『ファイナルファンタジーVII リバース』PC版は美しく……だけでなく「低めスペック」「時短プレイ」にも対応。幅広いニーズに応えようとする間口の広がり

PS5でもきれいに動く『FFVIIリバース』であるが、コンソール特有の制約から解放され、高スペックPCを持っていれば、より高精細な絵が見られるというのがひとつ特徴であるだろう。なお、筆者のPCはミドル程度。

スクウェア・エニックスは1月23日、『ファイナルファンタジーVII リバース』PC版をリリースする。Steam/Epic Gamesストアにて配信予定だ。スクウェア・エニックスから本作のSteamコードの提供を受け、PS5版クリア済のプレイヤーがPC版をプレイ。そこから感じたのは「明確な間口の広がり」であった。

まずは概要を紹介しよう。『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、FFVIIリバース)は、『FFVII』のリメイクシリーズ三部作の二作目だ。『FFVIIリバース』は、昨年PS5版が発売され、このたびPC版がリリースされる。

『FFVII』リメイクシリーズでは、PS1向けに発売された『FFVII』を再創造。グラフィックは最新技術を用いたフル3Dになり、ターンベースだった戦闘はアクションベースに変化。基本的にはオリジナル版の設定を踏襲しているが、リメイクシリーズならではの展開も用意されている。

第一作目である『FFVIIリメイク』ではミッドガル脱出を果たすまでの物語が描かれた。第二作目である『FFVIIリバース』では、ミッドガル脱出からのクライマックスに向かう旅が展開。自由な探索をコンセプトに、広大なワールドマップの中でセフィロスの影を追っていくことになる。なお一作目のPC版としてはDLCコンテンツなどを収録した決定版『FFVIIリメイク インターグレード』が発売中である。

なお、『FFVIIリバース』には『FFVIIリメイク』を振り返る特別ムービーが用意されている。ゲームを遊んでストーリーを追ってもいいし、特別ムービーで前作を履修しておくのもありだ。以上が概要となる。

PS5よりもリッチなアセットもある……らしいが、いろいろ動く

『FFVIIリバース』PC版の特徴としては、主に以下のような要素があげられる:

・ライティング調整によりゲーム全体の光表現が向上し、よりはっきりとした表現に

・デフォルトグラフィックオプションは、低・中・高の3つのモードを用意。120fps対応

・LOD(Level of Detail)段階・背景テクスチャの MIP(MIP map)段階をオプション設定で調整可能に。これにより高水準設定にした際のシーン全体のポリゴン密度

・テクスチャ密度が従来よりも向上し、より美しく・精細な背景でプレイすることが可能に

・NVIDIA DLSS に対応することで、フレームレートの向上・画質のアップスケーリングが可能に。また、可変リフレッシュレート(VRR)にも対応

・コントローラーまわりは細かく対応。DualSense ワイヤレスコントローラーで PS5 版と同じ操作をできるほか、キーボード+マウス操作にも対応し PC でのプレイに幅広い選択肢を持てるように調整。キーボードのキー割り当てはカスタマイズが可能で、通常操作とミニゲーム中の操作を個別に設定が可能に

PS5でもきれいに動く『FFVIIリバース』であるが、コンソール特有の制約から解放され、高スペックPCを持っていれば、より高精細な絵が見られるというのがひとつ特徴であるだろう。なお、筆者のPCはミドル程度。グラボはRTX 3060 Tiで、最新ゲームはミドル設定がギリギリ感。そんな環境なので、そもそもこれくらいのスペックで動くのかというところをチェック。予測ではかなり厳しそう……だったのだが、すべてのグラフィックを「高」設定で30~40fps程度の可変fpsで割と安定して動作した。PS5版と遜色のないクオリティである。なお、システム側の設定可能オプションは以下の画像のとおり。

基本的な設定項目はありつつ、動的解像度の上限・下限やモデルの詳細度などもいじることができ、キャラクターの表示数や影の表示距離もいじれるなど、割とシステムの深いところまでカスタマイズ可能。低解像度用の文字フォントも用意されているのも面白い。浜口直樹ディレクターによると、低めのスペックへの対応も強く意識したそうだ。フォント含めて、そうした「ロースペック向けフォロー」は感じられる。基本は大作ゲームなので重めなのは間違いないが、下のラインにもアプローチされているように思う。

