が高い部分のひとつである。

先述のレポートでは、そんな本作が去年ゲーミングモニター業界に与えた影響が伝えられている。まず全体として、世界における液晶ゲーミングモニターパネルの出荷台数は2024年に3242万台に達し、前年比12%の増加を記録した。なかでも中国のパネルメーカーの成長が大きく、BOE(京東方科技集団)は20%以上、CSOT(TCL華星光電技術)は40%、HKC(惠科股份有限公司)は約50%と、それぞれ大幅な出荷増加を見込んでいる。
その理由についてTrendForceは、2023年の杭州アジア大会におけるeスポーツの競技採用とともに、2024年の『黒神話:悟空』発売によって、特に中国でゲーミングモニターの「需要が大幅に増加した(significantly fueled demand)」と指摘している。ゲームアワードでビジュアルデザイン賞を数々受賞するなど美麗なグラフィックが特徴的な4K解像度対応の本作を、万全な状態で楽しみたいというユーザーが多かったということなのだろう。また本作はシビアな入力を求められるので、液晶の応答速度などのニーズもあるのかもしれない。
またこれには、中国のゲーム産業の規模の大きさが関係していそうだ。中国のゲーム産業に関するリポート「2024年中国遊戯産業報告」によると、2024年の中国のゲーム産業の売上高は前年比で約8%増加し、過去最高の3258億元(約6兆8000億円)に達した。ゲーム人口は約1%増の6億7400万人だったと報告されている。PCゲームの売上高だけでも680億元(約1兆4000億円)に達し、『黒神話:悟空』発売後にはSteam全体における中国語ユーザーの割合が圧倒的トップとなっていた(関連記事)。
対して日本は、2023年のゲーム市場全体の規模が約2兆1000億円であったことが報じられている。データは1年ズレがあるものの、中国のゲーム市場規模は日本の約3倍、ゲーム人口は日本人口の5倍を超える。そんな巨大な中国のゲーム業界において、とりわけ高い人気を誇るのが『黒神話:悟空』なのだ。一部のユーザーがゲーミングモニターを新調した“だけ”でも、市場に与える影響が大きかったということなのかもしれない。

豊富なプレイヤーベースと市場規模を活かし、『黒神話:悟空』に続く新たな売り切り型メガヒットタイトルが今後も登場するだろう。中国のゲーム市場をめぐる動きに、引き続き注目が集まる。