ロースペックPC対応というところでは、Steam Deckに対応している点も言及したい。前作『FFVIIリメイク』もSteam Deck対応。PS5向けに作られさらに高精細なアセットが用意された『FFVIIリバース』も、筆者がSteam Deckでプレイしたところ対応されていた(本稿執筆時点では同作はSteam Deckへの互換性が「Verified・確認済み」となっている)。

Steam Deckでは、絵はかなり割り切った作りになっている。アセットの粘土っぽさがあり、ディテールは細かくない。ただフレームレートは安定しており、Steam Deckのファンもそこそこ回るものの心配になる激しさではない。絵は割り切り、動作安定性をとった印象である。カットシーンまわりはモデルのクオリティがある程度担保されている印象である。限りあるスペックの中で適切な取捨選択をした上で、頑張っているように思えた。一方でやはり本作においてグラフィックによる没入感は重要。サブクエ消化はSteam Deck、メインストーリー進行はPC、といった遊び方などがちょうどよさそうに感じた。

Steam Deckでのスクリーンショット

というところで、大作ゲームとしてはミドルローあたりもカバーしているなというのが率直な印象である。こうした対応は、特に本作ならではのものではないので、前述のような基本的なPC版情報を記載して本稿を締めようと思っていた……のだが、PC版発売に先がけて昨年12月に実装されたある要素によって、かなり体験の仕方が変わると感じた。それが「カットシーン倍速機能」実装である。

本作にぴったりな倍速機能

昨年12月のアップデートで、『FFVIIリメイク』『FFVIIリバース』にてムービー倍速機能が実装された。両作におけるムービーシーンを1.5倍あるいは2倍で再生できるわけだ。音も倍速である。自分の中では『ファイナルファンタジー』シリーズにおいてムービーはアイデンティティであり聖域的な扱いなのだろうと勝手に考えていたので、それを倍速化させる機能に驚いたし実際いい感じに機能しているのも驚いた。

これはポーズ画面であるが、ムービー中に指定のボタンやキーを押すとそのまま倍速になる。倍速を1.5倍にするか2倍にするかはオプション画面から選択可能

『FFVIIリメイク』『FFVIIリバース』にはシーンスキップ機能が標準搭載されている。しかしスキップすると前後のカットシーンごと全部飛び、既プレイヤーでなければ展開も話も飛ぶので置いていかれる。それに対して倍速であれば、シーンは早送りになりややシュールさは出るものの話の流れや経緯は把握できる。ムービースキップよりも本作にあった機能であると感じた。なおのちに公開予定のインタビューではディレクターの浜口氏が、倍速機能実装によりユーザーがゲームの起動に積極的になっているというデータが見られたことも明かしている。

最近では国内メーカーもPC展開は丁寧になってきており、PC向け設定用意や最適化などはある程度整った状態でされることが多い。『ファイナルファンタジーVII リバース』PC版は、そうした丁寧目なPC版のひとつであるというのが筆者の所感だ。しかしながら、丁寧めな低スペック対応や、発売にあわせての倍速機能実装などは、(筆者主観で)硬派な印象であった『ファイナルファンタジーVII』シリーズの中では、これまで以上に新規ユーザー向けの歩み寄りに感じた。高アセットを楽しめる環境のプレイヤーが、お金のかかったムービーをしっかり見る。そういった楽しみ方は残しつつ、高スペックPCをもたないプレイヤーや、時短や高速消費を求めるプレイヤーに対しても向き合っている印象である。

『FFVII』リメイクシリーズは三部作であり、第一作目と第二作目、そして第三作目は物語として完全につながっている続きモノ。新規ユーザーを取り込むことが重要であるため、こうした新規向けの施策を打っているのだろう。『FFVIIリメイク』『FFVIIリバース』は今から追うにはプレイ時間が結構いるものの、物語体験としてはここ数年で突出して面白い試みをしている大作である。PC版・倍速で遊びやすくなったことを含めて、いま同シリーズにチャレンジしてみるといいだろう。完結となる三部作を待ちわびる同志が増えれば、『FFVII』リメイクシリーズファンである自分も嬉しいところである。

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Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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